国内には、現在、15原発33基の原子力発電所があります。このうち、原子力規制委員会の審査に合格し、再稼働したのは6原発10基です。
内訳は、
▽いずれも福井県にある、関西電力の高浜原発の3号機と4号機、大飯原発の3号機と4号機、美浜原発の3号機
▽鹿児島県にある九州電力の川内原発の1号機と2号機
▽佐賀県にある九州電力の玄海原発の3号機と4号機
▽愛媛県にある四国電力の伊方原発の3号機です。
さらに政府は、脱炭素社会の実現やエネルギーの安定供給に向けて、すでに規制委員会の審査に合格している5原発7基についても、来年の夏以降に再稼働を目指す方針を示しています。
こちらの内訳は、
▽宮城県にある東北電力女川原発2号機
▽新潟県にある東京電力柏崎刈羽原発の6号機と7号機
▽茨城県にある日本原子力発電の東海第二原発
▽福井県にある関西電力高浜原発の1号機と2号機
▽島根県にある中国電力島根原発2号機です。

【詳しく】原発 老朽化リスクとは 60年の運転期間の延長を検討
国内にある原子力発電所は運転期間が最長60年と定められていますが、政府はさらなる延長を可能にすることを検討しています。
背景にあるのが脱炭素社会の実現とエネルギーの安定供給に向けて、既存の原発を最大限活用する方針です。
でも、そもそも原発って今どれだけ稼働しているのか。
そんなに長く運転させて安全性に問題はないのか。
そんな疑問に答えながら、詳しくお伝えします。
着々と進む原発の再稼働 来夏に向けてさらに


こうした中で検討が進む「原発の最大限の活用」。
政府は2030年度には、総発電量のうち発電時に二酸化炭素を出さない原発の占める割合を2020年度のおよそ4%から5倍程度の20から22%程度とすることを目標としています。
ただ、建設中のものも含めすべての原発が動いたとしても、運転期間の上限が60年のままだと2040年代には大幅に減少し、2050年には10%程度まで落ち込むことになります。
政府は、次世代原子炉の開発と建設も検討する方針ですが、実用化の見通しは早くても2030年代半ば以降とされ、建設にはさらに長い時間がかかる可能性もあります。
こうした状況を踏まえ、政府は、原発のさらなる長期運転に必要な法整備などの具体策を年末までをめどに取りまとめたいとしています。
政府は2030年度には、総発電量のうち発電時に二酸化炭素を出さない原発の占める割合を2020年度のおよそ4%から5倍程度の20から22%程度とすることを目標としています。
ただ、建設中のものも含めすべての原発が動いたとしても、運転期間の上限が60年のままだと2040年代には大幅に減少し、2050年には10%程度まで落ち込むことになります。
政府は、次世代原子炉の開発と建設も検討する方針ですが、実用化の見通しは早くても2030年代半ば以降とされ、建設にはさらに長い時間がかかる可能性もあります。
こうした状況を踏まえ、政府は、原発のさらなる長期運転に必要な法整備などの具体策を年末までをめどに取りまとめたいとしています。
半数が運転開始から30年超

一方で、気になるのはやはり安全性です。
実は国内の33基の原発のうち半数の17基が運転開始から30年を超えているほか、3原発4基が40年を超えています。
実は国内の33基の原発のうち半数の17基が運転開始から30年を超えているほか、3原発4基が40年を超えています。
長期間運転で老朽化リスクも
原発を長期間運転すると、放射線や熱の影響でさまざまな機器や設備が劣化するいわゆる「老朽化」が進みます。
老朽化によるトラブルとしては、2004年に福井県にある関西電力の美浜原発3号機で起きた配管の破断事故があり、吹き出した蒸気などで作業員5人が死亡しました。破断した配管は、運転開始以来点検が行われていなかったことが原因でした。
老朽化によるトラブルとしては、2004年に福井県にある関西電力の美浜原発3号機で起きた配管の破断事故があり、吹き出した蒸気などで作業員5人が死亡しました。破断した配管は、運転開始以来点検が行われていなかったことが原因でした。

ほかにも鋼鉄製の原子炉は核分裂で発生する中性子によって強度が落ちるほか、金属製の配管は中を流れる熱水や蒸気による浸食や腐食で厚さが薄くなり、ケーブルは熱などで性能が低下します。また、コンクリートの構造物も熱や放射線によって強度が低下する可能性があります。
こうしたリスクに対応するため、電力会社には現在も、運転開始から30年を超える前に重要な設備が安全に使えるか評価し、管理計画を作って10年ごとに更新していくことが義務づけられています。
それに加えて、40年を超えて運転したい場合、劣化状況を詳しく調べる「特別点検」を行ったうえで、規制委員会に申請して審査を受ける必要があり、合格すれば最大20年の延長が認められます。
こうしたリスクに対応するため、電力会社には現在も、運転開始から30年を超える前に重要な設備が安全に使えるか評価し、管理計画を作って10年ごとに更新していくことが義務づけられています。
それに加えて、40年を超えて運転したい場合、劣化状況を詳しく調べる「特別点検」を行ったうえで、規制委員会に申請して審査を受ける必要があり、合格すれば最大20年の延長が認められます。
運転期間の延長 安全性をどう確保する?

