プレミアムフライデー 今どうなってるの?

プレミアムフライデー 今どうなってるの?
きょうは金曜日、みなさん「プレミアムフライデー」って覚えていますか?

10月最後の金曜、SNSで話題になりました。

5年ほど前、政府と経済界が先頭に立って、ライフスタイルの改革につなげようと始めた大々的なキャンペーン。

当時、『これからの月末金曜は、早く帰宅できる』と心が踊った人もいたかもしれません。

でも、あれっ・・!「プレミアムフライデー」って、どうなっているんだろう。

疑問に思って調べてみました。

(ネットワーク報道部 清水阿喜子 谷口碧 おはよう日本部 中村優樹)

SNSと街の人の声は?

ツイッターでは(10月28日)

“懐かしい響き”

“プレミアムフライデー残業”

“プレミアムフライデーってどうなったの?”

プレミアムフライデーに関連したツイートが数多く投稿されました。

活用はされているのか。東京・大手町や新橋で聞いてみました。
Qプレミアムフライデーって覚えてますか…?

これまで一度も活用したことはないという男性は。
「そういえば、ありましたね!営業職だから平日の昼過ぎに仕事を上がるなんて無理ですよね」《20代男性》
「そもそも何で金曜なのかとか、どういう意味があるのか伝わってなかった気がする」《50代男性》
社会人の男女合わせて20人のうち、
▽これまで一度も活用したことはないと答えたのが15人
▽初めは活用していたが、いまはしていないが3人
▽いまも活用しているがわずか2人でした。

経済産業省に聞いてみた

当時、「新語・流行語大賞」のトップテンにも選ばれた「プレミアムフライデー」。

民間とともに主導していた経済産業省の担当課に聞きました。
Qプレミアムフライデー、今も続いているのでしょうか?

(経済産業省 担当課)
続いています!企業から『なくなるのですか?』と聞かれたときも、『そんなことないですよ!』とお答えしています。新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言が出ていた頃は密になるのを避けようと、そもそもイベントなどがなかったりという状況が続いていました。

ただここ半年くらいは、毎月20~30程度、プレミアムフライデーのロゴを使用したいという申請が来ています。『働き方改革を実践している例として求人情報に載せたい』などの声が、寄せられているんです。

そもそも、プレミアムフライデーって?

「プレミアムフライデー」が始まったのは2017年2月。
政府と経済界が月末の金曜日に早めの退勤を促進して、消費の底上げや長時間労働の見直し、さらにはライフスタイルの改革につなげようと始めたキャンペーンでした。
経済産業省の行政事業レビューシートによりますと、経済産業省は、広告会社に1億8200万円を出して広報やPR戦略の立案と実施などを委託。
キャンペーンは経済産業省と民間でつくる推進協議会が主導して行われました。
当時、NHKのニュースでは

「東京駅直結のホテルの会場には早めに仕事を終えた会社員など、およそ100人が集まり、お酒や食事を楽しんでいました」

「百貨店では、早めに退社した人などに向けて期間限定のカフェを設ける催しを開いています」
各地でさまざまなイベントや退勤を促す取り組みが行われたほか、「月末は忙しい」といった声も反映して、職場の状況に応じてほかの金曜に振り替えるなど柔軟な方法も推奨されました。

その後、新型コロナの感染拡大の影響で在宅勤務が広まるなど、働き方は大きく変わりました。

最初は取り組んでいたけれど…

山口市にある大型商業施設。

当初、大きな期待を寄せてプレミアムフライデーに合わせたセールをしたり、閉店時刻を30分間、延長したりするなどして消費喚起につなげようとしていました。
(大型商業施設の担当者)
「話題になったのは、始まった最初の最初だけ、その後は、どんどん尻すぼみになっていった印象です。月末の金曜は民間企業にとって多忙な日でもありますし、一般の人たちへほとんど浸透せず、恩恵はなかったです」
今は関連するイベントを一切、行っていません。3年間続けていた毎週金曜日の閉店時刻延長も、新型コロナの感染拡大で中止。プレミアムフライデーの取り組み再開の予定はないとしています。
(大型商業施設の担当者)
「コロナによって『人が集まることを呼びかける』キャンペーンやイベントを打ち出しにくくなりました。お客様のコロナに対する恐怖感・不安感が少しずつ和らいでるのを感じている。今後は、別の仕掛けを考えていきたい」
一方、プレミアムフライデーを続けているところを探してみると…

