川崎市内にある子どもの支援施設に通う不登校の子どもたちの声です。
「大事にしていた色鉛筆を隠されたりして」
「勉強もちょっと難しい。いろいろと出来ないのがあんまり好きじゃない」
コロナ禍の影響も。
「学校でお祭りがあったんだけど、そういうのもなくなっちゃって」
「プールとか一年生の時はできたけど、そこからずっとできないし、遠足とかでも一緒に話せないから嫌だった」

不登校が過去最多 なぜ?対策は? デジタル活用で学びを届ける
「子どもの数は減っているのに…」
昨年度、小中学生の不登校は24万人余りと過去最多を更新しました。不登校の小中学生の増加は9年連続で、10年前と比較すると小学生は3.6倍、中学生は1.7倍に増え、特に中学生は20人に1人が不登校となっています。
どうしたら学びを確保できるのか?
デジタル技術を活用した取り組みが子どもたちに少しずつ届き始めています。

登校できなくなったその訳は?
フリースクール 利用者が急増で苦境に
滋賀県彦根市にあるフリースクール「てだのふあ」では、去年4月の時点の利用者は5人ほどでしたが、この1年余りで5倍の25人に増えました。もともと学校に息苦しさを抱え、臨時休校などを経て登校する意欲が失われた子どもが多いということです。

子どもたちの急増に対応するため、このスクールは2度にわたって移転を繰り返しました。
保護者からの利用料だけでは人件費や移転にともなう経費などを賄うことはできませんが、フリースクールの運営自体を補助する国の制度はないため、クラウドファンディングで資金を募るなどしてやりくりしています。
保護者からの利用料だけでは人件費や移転にともなう経費などを賄うことはできませんが、フリースクールの運営自体を補助する国の制度はないため、クラウドファンディングで資金を募るなどしてやりくりしています。

山下吉和代表は「子どもの数は減っているのに、息苦しさを抱えている子が増えていることを非常に危惧している。資金繰りは相当厳しいので、教育の質を上げて持続可能に運営していくためにも行政からの支援は絶対的に必要だ」と訴えています。
不登校対応【1】オンライン授業
不登校の小中学生への支援が追いつかない中、オンライン授業を活用することで、不登校から学校に通う生徒が増えたという地域もあります。
青森市は新型コロナ対策などとして令和2年度から公立の中学校すべてでテレビ会議システムを使ったオンライン授業を導入し、その後、教室の授業を撮影して不登校の生徒に向けて配信するなど不登校対策としても活用しています。
その結果、市内の不登校になった生徒のうち登校できるようになった生徒の割合が、導入前の令和元年度は26%余りでしたが、導入後の2年度と3年度は全国平均を大きく上回り、45%以上に上昇しました。
青森市は新型コロナ対策などとして令和2年度から公立の中学校すべてでテレビ会議システムを使ったオンライン授業を導入し、その後、教室の授業を撮影して不登校の生徒に向けて配信するなど不登校対策としても活用しています。
その結果、市内の不登校になった生徒のうち登校できるようになった生徒の割合が、導入前の令和元年度は26%余りでしたが、導入後の2年度と3年度は全国平均を大きく上回り、45%以上に上昇しました。

市内にある甲田中学校では不登校の家庭向けの配信のほか、学校に通い始めた生徒向けの別室を設け、現在は10人ほどがここでオンライン授業を受けています。
ここに通う女子生徒は別室でオンライン授業を受けながら、少しずつ教室にも行けるようになったということです。
(女子生徒)
「教室では悪口を言われているようなイメージがあって入ることのハードルが高くなっていた。別室があることで周りの目を気にしなくてよくなり、学校に行くことへのハードルも下がった」
ここに通う女子生徒は別室でオンライン授業を受けながら、少しずつ教室にも行けるようになったということです。
(女子生徒)
「教室では悪口を言われているようなイメージがあって入ることのハードルが高くなっていた。別室があることで周りの目を気にしなくてよくなり、学校に行くことへのハードルも下がった」
不登校対応【2】メタバース登校
メタバース=仮想空間での学習支援を活用する取り組みを始めている地域もあります。
埼玉県戸田市が活用するのは東京の認定NPO法人が1年前に始めたサービスで、「メタバース登校」とも呼ばれています。子どもたちは自分の分身、アバターを使ってメタバースの世界を自由に移動でき、特定の教室に入ることで、他の子どもや講師と学習できます。
埼玉県戸田市が活用するのは東京の認定NPO法人が1年前に始めたサービスで、「メタバース登校」とも呼ばれています。子どもたちは自分の分身、アバターを使ってメタバースの世界を自由に移動でき、特定の教室に入ることで、他の子どもや講師と学習できます。

