日銀の黒田総裁は金融政策決定会合のあとの記者会見で、2%の物価安定目標は当面、展望できる状況ではないとして、今すぐ金利の引き上げや金融緩和の出口が来るとは考えていないと述べました。
この中で黒田総裁は、日銀が目指す賃金の上昇を伴う2%の物価安定目標の達成時期について、「来年度でも物価上昇率が目標の2%を安定的に達成できるような状況にはならないのではないかとみている。展望レポートでは2023年度も2024年度でも物価上昇率が1%台半ばという見通しで、今すぐ金利の引き上げや出口が来るとは考えていない」と述べました。
また物価目標の達成には来年の春闘でどの程度の賃上げが必要かという質問に対して、黒田総裁は「ベア(ベースアップ)が重要な要素だ。2%の物価安定目標を持続的で安定的に達成するには、3%ぐらいの実質的な賃上げがないと達成できない」と述べました。
一方、最近の円安について黒田総裁は、「急速かつ一方的でこうした円安の進行は、先行きの不確実性を高め、業の事業計画の策定を困難にするなど、日本の経済にとってマイナスであり望ましくないと考えている」と述べました。
そのうえで、加速する円安に歯止めをかけるため政府・日銀が先月と今月に実施した市場介入について、「政府は、投機による過度な変動は容認せず適切な対応をとるとの方針を継続していると承知しているが、この方針に沿って適切に判断していると考えている」と述べました。

日銀 物価の見通し引き上げ「大規模金融緩和策」維持決定
日銀は、原材料価格の上昇や急速に進む円安を背景に、今年度の物価の見通しをプラス2.9%と、これまでのプラス2.3%から引き上げました。また、景気を下支えするため、今の大規模な金融緩和策を維持することを決めました。
日銀は28日までの2日間、金融政策を決める会合を開いたのにあわせて、最新の経済と物価の見通しをまとめた「展望レポート」を発表しました。
それによりますと、今年度の生鮮食品を除く消費者物価指数の見通しは、政策委員の中央値でプラス2.9%と、前回、ことし7月に示したプラス2.3%から引き上げました。
これについて日銀は、原材料価格の上昇に加えて、急速に進む円安の影響でエネルギーや食料品などの価格が上昇しているためだとしています。
来年度、2023年度と2024年度の物価の見通しは、いずれもプラス1.6%と、前回から引き上げました。
物価の先行きについて日銀は、企業の間で値上げの動きが広がる中、今後の原材料コストの上昇圧力などの動向しだいでは価格転嫁が想定以上に加速し、物価が上振れる可能性もあるとしています。
また、為替市場の急激な変動などが物価に及ぼす影響には十分注意する必要があるとしています。
日銀は、今の物価上昇は賃金の上昇などを伴っておらず、一時的なものだとしていて、景気を下支えするため、短期金利をマイナスにし、長期金利をゼロ%程度に抑えるよう国債を買い入れる、今の大規模な金融緩和策を維持することを全員一致で決めました。