【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(11月5日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる5日(日本時間)の動きを詳しくお伝えします。

(日本とウクライナは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

イラン政府 ロシアへの無人機の供与認める

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対し、イランが無人機を供与していると指摘されていることをめぐり、これまで一貫して否定してきたイラン政府が一転侵攻が始まる数か月前に供与したとして、無人機の供与を初めて認めました。

イラン側がこれまでの姿勢を転換した背景には、国際的な圧力に加え、イランの元外交官らがウクライナ情勢をめぐる政府の対応を批判する共同声明を出すなど、国内からも批判の声があがっていることなども影響しているとみられます。

米高官がゼレンスキー大統領と会談 追加の軍事支援発表

アメリカ・ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は4日、ウクライナの首都キーウでゼレンスキー大統領と会い、アメリカとして揺るぎない支援を続けていくと伝えました。その上でウクライナに対しておよそ4億ドル、日本円にしておよそ590億円相当の追加の軍事支援を行うと発表しました。

アメリカ国防総省によりますと軍事支援には
▼旧ソビエトで開発された戦車を改修する費用や、
▼攻撃用の無人機「フェニックスゴースト」1100機の供与などが含まれるということです。

このうち戦車はチェコのメーカーからあわせて90両がウクライナに送られるということで、アメリカとオランダが最新の通信機器や装甲を装備するための改修費用を負担するとしています。
サリバン補佐官は記者会見で「アメリカは戦いが続くかぎりウクライナと共にある。われわれの支援は揺るぎなく、弱まることなく、臆することなく続く」と強調しました。

これに対し、ゼレンスキー大統領は4日、動画を公開し「バイデン大統領とアメリカのすべての国民が極めて重要な支援を続けてくれていることに感謝する」と述べ、引き続き徹底抗戦する姿勢を強調していて、攻防は南部などで一層激しさを増す見通しです。

英国防省 “ロシア軍 逃亡兵を銃撃する専門部隊編成か”

ウクライナに侵攻するロシア軍について、イギリス国防省は4日、ロシア軍が戦場で逃げようとするロシア兵に対して強制的に戦わせるため専門の部隊を編成して銃撃すると脅しているとみられるとする分析を発表しました。

イギリス国防省はロシア軍は過去の紛争でもこうした部隊を編成したことがあると指摘しています。また、ウクライナの軍事侵攻でも掌握した陣地を兵士に死守させるため、ロシア軍の将校たちが、逃亡した自軍の兵士を射殺する許可を求めていたとみられると分析しています。

そのうえで「逃亡した兵士を銃撃しようとするこの戦術は、ロシア軍の質や士気の低さ、規律のなさを証明している」と指摘しています。

ウクライナ クリミアの橋の爆発デザインした切手販売

ウクライナで、南部クリミアの奪還に向けた機運を高めようと、ロシアのクリミア支配の象徴とされる橋で起きた爆発をデザインに取り込んだ新しい切手の販売が始まりました。

ウクライナ南部のクリミアは、8年前、ロシアによって一方的に併合され、ウクライナ側は奪還を目指しています。新しい切手は奪還に向けた国民の機運を高めようと作られたもので、10月、クリミアとロシア南部を結ぶ橋で起きた爆発をデザインに取り込んでいます。

また、切手には、橋の上に並ぶ男女の姿が描かれ、デザインした画家はロシアのクリミア支配が終わることを願ったなどと説明していて「切手がウクライナ国内だけでなく海外にも届いてほしい」と話していました。

切手は、4日から、ウクライナ各地で販売され、首都キーウの郵便局では朝早くから多くの人が手に入れようと長い列を作っていました。購入した男性は「この切手を子どもや親にも渡したい。近い将来、クリミアを取り戻せると思います」と話していました。

ウクライナ国防相「ロシア軍 ヘルソン撤退か見極め必要」

ウクライナのレズニコフ国防相は4日、オンラインでの記者会見で、南部の戦略的要衝、ヘルソンでのロシア軍の動きについて「占領者が本当に撤退するかどうか見極めなくてはいけない。今回の情報がわなで、撤退するといいながら現地で戦闘の準備をしている可能性がある。敵の情報を信用するべきでない」と述べロシア軍の撤退に関する情報について懐疑的な見方を示しました。