働き方改革に貢献!社員交流の機会にも

当初から、積極的に取り組んでいる企業の1つが、携帯電話大手のソフトバンクです。

働き方改革をしようという機運が社内で高まっていた5年前、『働く時は働き、休むときは休む』というメリハリのある働き方が実現できるのではないかと導入しました。
月末金曜日として固定するのではなく、それぞれの業務に合わせて振り替えを可能にするなど柔軟に対応し、月の初めと当日の2回メールで告知することで、会社全体で利用しやすい雰囲気作りを続けています。そのかいもあって、今でも多いときで、社員およそ1万2000人がこの制度を利用しているということです。人事本部の大神田賢翔課長は、みずから率先して利用し、働き方そのものへの効果も実感しています。
「管理職の私が率先して利用することで、『課長がいないなら自分も休もう』などというメンバーが増えました。この日は早くあがる、あるいは休むということを考えて計画を立てるようになったので私も周りも仕事そのものの効率が上がっています」
さらに社員食堂を開放して、ふだんより安く飲み物などを販売しています。コロナ禍で在宅勤務などが多くなった今では社員同士のコミュニケーションの場として活用しています。
(ソフトバンク 人事本部 大神田賢翔課長)
「プレミアムフライデーの日はプレミアムなひとときをということで実施していて、毎回、食堂が満席になるほど人気が高いです。プレミアムフライデーは働き方改革の一環として有効なだけではなく、社内交流のきっかけにもなっているので、今後も続けていきたいと考えています」

地域の活性化に効果!?

岐阜県内では、地域の活性化につなげようと始めた取り組みが効果をあげています。
目をつけたのは、観光客にも人気がある寺社仏閣などの御朱印でした。
「プレミアムフライデー」にしか手に入れることができない御朱印。
墨で書かれる神社や寺の名が、毎月最終金曜日だけ、金色の文字に変わります。月に1回の限定品として華やかに仕上げ“プレミアム感”を出したのです。
民間のまちづくり団体で代表を務める佐藤徳昭さんが低迷する観光の起爆剤にならないかと発案しました。
この“プレミアムな御朱印”は次第にSNSや口コミで広まり、金(こがね)神社では、1日に最大2000人、7時間待ちの行列ができたこともありました。
こうした人気ぶりを見て、県内のほかの寺や神社も参加するようになりました。
「このコロナ禍の2年でプレミアム御朱印に参加したいと手を挙げてくれた寺や神社が増え11月には26か所になる。どこもコロナが落ち着いた後、どのように人に戻ってきてもらおうか、必死に模索していますし、今後も岐阜を盛り上げるためにコロナ後に備えた息の長い取り組みとして、続けていければ」

専門家はどう見ている?

キャペーンから2年たった頃、推進協議会の調査結果では、月末の金曜日に通常よりも早く退勤した人の割合は、2年間の平均で11.3%にとどまっていました。
(「プレミアムフライデーに関する調査結果 2019年2月プレミアムフライデー推進協議会」より)

経済政策に詳しい関東学院大学の島澤諭教授は、消費喚起の面ではほとんど効果はなかったと分析しています。
「月末の金曜日は業務が集中しがちで、企業にも労働者にもメリットがなく、制度の導入は進みませんでした。消費者の支出を見ても、月末の金曜日以外の日に抑制するなどして調整しているので、トータルで見ると効果は『ゼロ』とは言いませんがほとんどなかったと思います」
そのうえで、制度の前提が時代に合わず難しかったのではないかと指摘しています。
「『労働者にお金はあるが使う時間がない』という前提で始まったのだとすれば、『お金はないし使う時間もない』というのが、現実だったのではないでしょうか。自由な時間やお金の使い方を考えて実行してもらいたかったのだとしても、まずはお金を使う余裕のある収入にすること、そして、働き方を改善する仕組みが必要だったと思います」
その一方で、島澤教授は、コロナ禍による働き方の変化がプレミアムフライデーを受け入れる下地を作ったとも考えています。
「今もプレミアムフライデーが根付いている企業にとっては、まさに働き方を見直すきっかけになったと思いますが、制度が始まった当時はその余裕のない企業の方が多かったんです。しかし、私たちはコロナ禍で、人の数だけ働き方があることに気がつきました。リモートワークやワーケーションなどが取り入れられ、働き方が柔軟になったことで、プレミアムフライデーが受け入れられる素地が広がったと見ています。こうして働き方への認識の改革を進めたうえで、プライベートな時間を充実させていく取り組みとして プレミアムフライデーを生かしていけばいいのではないかと思います。金曜日にこだわりすぎないよう名前は少し変えたほうがいいと思いますけどね」
プレミアムフライデー推進協議会は、今後について「働き方が変わってきているので今の状況に合わせた形を検討している」としています。

いろいろな過ごし方があるプレミアムフライデー。

月末金曜、あなたは何して過ごしますか?