おにぎり 関西“味付けのり” 関東“焼きのり” なんでなん?

日本人のソウルフードとも言える、おにぎり。
パリパリっとした「焼きのり」を思い浮かべる方もいると思います。

しかし関西を始め西日本では、甘辛いタレにつけた「味付けのり」派も多くいます。

なぜおにぎりに「味付けのり」? そのルーツをたどりました。

(大阪放送局 記者 竹内宗昭 鞆田優希穂)

「味付けやないと悲しいです」

関西で「おにぎり×味付けのり」はどこまで支持を集めているのか。
大阪中心部の商店街などで道行く人たちに尋ねてみると…
大阪 60代女性
「大阪は味付けのりは小ちゃい頃から食べているから、それに慣れている。甘い味に」

大阪 20歳女性
「味付けやと思って期待していたのに、味付けやないと悲しいです」

千葉 30代男性
「おにぎりは焼きのり。こっちのほうが包みやすい」
15人に聞いたところ、おにぎりに巻く「のり」は、3分の2にあたる10人が「味付け派」でした。

インタビューをしていて、幼い頃から味付けのりを食べているという声が多く聞かれました。

味付けのりで売り上げアップ

こうしたニーズをくみ取ろうと、コンビニやスーパーも商品開発を進めてきました。

大手コンビニの「セブン‐イレブン・ジャパン」では、6年前から「味付けのり」のおにぎりを関西で販売しています。

大阪市内の店舗を訪れると、棚にところ狭しと並べられたおにぎりのパッケージには「味付けのり」の文字が…
現在、「味付けのり」が巻いてある具材は「焼鮭」「ツナマヨネーズ」など、5種類ほど。具材との相性がよいものは「味付け」に、それ以外を「焼きのり」にしているといいます。

店を訪れたのは、ちょうどお昼前の時間帯。
訪れた客は「味付けのり」のおにぎりを次々と買っていきました。
セブン-イレブン・ジャパン商品本部 関西地区担当 木村好宏さん
「会社で調査したところ、関西では味付けのりを非常に多く食べる食習慣があった。地域により根ざした商品を幅広く提供したいので、関西圏においては、味付けのりを使用したおにぎりを販売している」

このコンビニでは「味付けのり」のおにぎりの発売にこぎ着けるまで、およそ10年かかったといいますが、発売後の1か月で見ると、売り上げは20%も増えたといいます。

関西のほか、四国や九州などでも「味付けのり」のおにぎりを販売しています。
ただ「味付けのり」では、おにぎりを食べる際に、タレで手がべたついたり、フィルムにくっついたりしてしまうという難点もあります。

そこで、このコンビニでは「のり」のごはんと接する面は、調味液を濃くする一方で、手が触れる側は薄くしています。
さらに、フィルム自体もべたつかないよう材質を工夫しているといいますが、技術的にどんな工夫をしているのか、詳しくは企業秘密だそうです。

味付けのりはどうして関西に?

関西で愛されている味付けのり。
どのようにしてやってきたのでしょうか。

おにぎりの歴史に詳しい「おにぎり協会」や、味付けのりを日本で初めて発売した「山本海苔店」によりますと、普及にはある人物が関わっていたといいます。

江戸時代、のりは江戸を中心に生産され、人気を集めましたが、産地から遠い関西では当初、のりを食べる習慣はあまりありませんでした。
そうした中、明治2年(1869年)、明治天皇が京都を訪れる際、東京土産として開発されたのが味付けのり。

長距離移動をするうちに、鮮度によって味にばらつきが出るのを防ぐための工夫だったということです。

おにぎりの歴史に詳しい、おにぎり協会の中村祐介代表理事は次のように分析しています。
おにぎり協会 中村祐介代表理事
「当時お祭り騒ぎで『明治天皇が来たぞ』とみんな盛り上がりました。そこで『東京からお土産としてこのようなもの(=味付けのり)持ってこられました』と口コミで広がり、どんどん味付けのりという存在がブームとして広がっていったことがあるんじゃないか」

大量生産するにはどうすれば?

しかし、当時は味付けのりは1枚1枚手作業で塗られていたため手間がかかり、「米一升よりも高い」と言われるほど高級品でした。
なぜ一般の食卓にも広がるようになったのか。

調べてみると、大阪のある企業が関係していることがわかり、早速、訪れてみました。

ブームになっていた、味付けのりをどうにか大量生産できないか、頭を悩ませてきたといいます。

試行錯誤の結果、昭和6年(1931年)だしをきかせた甘辛いタレをローラーでのりに塗る機械の開発に成功。
味付けのりの大量生産が可能になりました。
その翌年、1瓶50枚にして誰でも手が届く価格で販売。

大ヒットにつながりました。
ニコニコのり 販売促進課 志智久課長
「関西人気質なのか、あらかじめ味が付いていることによってお得感を感じる方もいたほか、もともと関西はだし文化で、だしを好む傾向があって、昆布やかつおで味付けした味が関西の方にもマッチしているのではないかと思います」

東北人の私もだんだん味付けのり派に…

今回取材をする中で、味付けのりを家に常備している人が多く「子どものころ、おやつに食べていた」とか「食卓にはいつもあった」とか、いかに関西で味付けのりが浸透しているか実感しました。

東北出身の私(竹内・右)は子どもの頃から焼きのりを食べてきましたが、前任地の和歌山を含めて、関西歴は早5年。今回の取材を通して、味付けのりをたくさん食べ、味付けのり、焼きのり、それぞれのよさを再認識しました。

奈良出身の私(鞆田・左)は、ずっと味付けのりを食べてきましたが、焼きのりを巻いたおにぎりは素材の味を楽しめるなと感じました。今回の取材を通して、具材によってのりも違うことがわかり、いろいろな組み合わせを楽しんでみたいと思います。