旧統一教会被害者救済 “新法案提出へ最大限努力” 背景は

旧統一教会の被害者救済をめぐり、岸田総理大臣は、悪質な献金を規制する新たな法案について、政府として今の臨時国会に提出することを視野に、最大限の努力を行う考えを明らかにしました。

こうした考えの表明にはどんな背景があるのか。
これまでの経緯をまとめました。

旧統一教会の被害者を救済するため悪質な献金を規制する新たな法律をめぐっては、自民・公明両党と、立憲民主党、日本維新の会による4党で協議が行われていますが、見解に隔たりがありいまの国会で成立させられるかが焦点となっています。

こうした中、岸田総理大臣は午後4時すぎから公明党の山口代表と総理大臣官邸で会談し、今後の対応を協議しました。

このあと岸田総理大臣は記者団に対し「悪質な献金などの被害者救済の新規立法については、憲法の信教の自由や国民の権利義務にかかわることから、関係省庁で総力を挙げて検討を進めてきた」と述べました。

そのうえで「政府としては今国会を視野に、できる限り早く法案を国会に提出すべく最大限の努力をする」と述べ、悪質な献金を規制する新たな法案について、政府として今の臨時国会に提出することを視野に、最大限の努力を行う考えを明らかにしました。

そして岸田総理大臣は、政府が提出する新法は
▽消費者契約法の対象とならない寄付一般について、社会的に許容しがたい悪質な勧誘行為を禁止すること
▽悪質な勧誘行為に基づく寄付について取り消しや損害賠償請求を可能とすること
▽また、子や配偶者に生じた被害の救済を可能とすることなどを主な内容として検討を進める考えを示しました。

また、岸田総理大臣は「私自身、旧統一教会の被害者の方々と内々に会い、凄惨な経験を直接うかがったが、政治家として胸が引き裂かれる思いがした。政府として、被害者救済と再発防止のためにさらにペースを早め、さらに範囲を広げ、新たな法制度実現に取り組む決意をした」と述べました。

これまでの政府の対応は

岸田総理大臣は、臨時国会の冒頭の先月3日旧統一教会をめぐる被害者救済のため、関連法令の見直しを検討する方針を表明。

有識者検討会の報告なども踏まえて検討を急ぎ、準備ができたものから、順次、国会に提出する考えを示していました。

具体的な提出法案や段取りについて、政府・与党内には、当初、今の国会では悪質商法に関係する消費者契約法の改正に優先的に取り組み、さらなる法整備は、来年の通常国会以降に行うべきだという意見もありました。

これに対し、野党側は、被害者救済を急ぐには、消費者関連の法改正だけにとどまらず、高額献金を規制する新法の成立も、今の国会で図るべきだとして与党側に協議を求め、4党協議が始まりました。

こうした中、岸田総理大臣は、先月28日、自民党に対し、「協議会の議論をどんどん進め、今の国会中にできるところまで全力を挙げて加速化させてほしい」と指示し協議会の議論を踏まえ、政府としても、必要な法案の準備を急ぐ考えを示しました。

また、岸田総理大臣は、実態を丁寧に把握しようと、被害を訴える人たちと今週までに面会する意向も示していました。

政府は、4党協議の議論や、被害を訴える人たちの要望なども踏まえながら、法整備の内容の検討を続け、具体的な提出時期や政府提出法案とするかどうかについて、与党などとの調整も経たうえで最終判断するとしていました。

これまでの4党による協議会の議論は

4党による与野党協議会は、先月21日に各党の国会対策委員長が立ち会って初会合が開かれ、その後は、実務者レベルで週に2回程度のペースで行われ、これまでに6回開催されてきました。

(11月8日現在)
各党の実務者は、▽自民党が前の消費者担当大臣の若宮・幹事長代理と、宮崎政久・法務部会長の2人。
▽公明党が大口・政務調査会長代理。
▽立憲民主党が長妻政務調査会長。
▽日本維新の会が音喜多政務調査会長で、協議会には、消費者庁や法務省などの担当者も同席しています。
協議会では、霊感商法などの被害については、消費者契約法の改正などで対応する方針で一致していて、政府が、今の国会に法律の改正案を提出する方向で準備を進めています。