2年前から不登校で、サービスを利用している小学5年生は「オンラインなので気軽におしゃべりできる。実際に友達と会って、鬼ごっことかオンラインではできないこともしてみたい」と話し、現実の世界での交流にも興味を持ち始めている様子でした。
戸田市はこの秋から、このサービスを活用して学習した不登校の児童や生徒を、校長が認めれば出席扱いにすることにしました。戸田市はこれまでも学校のなかに不登校専用の部屋を設けるなど対策を進めてきましたが、学校や教育委員会と関わりを持てない子どもたちの状況を把握することが難しかったということです。
メタバースを活用することで、不登校の子どもたちにまずは、周りの人とつながる一歩を踏み出してもらいたいとしています。
戸田市はこの秋から、このサービスを活用して学習した不登校の児童や生徒を、校長が認めれば出席扱いにすることにしました。戸田市はこれまでも学校のなかに不登校専用の部屋を設けるなど対策を進めてきましたが、学校や教育委員会と関わりを持てない子どもたちの状況を把握することが難しかったということです。
メタバースを活用することで、不登校の子どもたちにまずは、周りの人とつながる一歩を踏み出してもらいたいとしています。

(戸田市立教育センター 杉森雅之所長)
「学びに触れ、人間関係を作ることにすごく大きな意味を感じる。将来の社会的自立につながっていけばいい」
「学びに触れ、人間関係を作ることにすごく大きな意味を感じる。将来の社会的自立につながっていけばいい」
デジタル活用の一方で…
現場で模索が続く一方で、気になる調査結果も。
今回の文部科学省の調査では、不登校の小中学生24万人余りのうち、3分の1以上にあたる8万8000人余りが学校やフリースクールなどの支援を受けていないということが分かっています。文部科学省の担当者は、不登校の増加に相談や指導の受け入れ先の対応が追いついていないと見て、体制の拡充を検討しています。
今回の文部科学省の調査では、不登校の小中学生24万人余りのうち、3分の1以上にあたる8万8000人余りが学校やフリースクールなどの支援を受けていないということが分かっています。文部科学省の担当者は、不登校の増加に相談や指導の受け入れ先の対応が追いついていないと見て、体制の拡充を検討しています。
専門家「いろんな選択肢を提示できる制度を」

不登校について詳しい大東文化大学の山本宏樹准教授は「新型コロナの影響で子どもたちは修学旅行に行けなかったり、部活動も満足にできなかったりしているほか、給食も黙食となるなどさまざまな形で我慢を強いられている。大人と違って息抜きの自由度も少ないので、さまざまな形で圧力がかかり、不登校につながっていると考えられる」と指摘しています。
そのうえで「不登校の子どもに多様な教育の機会を与えることが国の方針のはずなのに、学校を休んだ結果、教育の選択肢が無くて行き場を失い、孤立化してしまっている子どもが増えてしまっては意味がない。国や自治体は、しっかりとした財源や人員配置を行い、いろんな選択肢を提示できる制度作りをしていくべきだ」と話しています。
そのうえで「不登校の子どもに多様な教育の機会を与えることが国の方針のはずなのに、学校を休んだ結果、教育の選択肢が無くて行き場を失い、孤立化してしまっている子どもが増えてしまっては意味がない。国や自治体は、しっかりとした財源や人員配置を行い、いろんな選択肢を提示できる制度作りをしていくべきだ」と話しています。