政府が原発の運転期間の延長を検討していることを受けて、原子力規制委員会は、60年を超えて運転する場合にも安全性を確認できるようにするための制度づくりに着手しました。
2日の会合では、事務局の原子力規制庁から、運転開始後30年から10年を超えない期間ごとに劣化状況を確認したうえで管理計画を策定し、規制委員会の認可を得るよう義務づけることや、この期間には運転が停止している期間も算入すること、それに、設計自体が古くなることにも対応するため、最新の基準への適合を求めるなどの案が示され、おおむね了承されました。
規制委員会は今後、電力各社の意見を聞いたうえで、制度の枠組みを年内にも取りまとめることにしています。
2日の会合では、事務局の原子力規制庁から、運転開始後30年から10年を超えない期間ごとに劣化状況を確認したうえで管理計画を策定し、規制委員会の認可を得るよう義務づけることや、この期間には運転が停止している期間も算入すること、それに、設計自体が古くなることにも対応するため、最新の基準への適合を求めるなどの案が示され、おおむね了承されました。
規制委員会は今後、電力各社の意見を聞いたうえで、制度の枠組みを年内にも取りまとめることにしています。

今回示された案は、10年ごとの安全性の評価と40年を超える運転の審査で行っている「特別点検」を合わせたような形で、運転開始から30年以降10年を超えない期間ごとに劣化状況を確認したうえで管理計画を策定し、規制委員会の認可を得るよう義務づけることにしています。
さらに、機器や設備の劣化を考慮しても最新の基準に適合していることを確認していくことも盛り込まれました。
さらに、機器や設備の劣化を考慮しても最新の基準に適合していることを確認していくことも盛り込まれました。
原子力規制委 山中委員長「現行制度よりはるかに厳しい規制」

原子力規制委員会の山中伸介 委員長
「運転開始から30年以降は最長10年ごとに基準に適合していれば認可し、適合しなければその時点で運転をやめていただくルールにつくりかえようという考えだ。最長10年ごとに繰り返し認可を求めることは事業者にとっては立証が難しくなるので、現行の制度よりもはるかに厳しい規制になるという認識だ」
「運転開始から30年以降は最長10年ごとに基準に適合していれば認可し、適合しなければその時点で運転をやめていただくルールにつくりかえようという考えだ。最長10年ごとに繰り返し認可を求めることは事業者にとっては立証が難しくなるので、現行の制度よりもはるかに厳しい規制になるという認識だ」
海外の状況は
IAEA=国際原子力機関のまとめによりますと、先月末時点で、世界の原発427基のうち、運転開始から30年を超えているのは66%にあたる283基、40年を超えているのは30%にあたる128基となっています。
最も長いのはスイスのベツナウ原発1号機やアメリカのナインマイルポイント原発1号機など5基で、53年前の1969年に運転を開始しました。
アメリカでは、運転期間は40年と定められていますが、技術的な理由ではなく、公益事業の独占を禁止する観点などからの規定で、規制当局の審査に合格すれば20年の延長が認められ、延長の回数に制限はありません。
資源エネルギー庁によりますと、60年を超える運転延長を認められた原発は94基あり、このうち6基は80年を超える運転も認められているということです。
ただ古い原発は経済性の観点から相次いで廃炉になっていて、実際に60年を超えて運転するかは、電力会社の判断になります。
また、フランスやイギリスでは運転期間の制限はなく、10年ごとに審査を受ける仕組みになっていて、このうちフランスでは、56基ある原発のうち20基が40年を超えて運転しているということです。
最も長いのはスイスのベツナウ原発1号機やアメリカのナインマイルポイント原発1号機など5基で、53年前の1969年に運転を開始しました。
アメリカでは、運転期間は40年と定められていますが、技術的な理由ではなく、公益事業の独占を禁止する観点などからの規定で、規制当局の審査に合格すれば20年の延長が認められ、延長の回数に制限はありません。
資源エネルギー庁によりますと、60年を超える運転延長を認められた原発は94基あり、このうち6基は80年を超える運転も認められているということです。
ただ古い原発は経済性の観点から相次いで廃炉になっていて、実際に60年を超えて運転するかは、電力会社の判断になります。
また、フランスやイギリスでは運転期間の制限はなく、10年ごとに審査を受ける仕組みになっていて、このうちフランスでは、56基ある原発のうち20基が40年を超えて運転しているということです。
原子力規制委 更田前委員長「海外と日本の状況は違う」
一方で、こうした海外の事例について原子力規制委員会の前委員長の更田豊志さんは「海外と日本では、地震ひとつを取っても置かれている状況が全然違い、新しい知見によって耐震要求が引き上げられることもあるので、必ずしも海外の事例が直接参考になるわけではない」と述べ、日本の状況にあわせた仕組みが必要になるという見解を示していました。
専門家「それぞれの炉で個別に判断する必要」

原子力規制庁の元幹部で長岡技術科学大学の山形浩史 教授は、原発を長期間運転するリスクについて「60年を超えて原発が安全かどうかは、実際にそのときが来て、技術的な評価をしないとわからない。いちばん心配なのは、炉心がある原子炉圧力容器に中性子があたってもろくなる問題で、運転の仕方によっても変わってくるので、それぞれの炉で個別に判断する必要がある」と述べました。
また、2日に示された制度案については「40年という年限に技術的な根拠はなかったので、30年を超えたら10年ごとに認可するというのは、安全が確保できるまでは認め、そうでなければ認めないという技術的な判断ができるので、理にかなっていると思う」と述べました。
そのうえで「年数を経るごとに劣化がどれだけ進むのか、評価が難しくなる。そのなかで、規制委員会が原発の運転を続けていいかどうか判断しなければならないので厳しい仕事になると思う」と述べました。
また、2日に示された制度案については「40年という年限に技術的な根拠はなかったので、30年を超えたら10年ごとに認可するというのは、安全が確保できるまでは認め、そうでなければ認めないという技術的な判断ができるので、理にかなっていると思う」と述べました。
そのうえで「年数を経るごとに劣化がどれだけ進むのか、評価が難しくなる。そのなかで、規制委員会が原発の運転を続けていいかどうか判断しなければならないので厳しい仕事になると思う」と述べました。