その上で「ウクライナ軍は少しずつヘルソン州の中に進んでいる」と述べ、領土の奪還を目指して南部で部隊を進めていることを強調しました。

ドイツ外相「中国 核兵器の使用反対は重要なサイン」

G7の議長国ドイツのベアボック外相は外相会合の終了後の会見で「ウクライナの罪のない人たちへのひどい攻撃が1日続くごとに、それは、死、苦しみ、それに破壊を意味する。これを止め、ロシア軍に撤退を命じられるのはプーチン大統領だけだ」と述べました。

その上でウクライナへの支援について「この数か月間、私たちが穀物や軍事物資などを支援してきたのと同様、今度は冬の間の支援をする。これはG7だけでなく、国際社会が団結して行う」と強調しました。

その後の質疑応答では、ショルツ首相がG7外相会合の最中に中国を訪れたことについて聞かれ「首相府とはもちろん緊密に調整している。中国はパートナーであると同時に、多くの分野において競争相手であり、体制的なライバルだという認識で一致している」と述べました。

また、ショルツ首相との会談で、中国の習近平国家主席がウクライナ情勢を巡って核兵器の使用や威嚇に反対の立場を示したことについて「中国側がそのように明言したのは重要なサインだ」と評価しました。

G7外相会合 共同声明 “ウクライナに厳冬の備え含め支援継続”

ドイツ西部のミュンスターで行われていたG7外相会合は4日、共同声明を採択して終了しました。

声明では、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対して▼直ちに撤退するよう改めて求め、生物・化学兵器や核兵器の使用は重大な結果を伴うと警告しています。

また▼ロシアがエネルギーと食料の輸出を武器として使おうとしていると非難し、▼ロシア産の原油に対し数週間以内に価格の上限を設けるとしました。

ウクライナには▼厳しい冬への備えも含めて、財政、軍事、政治面などで支援を続けるとしたほか、▼エネルギーや水のインフラ施設を修復したり防衛したりすることを支援する調整の枠組みを設け、12月、フランスで開く国際会議などで話し合うとしました。

一方、習近平国家主席が共産党のトップとして異例の3期目に入った中国については、▼可能な分野で建設的な協力関係を目指すとしながらも、▼台湾海峡における平和と安定の重要性を再確認し、一方的な現状変更の試みに強く反対するとともに、▼新疆ウイグル自治区や香港などの人権状況について懸念を示しました。

さらに、北朝鮮に対しては▼一連の弾道ミサイルの発射は国連安保理決議に違反しているとして強く非難するとともに、核兵器やその開発計画などを完全に、検証可能かつ不可逆的な形で廃棄するよう求めました。

プーチン大統領「志願兵の数は減っていない」

ロシアのプーチン大統領は、4日、ロシアの祝日「民族統一の日」にあわせて首都モスクワで開かれた式典で、ボランティアの人たちと意見を交わしました。

このなかで、プーチン大統領はウクライナの軍事侵攻に関する予備役の動員について「30万人の動員だが、すでに31万8000人いる。なぜかというと、志願兵が集まっているからだ。志願兵の数は減っていない」と強調しました。

そのうえで「このうち4万9千人が軍に配備され、戦闘任務についている。国は動員された兵士の家族を全面的に支援していく」と述べ、兵士の家族に寄り添う姿勢をアピールしました。

プーチン政権は10月28日、予定していた30万人の動員が完了したと表明し、現時点で追加の動員は計画されていないとしています。

ウクライナの軍事専門家「インフラ攻撃は国民の士気くじくため」

ウクライナの軍事専門家ムシエンコ氏は2日、首都キーウでNHKのインタビューに応じ、ロシア軍がウクライナの発電所などインフラ施設を集中的に攻撃していることについて「ロシア軍はウクライナの市民生活への攻撃を強め、国民の士気をくじこうとしている」と分析しました。

そして「電気や水がない状態が続くことで、ウクライナの人々が、政府に対して疑問を抱き、ロシアとの交渉を求める方向に向かうことをねらっている」と述べました。

その一方で、ムシエンコ氏は「しかしロシアは大きな間違いをおかしている。実際には全くねらいどおりになっていない」と述べ、ウクライナ国民はむしろ抗戦姿勢を強めているという考えを示しました。

そのうえで、インフラ施設を防衛するためにはウクライナの防空体制を強化する必要があり、欧米各国は支援を急ぐべきだと指摘しました。