【詳細】日銀 黒田総裁が会見「大規模な金融緩和の維持」決定

日銀は、28日の金融政策決定会合で「大規模な金融緩和の維持」を決定。
一方で、今年度の消費者物価の上昇率の見通しを2.9%に引き上げました。
金融引き締めを続けるアメリカと、超低金利を維持する日銀の政策の方向性の違いが、32年ぶりの歴史的円安を招いているとも指摘されていますが、午後3時半から始まった会見で黒田総裁からどのような発言があったのか。
詳細にお伝えします。

【会見の流れ】

黒田総裁の記者会見は、東京 日本橋本石町にある日銀本店で開かれます。金融政策を決める会合のあと毎回開かれています。
会見では、まず黒田総裁が、会合での決定事項を説明。
その後記者からの質問に答えます。

9月22日の前回会合後の記者会見では、黒田総裁が「当面、金利を引き上げることはない」などと発言したことをきっかけに、円安が加速。その直後、政府・日銀は24年ぶりに、大規模なドル売り円買いの市場介入に踏み切りました。

景気 “持ち直している”

黒田総裁が着席し、午後3時30分、記者会見が始まりました。

会見開始時の円相場は1ドル=146円台半ばです。

まず景気の現状について、「資源高の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している」と述べました。

先行きについては、「資源高や、海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで回復していくと見られる」と述べました。

物価 “年末にかけて上昇”

9月の全国の消費者物価指数は前年比3%の上昇。

日銀が目標とする2%を大きく上回っています。

物価の見通しについて黒田総裁は、「消費者物価は、年末にかけてエネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、来年度半ばにかけてプラス幅を縮小していくと予想される」と述べました。

年末にかけ、さらに物価が上昇するという認識を示しました。

物価見通し 2.9%に引き上げ

日銀は、これまで今年度の物価上昇率の見通しを2.3%としていましたが、今回、2.9%に引き上げました。

黒田総裁は「輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から上振れている」と述べました。

金融・為替市場の動向を注視

急速に進む円安について、黒田総裁は冒頭の発言で、「経済をめぐる不確実性は極めて高い。金融・為替市場の動向や、わが国経済・物価への影響を十分注視する必要がある」と述べました。

“必要あれば ちゅうちょなく追加緩和”

冒頭発言の最後に黒田総裁は、金融政策の方向性について、「2%の物価安定の目標の実現を目指し、必要な時点まで金融緩和を継続する。必要があれば、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」と述べました。

“最近の円安 わが国の経済にとってマイナス”

外国為替市場で円安が進んだことについては、「為替相場は経済金融のファンダメンタルズを反映して、安定的に推移することが極めて重要だ。その意味で最近の円安の進行は急速かつ一方的で、こうした円安の進行は先行きの不確実性を高め、企業の事業計画策定を困難にするなど、わが国経済にとってマイナスであり、望ましくないと考えている」と述べました。

そのうえで、「政府は、投機による過度な変動は容認しない、過度な変動に対して適切な対応をとるとの方針を継続していると承知しているが、この方針に沿って、適切に判断していると考えている」と述べました。

“賃金の上昇伴う形で物価の安定目指す”

物価上昇の見通しについては、「国際商品市況や為替円安によって、輸入品価格が上昇していることが影響している。ただ年明け以降は、こうした海外からのコストプッシュ要因の押し上げが減衰するため、来年度半ばにかけて、プラス幅は縮小すると考えている」と述べました。

そのうえで、「日銀としては、賃金の上昇を伴う形で物価安定の目標を持続的・安定的に実現できるよう金融政策を行っていく」と述べました。

“2%の物価目標 来年度も達成状況にはならないのでは”