一方、「悪質な献金被害」については、既存の法律では対応しきれない部分があるとして、新たな法律を整備する必要があるという認識で一致。

野党側が強く求める、いわゆるマインドコントロールによって献金をさせる行為も規制の対象に含まれることを与党側も認めました。

ただ、新たな法律の具体的な中身をめぐっては、与野党間の見解の隔たりが埋まらず、合意に至っていません。

与党側は、野党側が提出している法案は問題が多いと指摘したうえで、新たな法案は、憲法で保障されている信教の自由や財産権との関係など重要な課題を丁寧に検討する必要があるとしています。

これに対し、野党側は、与党側も具体的な法律の条文案を示せば、柔軟に対応する姿勢を強調し、速やかな対応を求めています。

そして、与党側が条文案の提示時期を明言しない中、野党側は「今の国会で新法まで成立させることが、協議会設置時の約束だ」として批判を強めています。

こうした中、立憲民主党の泉代表が「協議がまとまらなければ内閣不信任に値する」と発言したのに対し、自民党の茂木幹事長が「協議の作業を加速しているさなかに、極めて不誠実だ」と強く反発するなど、与野党の駆け引きも活発になっています。

そして、6日、立憲民主党の岡田幹事長は、今の国会で新法を成立させるには、今週中に党首間で大枠で合意しないと間に合わないとして、岸田総理大臣や泉代表らによる党首会談の開催を求めました。

与野党間で見解に隔たりがある論点は

悪質な献金を規制する新たな法案をめぐって、与野党間で見解に隔たりがある論点です。

1.マインドコントロールの定義

1つは、いわゆる「マインドコントロール」を法律で定義するかどうかです。

与野党ともに、マインドコントロールによる献金を規制の対象にするという方向性では一致していますが、野党側が「マインドコントロール」を法律の条文で明確に定義づけるべきだとしているのに対し、与党側は法律で客観的に定義づけるのは困難だという立場です。

立憲民主党と日本維新の会は、すでに国会に提出している法案でマインドコントロールを「心理学に関する知識や技術を乱用するなど、心身に重大な影響を及ぼし、自由な意思決定を著しく困難にする行為」などと定義しています。

この案について、与党側は「実際にマインドコントロールにかかっているかどうかを、第三者が判断することが困難だ」などとして、野党案を採用することは難しいという見解を示しています。

与党側は、野党側に明確な対案は示していませんが、協議会のメンバーからは、法律では「社会的に許容しがたい悪質な勧誘行為」といった広い定義づけにとどめ、規制に該当する行為かどうかは個別に判断するといった案も出ています。

野党側は「マインドコントロールは問題の核心だ」として、法律で定義づける必要性を強調し与党側に速やかに対案を示すよう求めています。

2.家族の被害回復

2つ目の論点は、マインドコントロールなどを受けた本人に代わって、家族らが多額の献金などによる被害をどう回復できるようにするかです。

立憲民主党と日本維新の会の法案では、家庭裁判所が認めた場合、家族を含む第三者に「取消権」を認め、献金を取り戻せるようにするとしています。

これに対し、与党側は、本人が望んでいない「取消権」を家族などに認めることは、憲法上の「財産権」を制約するおそれがあると指摘しています。

そのうえで、対案として、家族らが、献金をさせた側を相手取って、裁判所に損害賠償を請求できるようにすべきだとしています。

3.高額献金の基準

3つ目の論点は、規制する「悪質な献金」について金額の基準を設けるかどうかです。

立憲民主党と日本維新の会の法案では「年収の4分の1を超える」ことを一つの目安にするとしています。

基準を設けることで、一定の抑止効果が期待できるほか裁判での立証がしやすくなるとしています。

一方、与党側は、こうした基準を設けることは「悪質」ではない献金までも、事実上規制されるおそれがあるなどとして反対の立場です。

4.刑事罰

4つ目の論点は、規制に違反した場合の罰則についてです。

野党側は、抑止力を持たせるために、刑事罰の導入を主張しています。

具体的には、国による勧告や命令に従わない場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金を科す措置を導入すべきだとしています。

これに対し、与党側は、民事的な規制の在り方も含めて、慎重に検討すべきだとしています。

与野党協議では、組織的に行われた違法な勧誘行為を禁止する勧告などの行政処分を行い、処分に違反した場合に制裁を科すことなどを提案しています。