終わり見えぬ円安・物価高 大学教育や障害者施設にも影

私たちの暮らしのさまざまなところに影を落としている円安に物価高。都内の大学の中には、学生の学びの環境に影響が出始めているところもあります。

大学の電気代 倍近くに

およそ7000人の学生が通う東京・足立区にある東京電機大学のキャンパスでは、円安などを背景にした電気料金の値上がりによって、今年度の電気代はおよそ3億2000万円と、例年の倍近くに増える見込みだということです。

海外専門誌 購入取りやめも

さらに、研究のために海外から毎月取り寄せている専門誌の値段も、円安の影響で1冊当たり年に数万円値上がりしているということです。

このため現在、8つの専門誌について購入の中止を検討していて、今後も円安が続けば、さらに対象を広げる可能性があるということです。

論文執筆の教室は暗く

大学では電気代を少しでも節約するため、学生が論文の執筆などに活用しているパソコンが設置された7つの教室を、授業のとき以外は閉鎖するようにしています。

また、エスカレーター10基のうち、2基の使用を取りやめているほか、廊下の電気を3分の1から3分の2程度間引くなどの対策をとっているということです。

佐藤総務部長 “影響食い止めるよう頑張るしかない”

東京電機大学の佐藤龍総務部長は「実験室の機器や学生が使うパソコンで大学の電気をかなり使っているので、学生や教職員には節電に努めるようお願いしている。円安が続く以上、影響が出てくることはしかたないと思うが、影響を食い止めるよう頑張るしかない」と話していました。

障害者施設でも電気代が急増

電気料金などが上がる中、障害のある人たちが利用している都内の施設では、運営費がかさみ厳しい経営状況に置かれています。

およそ60人が利用している東京・府中市の障害者施設では、先月までの半年間の電気代が214万円と、去年の同じ時期と比べて33%増えました。
節電のために照明をLEDに変えたうえで明るさを抑えた設定にしているほか、暖房の温度も利用者の体調に影響が出ないよう注意しながら22度までに制限しているということです。

施設には送迎のためのワゴン車が13台ありますが、ガソリン代は先月までの半年間で117万円と去年の同じ時期に比べて18%増えたということです。

利用者の工賃維持にも不安

また、施設では利用者が製造したパンの販売を行っていますが、原材料価格がさらに値上がりした場合、利用者の工賃を維持していくため販売価格の値上げを検討せざるをえないとしていて、今後の施設の運営に不安を募らせています。

施設長 “人件費でコントロールするしかない”

「ワークセンターこむたん」の北條正志施設長は「事務費は最大限抑えているので、職員の給与を抑えるのか欠員が出た場合に補充しないとか、人件費の部分でコントロールするしか方策がなくなっている。障害者施設の経営はどこも厳しくなっていると思います」と話していました。