日銀が目指す2%の物価目標を安定的に達成できるのはいつになるのか。

黒田総裁は、「海外のコストプッシュ要因が落ち着いていく中で、来年度や再来年度は、1%台半ばぐらいの物価上昇率になるとみている。物価や賃金の上昇率が今の考えている以上に、上昇することもありうると思うが、今の時点の見込みは、やはり来年度でも物価上昇率が目標の2%を安定的に達成できるような状況にはならないのではないかとみている」と述べました。

3%まで上昇した今の物価上昇は、一時的で目標達成には時間がかかるという認識を改めて示した形です。

“経済を支えることが物価安定の目標達成には必要”

黒田総裁は、日本とアメリカの金利差が円安の要因になっているのではないかという質問に対し、「金利差の背景にあるインフレ率の違いや利上げによるアメリカ経済の減速などは、むしろドル安方向の要因で、日米の金利差だけに着目して最近の為替動向を説明することは一面的ではないか」と述べました。

そのうえで、「日本経済は回復途上にあり、これをしっかり支えていくことが経済にとってもプラスというだけでなく、賃上げを伴う形で物価安定目標が達成されるために必要だ。時間はかかるかもしれないが、こういった形で物価安定目標を達成することが必要であり、また可能であると考えている」と述べました。

“今の円安 物価の安定目標達成のチャンスではない”

今の円安は、日銀が目指す物価上昇の実現に追い風になるかという質問に黒田総裁は、「今の円安が、物価の安定目標の達成のチャンスになるとは、考えておりません。国際商品市況の高騰と円安が輸入物価を押し上げているが、賃上げを伴う形での安定的で持続的な物価上昇ではない。経済が力強く成長して企業の収益が拡大し、それで賃金が上昇して物価が上がっていくという経済の好循環がいちばん好ましいことであり、それを目指して、今の金融政策を行っている」と述べました。

“2%の物価安定目標に近づいている”

日銀の黒田総裁は、「物価見通しは、小幅だが上方修正されている。賃金の上昇を伴う形での物価上昇にウエイトがかかってきている。他方で輸入物価の影響は減衰しており、そうした意味で2%の物価安定目標を安定的、持続的に達成されるところに向けて、近づいているということは言えるが、まだ2%にはなっていないということだ。また、イールドカーブコントロール自体が円安をもたらすとは考えていない」と述べました。

“2023年度も2024年度も金利引き上げの出口はない”

黒田総裁は、「展望レポートでも、2023年度でも、2024年度でも、物価上昇率が1%台半ばという見通しで、今すぐ金利の引き上げや出口が来るとは考えていないが、2%が展望できるようなときには当然、出口の議論を政策委員会でして、それを適切に市場、その他とコミュニケート=対話することは重要だ」と述べました。

そのうえで、「そうした時点に至った場合は、当然のことながら出口戦略をできるだけ明確に、市場にも国民にも示していくということになると思うが、今のところ、2%の物価安定目標が持続的安定的に達成できるような状況には、まだ至ってないということだ」と述べました。

“3%ぐらいの実質的な賃上げがないと目標達成できない”

物価目標の達成には、来年の春闘でどの程度の賃上げが必要かという質問に対して、黒田総裁は、「ベア(ベースアップ)が重要な要素だ。2%の物価安定目標を持続的で安定的に達成するには、3%ぐらいの実質的な賃上げがないと達成できない。物価安定の目標は、単に数字が達成できればいいということではなくて、国民生活が向上していく形で実現していくべきものだ。今後とも賃金の上昇は十分注目していきたい」と述べました。

会見終了後 1ドル=147円台前半の場面も

黒田総裁の記者会見は、通常45分間がめどとなっていますが、28日は午後4時30分ごろまでおよそ1時間で終了しました。

前回、会見中に大きく円安が進んだことも意識してか、全体的には、ことばを選んで、慎重なやりとりが続いた印象です。

ただ、「2023年度も、2024年度も、金利引き上げの出口が来るとは考えていない」という発言などに市場は反応し、会見開始時に1ドル=146円半ばだった円相場は、会見終了後、147円台前半まで売られる場面がありました。