韓国 ハロウィーン前の梨泰院 154人死亡 何が起きた? 対策は?

韓国ソウルの繁華街イテウォン(梨泰院)で10月29日夜遅く、ハロウィーンを前に訪れていた大勢の若者が密集し、折り重なるようにして倒れる事故が起きました。

日本人2人を含む154人が死亡した今回の事故、いったい現場では何が起きていたのでしょうか?

Q. 事故の現場はどんな場所?

事故が起きたイテウォンは韓国有数の繁華街で、アメリカ軍の施設が近くにあるということもあり、昔から多くの外国人が訪れる場所となっています。

最近では韓国ドラマの舞台としても知られていて、日本人観光客も多く訪れるエリアです。

路地には各国の料理を提供する飲食店やナイトクラブが立ち並び、週末には多くの若者や観光客でにぎわう人気スポットです。
事故現場は地下鉄イテウォン駅を出てすぐの、飲食店とホテルに挟まれた狭い通りです。

幅3.2メートル、長さは45メートル程度の細い坂道です。

Q. 事故の前に何が?

ことしは新型コロナウイルスの規制が緩和されたことを受けて3年ぶりに大勢の若者が繰り出し、地元メディアによりますと当時は10万人以上が訪れたとみられるということです。

事故現場のすぐ近くの場所を映したとみられるSNSに投稿された映像では、仮装した人々などで身動きがとれないほどに混み合っていた様子がうかがえます。

Q. どのように事故は起きた?

事故が起きた10月29日午後10時15分ごろ、現場やその周辺には数万人が集まっていたとみられ、突然、坂の上の方から次々と折り重なるように人々が倒れていったということです。

現場にいた人は韓国メディアの取材に対し「みんなで『押さないで』と声を上げたが、突然悲鳴に変わった」と混乱した様子を語っていました。

Q. なぜ事故は起きた?

人が密集した原因については、地下鉄の駅を出て繁華街に向かうため坂を上がる人と、繁華街から駅の方向へ下りる人の動線が重なったためだという見方が出ています。

事故発生時には、壁をよじ登ったり、飲食店に駆け込んだりして難を逃れた人もいたということです。

発生から1時間で消防には「十数人が下敷きになっている」などの通報がおよそ80件寄せられたといいます。

Q. 被害の規模は?

韓国政府によりますと、これまでに154人の死亡が確認されました。

この中には、10代と20代の日本人女性も含まれていました。

死者の多くは10代と20代の若者で、特に女性が多かったということです。

韓国の通信社・連合ニュースは、現場で救命活動に当たった医師の話として、多くは窒息が死因だったとしたうえで「ほとんどは心臓マッサージをしても蘇生できない状態だった」と振り返ったと報じています。

Q. 事故の真相究明は?

韓国メディアからは、行政が事前に安全対策を十分講じなかったのではないかとの指摘が出ています。

イテウォンを管轄するヨンサン区(龍山区)はハロウィーンに関する対策会議を開いていたものの、事故を想定した安全管理対策が議論された様子は確認できなかったと伝えてられています。

また、区が職員を現場付近に派遣していたものの、人数が足りず十分な対応ができなかったとしています。
事故から一夜明け、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領は現場を視察したほか、大統領府で記者団に対し「本当にひどい事故で、起きてはならない悲劇だ。亡くなった方のご冥福を祈るとともに、けがをした方が早く回復するよう祈る」と述べました。

そのうえで、「事故の原因を徹底的に調査し、今後同じような事故が起きないよう、抜本的な対策を講じる」と述べ、事故対応に全力を尽くす考えを強調しました。

韓国政府は11月5日までを国として犠牲者に哀悼の意を示す期間にすると発表しました。

警察はおよそ500人規模の捜査本部を設置して事故の経緯や原因を捜査することにしていますが、10万人をこえる人が集まることを行政は事前に予見できなかったのか、その対応の検証も原因究明の焦点となりそうです。

群集での事故 とることのできる対策は

群集の事故に詳しい大阪工業大学の吉村英祐特任教授に対策を聞きました。

Q. 事故に巻き込まれないためには?

危ないと感じたら、とにかく『近づかない』ことが大事です。

群集に巻き込まれても『自分は抜け出せる』と思うかもしれませんが、車の渋滞と同じで、一度巻き込まれれば個人の意思ではどうにもできません。

引き返そうと思った時にはすでに身動きができないケースもあるので早めの退避が重要です。

Q. 危険かどうかを判断する具体的な目安は?

たとえば、『エレベーターの中だったら定員オーバーのブザーが鳴りそうかどうか』と考えてみることも有効です。

一般的にエレベーターは1平方メートルあたり4~5人が定員で、それを超えるとブザーがなります。

ブザーが鳴るような密度では自分の足元が見えなくなります。

ブザーが鳴りそうだと感じた時は危険な密度なので、すぐにその場から退避することが大事です。

特に荷物を持っている時や子どもと一緒にいる時は、早めにその場を離れてください。

Q. それでも巻き込まれてしまったら?

群集に巻き込まれてしまった時は、できるかぎり、道路の端に移動するのが良いです。

確実に助かるという保証はありませんが、できるかぎり端に移動することで少しでもリスクを下げることができます。

Q. 今回なぜここまで被害が大きくなった?

現場の坂は、傾斜が11度ほどだと報道されています。

その場合、立っているだけでも常に体重の2割ほどの力で坂の下のほうに引っ張られているような状態だったと考えられます。

そこに後ろから押されるような力がかかり、耐えきれずに倒れてしまったとみられます。

道幅も狭く、逃げ場がないので、ほぼ一方向に倒れてしまい、多くの人が重なり合って被害が大きくなった可能性があります。

Q. なぜ死傷者に10代や20代の女性が多かった?

周囲より身長が低い場合、自分の顔の前に他の人の肩などが当たって呼吸しにくくなります。

押し返す力が弱いと強く圧迫されてしまうので、結果的に女性に被害が集中した可能性もあります。

Q. 事故が起きやすい状況は?

人が多い場所で通行のルールを守らずに逆行する人がいたり、立ち止まる人がいたりすると危険です。

朝夕の通勤ラッシュも人が多いですが、群集雪崩が起きないのは、人が滞留せずに流れているからです。

電車に乗り遅れる人がいても混乱が起きないのは、すぐに次が来ると分かっているからで、これが早い者勝ちの状況だと、われさきにと殺到して危険な状態になります。

「危ない」と思ったら、とにかく近づかないことが大事で、特に子どもを連れているような時は、早めにその場を離れる勇気が大切です。