プーチン氏 “核兵器使用の可能性 積極的に発言したことない”

ウクライナで軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は、核兵器を使用する可能性について「積極的に発言したことはない」と述べました。そのうえで、欧米側がロシアによる核兵器の使用の可能性をあおることで、ロシアと友好国などとの関係を悪化させようとしていると批判しました。

ロシアのプーチン大統領は27日、首都モスクワで開かれている国際情勢をテーマにした会議で演説しました。

このなかでプーチン大統領は「欧米側はウクライナで戦争をたきつけ台湾周辺で挑発を行い、世界の食料とエネルギー市場の不安定化をもたらしている」と述べ、欧米側が国際社会を不安定にしていると主張しました。

このあとプーチン大統領は出席者からの質問に応じ、欧米側がロシアが核兵器を使用するのではないかと警戒していることに関して「核兵器が存在するかぎり、その使用の危険性は常にある」と述べました。

一方で「ロシアは核兵器を使用する可能性について積極的に発言したことはない」と述べたうえで、欧米側がロシアによる核兵器の使用の可能性をあおることでロシアと友好国などとの関係を悪化させようとしていると批判しました。

また、放射性物質をまき散らすいわゆる「汚い爆弾」についてもプーチン大統領は「ロシアとしては政治的にも軍事的にも使う意味がない」と主張しました。

一方、プーチン大統領は来月インドネシアで開かれるG20の首脳会議にみずからが対面で出席するかどうかについて「ロシアからは間違いなく高いレベルの関係者が出席する。私も行くかもしれない。考えてみる」と述べただけで明言しませんでした。

演説は長時間 プーチン氏の訴えは

プーチン大統領が出席した会議は、2004年にロシアで設立された国際政治の専門家などによる討論クラブが開いているもので「バルダイ会議」と呼ばれています。

ことしは首都モスクワで4日間開かれ、主催者によりますと会議には41の国から100人以上の専門家や外交官などが参加したということです。

ことしの会議のテーマは「ポスト覇権主義の世界。すべての人のための正義と安全保障」で、ウクライナ情勢を巡り対立を深めるアメリカの「1極支配」を打破したいとするプーチン大統領の強い思いが反映されています。

最終日の27日に登壇したプーチン大統領は演説を行ったり、出席者からの質問に応じたりしておよそ3時間半にわたり持論を展開し続けました。

このなかでプーチン大統領は、欧米は自分たちの価値観を一方的に押しつけているなどとする批判を繰り返し、中国やインド、アフリカなど非欧米諸国の出席者を前に、多極化した新しい国際秩序の必要性を訴えました。

バイデン大統領 プーチン大統領の発言に懐疑的な見方

アメリカのバイデン大統領は27日、アメリカのケーブルテレビのインタビューの中で「ロシアのプーチン大統領はウクライナに対して核兵器を使う意図はないとしているが、信用できるか」と問われると「もし彼に使用する意図がないならば、どうして核兵器を使う能力があると繰り返し発言しているのか」と述べ、プーチン大統領の発言に懐疑的な見方を示しました。

林外相「核兵器使用可能性 深刻に懸念」

林外務大臣は、記者会見で「ロシア側からはこれまでもさまざまな核をめぐる発信がなされ、わが国として核兵器が使用される可能性を深刻に懸念している。ロシアの核兵器による威嚇や使用はあってはならず、ウクライナが『汚い爆弾』を使用する準備を行っているという虚偽の主張も認められない。いかなる口実を用いたとしても、ロシアによるさらなるエスカレーションは決して許されるものではない」と述べました。