“ウクライナ産農産物 輸出が再び滞るおそれ” 国連など懸念

ロシアがウクライナ産の農産物の輸出をめぐり合意の履行を無期限で停止すると一方的に表明したことについて、国連などからは輸出が再び滞るおそれがあるとして懸念の声が相次いでいます。

ウクライナ軍はロシアによる軍事侵攻への反転攻勢を強めていて、南部ヘルソン州では、中心都市ヘルソンに向けて部隊を進めているとみられます。

一方ウクライナのメディアは29日、ロシア側もヘルソン方面に4万人規模の部隊を集結させているとする見方を伝えました。

こうした中、ロシアは、ウクライナ南部クリミアに駐留するロシア軍の黒海艦隊が無人機による攻撃を受けたと主張し「船舶の安全な航行が保証できない」などとして、ウクライナ産の農産物の輸出をめぐる合意の履行を無期限で停止すると一方的に表明しました。
これについてロシアとウクライナの仲介役を務めてきたトルコの国防省は30日、ウクライナからの農産物の輸出が実質的に停止したことを明らかにしました。

そのうえで「合意の継続に悪影響を与えるあらゆる挑発を避けることが重要だ」として、関係各国に自制を呼びかけました。
また、国連のグテーレス事務総長は30日、報道官を通じて「ロシアが合意を履行するよう、緊密な接触を続けている」とする声明を出し、深い懸念を表明したうえで輸出が再び滞るおそれがあるとして事態の打開に向けて関係各国と協議を行っていることを明らかにしました。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、30日に公開した動画で「食料価格は高騰していて、ロシアはその責任を負うべき唯一の国だ。ロシアが飢餓で世界を脅かしている」と述べ、ロシア側を重ねて非難しました。

松野官房長官 “ロシアは協力継続を”

松野官房長官は、記者会見で「ロシアが一方的に合意の履行を停止すると発表したことは遺憾だ。世界の食料供給にもたらす影響、特に途上国における飢餓の拡大など、ぜい弱な層への影響を深刻に懸念し注視している」と述べました。

そのうえで「今後、食料価格の高騰などにより、全世界、とりわけ後発開発途上国など、最もぜい弱な人々の食料安全保障を危うくする事態をもたらすことは受け入れられない。日本政府としてロシアが直ちに穀物輸出の枠組みへの協力を継続することを強く求めていく」と述べました。