京王線切りつけ事件から1年 列車内での乗客の安全守る模索続く
京王線の車内で乗客が切りつけられて放火され、17人がけがをした事件から31日で1年です。鉄道会社では防犯カメラの設置や警備の強化など新たな対策が進められていますが、列車内での襲撃事件から乗客の安全をどう守るか模索が続いています。
去年10月31日、東京・調布市を走行していた京王線の車内で乗客が切りつけられ放火された事件では、70代の男性が一時、意識不明の重体となり、煙を吸うなどした16人がけがをしました。
殺人未遂や放火などの罪に問われている無職の服部恭太被告(25)は、捜査関係者によりますと、調べに対し「電車内だと乗客が逃げられないと思った。人が多いハロウィーンの日をねらった」などと供述していたということです。
この事件では、「非常通報装置」が複数作動したものの、車掌や運転士がすぐに状況を把握できず、ホームドアと列車のドアがずれた位置で停車したことなどから、多くの乗客が窓から避難する事態となりました。
事件を受け国土交通省は車内の状況把握のため防犯カメラなどの設備を充実することや、ホームドアと列車のドアがずれて停車した場合は双方のドアを開けて誘導するといった対策を示したほか、非常用設備の機能や使い方を分かりやすく表示するためのガイドラインを定めました。
一方で、防犯カメラについては新たに導入する車両への設置を義務づける方針を示したものの、国と専門家などの検討会ではコスト面の負担を訴える声や効果への疑問の声もあり議論は難航しています。
去年8月には走行中の小田急線の車内で乗客が襲撃されたほか、去年11月には九州新幹線で放火未遂事件が発生しており、鉄道会社では新たな対策や訓練などの取り組みが進められていますが、乗客をいかに守っていくか課題となっています。
京王電鉄 列車内に防犯カメラの設置進める
事件を受け、京王電鉄は安全対策の強化を進めてきました。
その1つが防犯カメラで、列車内の設置率は事件が起きた去年10月は17%でしたが、今月の時点で37%に増加しています。
事件前はすべて「収録型」でしたが、新たに車内の状況をリアルタイムで本社や司令所などと共有できる高性能の防犯カメラが180の車両に導入されました。
来年度末までに全車両と69あるすべての駅での設置を目指しています。
また、ことし5月からは改札やホーム、列車内で警戒にあたる警備員の胸に新たに小型のカメラを装着し、万が一に備えて映像を収録する対策も進めています。
さらに、今月24日から来月11日まで警備や啓発活動を強化していて、特にハロウィーンで沿線の人出が多くなると見込まれる31日までの3日間は危機管理レベルを「厳重警戒体制」に引き上げ、ほかの乗客が不安を感じるおそれのある仮装で乗車しないよう呼びかけています。
京王電鉄の重岡剛雄鉄道テロ・災害対策担当課長は「安全対策は『これで終わり』というものはないので、今後、利用状況を見ながら必要だと感じたものから取り組み、安全対策を徹底していきたい」と話していました。
その1つが防犯カメラで、列車内の設置率は事件が起きた去年10月は17%でしたが、今月の時点で37%に増加しています。
事件前はすべて「収録型」でしたが、新たに車内の状況をリアルタイムで本社や司令所などと共有できる高性能の防犯カメラが180の車両に導入されました。
来年度末までに全車両と69あるすべての駅での設置を目指しています。
また、ことし5月からは改札やホーム、列車内で警戒にあたる警備員の胸に新たに小型のカメラを装着し、万が一に備えて映像を収録する対策も進めています。
さらに、今月24日から来月11日まで警備や啓発活動を強化していて、特にハロウィーンで沿線の人出が多くなると見込まれる31日までの3日間は危機管理レベルを「厳重警戒体制」に引き上げ、ほかの乗客が不安を感じるおそれのある仮装で乗車しないよう呼びかけています。
京王電鉄の重岡剛雄鉄道テロ・災害対策担当課長は「安全対策は『これで終わり』というものはないので、今後、利用状況を見ながら必要だと感じたものから取り組み、安全対策を徹底していきたい」と話していました。
安全対策は強化 一方で難しさも
京王電鉄以外の鉄道各社も安全対策の強化に努める一方、難しさにも直面しています。
このうち、埼玉県内と東京・北区のおよそ15キロを結ぶ「埼玉高速鉄道」は、相次ぐ事件を受け当初の計画を前倒しして収録型の防犯カメラを60両すべての車両に合わせて240台設置しました。
一方、京王線の事件では非常時に手動でドアを開けるドアコックを乗客が操作し、列車が減速して緊急停車した際にホームドアの位置とずれたことで、多くの人が窓から脱出する事態となり、避難誘導やドアコックの取り扱いも課題となりました。
国土交通省は非常用の装置の使い方を分かりやすく表示するためのガイドラインを策定しつつ、ドアコックについては「原則、乗務員が使用する」という考え方を示しています。
埼玉高速鉄道は、ほぼすべての区間が地下のトンネル内を走行しているため、ドアコックの使用により駅間で緊急停車をすれば、地下で列車外に出ることによる2次的なリスクや、迅速な救助活動が行えないことによる被害拡大のおそれがあるとして、原則、係員が操作することにしています。
一方で、すべての列車がワンマン運転で車内には運転士以外の乗務員がいないなか、混乱の際に乗客に対して走行中にドアコックを使用しないことなどをどこまで原則どおり徹底できるか難しさも感じています。
埼玉高速鉄道の池田司郎鉄道統括部長は「実際の取り扱いは難しいが、原則は係員の指示のもと動いて頂くのが、安全の確保につながると考えています。京王線の事件を受け、あのような事件が起こりうると改めて認識したので、どう対応するか常に課題として考えています」と話していました。
このうち、埼玉県内と東京・北区のおよそ15キロを結ぶ「埼玉高速鉄道」は、相次ぐ事件を受け当初の計画を前倒しして収録型の防犯カメラを60両すべての車両に合わせて240台設置しました。
一方、京王線の事件では非常時に手動でドアを開けるドアコックを乗客が操作し、列車が減速して緊急停車した際にホームドアの位置とずれたことで、多くの人が窓から脱出する事態となり、避難誘導やドアコックの取り扱いも課題となりました。
国土交通省は非常用の装置の使い方を分かりやすく表示するためのガイドラインを策定しつつ、ドアコックについては「原則、乗務員が使用する」という考え方を示しています。
埼玉高速鉄道は、ほぼすべての区間が地下のトンネル内を走行しているため、ドアコックの使用により駅間で緊急停車をすれば、地下で列車外に出ることによる2次的なリスクや、迅速な救助活動が行えないことによる被害拡大のおそれがあるとして、原則、係員が操作することにしています。
一方で、すべての列車がワンマン運転で車内には運転士以外の乗務員がいないなか、混乱の際に乗客に対して走行中にドアコックを使用しないことなどをどこまで原則どおり徹底できるか難しさも感じています。
埼玉高速鉄道の池田司郎鉄道統括部長は「実際の取り扱いは難しいが、原則は係員の指示のもと動いて頂くのが、安全の確保につながると考えています。京王線の事件を受け、あのような事件が起こりうると改めて認識したので、どう対応するか常に課題として考えています」と話していました。