自転車の悪質な交通違反 警視庁が取締り強化 都内で集中取締り

自転車の悪質な交通違反について、警視庁は31日から取締りの強化に乗り出し、東京都内で集中的な取締りが行われました。

警視庁は、都内で自転車の事故が相次いでいることを受けて、特に重大な事故につながりかねない信号無視や一時不停止などの悪質な違反については、これまで罰則を伴わない「警告」にとどめていたケースでも刑事罰の対象となる交通切符、いわゆる「赤切符」を交付して検挙するなど、31日から対策の強化を始めました。

31日は東京 豊島区で集中的な取締りが行われ、警察官が新たな取締りの基準に基づいて警戒にあたり、信号無視をした自転車を呼び止めて「警告カード」を交付したり、交通ルールが書かれたチラシを手渡したりしていました。
警視庁によりますと、都内ではことしに入り9月末までに自転車の関係する交通事故が全体のおよそ46%にあたる1万件余り発生していて、去年の同じ時期と比べて1700件余り増え、増加傾向にあるということです。

警視庁は、交通量が多い駅前や幹線道路など特に事故の危険性が高い場所を中心に、各地で取締りを実施していく方針です。

警視庁交通執行課の石毛康晴管理官は「信号に従うなど基本的な交通ルールを守り、安全運転を心がけて事故の防止に努めてもらいたい」と話していました。

遺族「時として凶器になる認識を」

自転車による事故で90歳の母親を亡くした東京 中野区の50代の女性は「一人一人が自転車が時として凶器になってしまうという認識を持って利用してほしい」と話しています。

女性の母親は、ことし6月、自宅近くのセンターラインのない道路を渡ろうとしていた際に自転車にはねられて亡くなりました。

警視庁によりますと、事故は自転車が前を走っていた別の自転車を追い抜こうとした際に起きたとみられ、乗っていた50代の会社員は「前をよく見ていなかった」などと話しているということです。

女性は「母は高齢でしたが日課の散歩に行くときはつえが要らないくらい元気で、あの日の朝も『行ってくるね』といつものように出かけていったのを覚えています。近所でもスピードを出したり急に飛び出したりする自転車をよく見てはいましたが、まさか、母が自転車にはねられて亡くなるとは想像もしていませんでした」と語りました。

自転車による重大な事故が相次いでいることを受けて警視庁が取締りを強化したことについては、「母の事故を受けて自転車の危険性をとても身近なものとして感じました。取締りの強化によって1件でも悲惨な事故が減ってほしいです」と話しました。

そのうえで、「事故を起こしてしまうと被害者はもちろん、加害者やその家族まで取り返しのつかないことになってしまいます。警察官がすべての違反を取り締まることもできないと思うので、一人ひとりが『自転車は凶器にもなる』という認識をもって、スピードを出しすぎないとか飛び出さないとか、基本的なことを気をつけて利用してほしいです」と訴えていました。