「トマホーク」政府が購入を検討 いったいなぜ?

防衛力の抜本的な強化に向けて、政府がアメリカの巡航ミサイル「トマホーク」を購入できないか検討に入ったことが分かりました。

政府はいわゆる「反撃能力」の保有も念頭に、敵の射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル」として陸上自衛隊の「12式地対艦誘導弾」の改良型などを量産したいとしています。

ただ、このミサイルの運用が始まるのは2026年度以降の見通しとなっていることから、政府は十分に配備されるまでの抑止力や対処手段としてアメリカの巡航ミサイル「トマホーク」を購入できないか検討に入りました。
「トマホーク」について政府はアメリカ軍が各地の軍事作戦で運用しており高い信頼性があるとしていて、与党やアメリカ政府などと購入に向けて丁寧に調整を進めていく方針です。

一方、政府はいわゆる「台湾有事」を念頭に人員や物資を大規模に輸送する能力を増強する必要があるとして、自衛隊の輸送能力を補う目的で確保している民間フェリーの体制を現在の2隻から6隻程度に増やすことも検討しています。

「トマホーク」とは

防衛省などによりますと、「トマホーク」は、アメリカが開発した射程が千数百キロ以上の巡航ミサイルです。

アメリカ軍が1991年の湾岸戦争で実戦で初めて使用し、2003年のイラク戦争や4年前のシリアへの軍事攻撃などでも使用しました。

艦艇や潜水艦のほか、地上からも発射でき、レーダーで探知されないよう低い高度を維持しながら音速に近い速度で飛び、GPSなどの誘導によってピンポイントで目標を攻撃することができるとされています。

現在はアメリカ軍とイギリス軍が保有していて、オーストラリアも去年、トマホークを取得してイージス艦に搭載する予定を明らかにしています。

“反撃能力”をめぐる議論

いわゆる「反撃能力」は「敵基地攻撃能力」とも呼ばれています。

政府はこれまで「敵基地攻撃能力」の保有について、ミサイルなどによる攻撃を防ぐのにほかに手段がないと認められる時にかぎり、可能だとする考え方を示してきました。

法理論上、憲法が認める自衛の範囲に含まれ、専守防衛の考えからは逸脱しないという見解で、昭和31年には、当時の鳩山総理大臣が「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨だとは考えられない」と述べています。

ただ、日米安全保障体制のもとでは一貫してアメリカが「矛」、日本が「盾」の役割を担い、日本として、相手の基地の攻撃を目的とした装備を持つことは考えていないと繰り返し説明してきました。

転機となったのがおととしで、迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備断念をきっかけに、抑止力を向上させるためとして、自民党が相手領域内でも弾道ミサイルなどを阻止する能力の保有を含め、早急に検討して結論を出すよう政府に求めました。

ことし4月には自民党の安全保障調査会が「敵基地攻撃能力」について「反撃能力」に名称を変更したうえで保有し、対象範囲は基地に限定せず、指揮統制機能なども含めることを盛り込んだ政府への提言をまとめました。

岸田総理大臣は今月24日の衆議院予算委員会で「わが国自身の抑止力や対処力を強化していくことが重要だという認識に立ち、いわゆる『反撃能力』を含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的な検討を加速し、年末までに結論を出したい」と述べています。

元海将「国民に理解を得るような説明が必要」

政府がアメリカからの購入を検討している巡航ミサイル「トマホーク」について、海上自衛隊で司令官を務めた元海将の香田洋二さんは「現存するこのタイプのミサイルでは一番完成度が高いもので、実戦経験に裏付けられていることは間違いない」と話しています。

そのうえで、射程を大幅に伸ばした陸上自衛隊の「12式地対艦誘導弾」の改良型の導入が、2026年度以降の見通しとなっていることに触れ「近々の安全保障環境を考えたときに、トマホークを先に導入して、ある意味2段構えで長射程の攻撃能力に空白域を作らないという考えで進めているのではないか」と指摘しています。

一方、いわゆる「反撃能力」の保有も念頭に、長射程のミサイルを持つことについては「憲法問題も含めて、安全保障・国防というのは国民の意見が集約されているわけではない。安全保障の問題に理解が深まっていることをよいことに走るのではなく、国民に対してアプローチをして理解を得るような説明が必要だ」と指摘しています。