性に関する正しい知識や人権意識を 大学生が自主的に学び啓発

性に関する正しい知識や人権意識を身につけたいと、大学生たちが自主的に学んだり啓発したりする動きが相次いでいます。
5日は、埼玉県の大学の学園祭で、学生たちがみずから作成した性に関する冊子を配布し、ワークショップで意見を交わしました。

性に関する冊子を作成したのは、埼玉県草加市にある獨協大学の開発経済学ゼミの学生たちで、発展途上国のジェンダー問題を学ぶ中で、日本でも性に関する知識や人権意識を学ぶ機会が十分でないと課題を感じたといいます。

そこで、同年代の若い人が、こころや体、健康と向き合うきっかけになればと、冊子では、▽生理の症状や、▽性感染症、▽避妊や、▽性的同意に関する記載に加え、性に関する悩みを無料や低額で医師や助産師などに相談できる「ユースクリニック」と呼ばれる施設も紹介しています。
5日の学園祭では、冊子を配るとともに、性に関するワークショップで意見を交わし、参加者からは「避妊は自分に合った方法を選ぶ権利がある」とか「性に関して、自分の気持ちを守るため人の意見を気にしすぎないようにしたい」といった意見が出ていました。

今後、学生たちはキャンパスがある埼玉県内にも若者たちが性について気軽に相談できる新たな窓口の設置を求め、県に政策提言を行っていくことにしています。

企画したメンバーの1人、国際環境経済学科3年生の吉岡葵唯さんは「日本では性に関する人権教育の土壌がなく、何が問題かも分からず相談できない人もいると思うので、教育と相談場所の2つの連携が大切だと思う。私たちが大学生だからこそ、自分たちの友達や恋人の悩んでいる声を聞き、生の声を取り入れていく活動をしていきたい」と話していました。

学生の取り組み指導の教授「前向きに提言で社会がよい方向に」

学生の取り組みを指導している、獨協大学経済学部の高安健一教授は「本来なら教育機関や行政が推進すべきことだと思うが、残念ながら日本の現状はそうなっておらず、若者がみずから動きだした形だ。自分の心と体を知ることは、他者への想像力を広げることにもつながり、社会的にもプラスになる。若者が感じていることを前向きに提言していくことで、社会がよい方向に変わればいいと思う」と話していました。

他大学でも取り組み

大学生がみずから性について学ぼうとする取り組みは、ほかの大学でも相次いでいます。

▼東京大学では、先月から単位も認められる「性教育」のゼミが新たに始まりました。性に関する知識や人権意識などを幅広く学び直したいと学生たちが企画したもので、来年1月まで開かれます。

▼慶應義塾大学では、ことしから学生自治会がサークルや学生団体の代表に性教育講座の受講を義務づけました。加害者を生まないだけでなく、被害を目撃した人が傍観者にならないよう知識を広げたいとしています。

▼明治大学では、ジェンダー学のゼミの学生たちが主体となり、男子学生も対象にした生理の講座などを実施していて、来月には避妊についてのワークショップを開くということです。

若者が性について語り相談できる場も

若い世代のニーズを受け、性について気軽に質問したり、悩みを相談したりできる場を設けようという取り組みも始まっています。

東京を拠点に性に関する相談活動などを行っているNPOでは、若者への情報提供や相談の機会を増やしていこうと、欧米で啓発に使われている避妊キットを日本向けに開発し、大学のサークルで配布したり出前授業を行ったりしているほか、大学の近くで気軽に語れる場を設けています。

この中では、キットを使ってコンドームや低用量ピルのほか妊娠検査薬や緊急避妊薬のサンプルを実際に手に取れるようにしているほか、性について若者が相談できる支援機関の情報をまとめたカードも紹介しています。

会に参加した学生は「性については自分で学んできた感じで、それぞれ前提の知識に差があり、友人と話すのも難しいです。興味が全くない人もいると思うので、触れる機会が少しでも多いほうがよいと思います」と話していました。

また、性暴力の被害者支援のため看護師を目指す女性は「加害をなくしていくためには、性に関する人権教育も必要だと思います。友人にも伝えられるので、知らないよりは知っていたほうがいい」と話していました。

国際的にはユネスコが「包括的性教育」掲げる

日本の学習指導要領では、生徒の発達状況や親の価値観に違いがあるとして、中学校までは性行為や避妊などは原則、授業で取り扱わないとしています。

一方、国際的にはユネスコが、性については体や避妊、中絶といった知識だけでなく、ジェンダーや人権、性の多様性など、互いを尊重しあうことを幼少期から年齢に応じて総合的に学ぶ「包括的性教育」を指針として掲げています。

UNFPA=国連人口基金がことし発表した「世界人口白書」でも、世界では「意図しない妊娠」が年間1億2000万件余りと、全体の半数にあたると報告したうえで、対策の1つとして「包括的性教育」を充実させることが必要だと指摘しています。