【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(26日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる26日(日本時間)の動きをお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア国防相 中国 インドと電話会談「汚い爆弾」への懸念表明

ロシア国防省は26日、ショイグ国防相が、中国の魏鳳和国防相やインドのシン国防相とそれぞれ電話会談したと発表しました。

この中でショイグ国防相は、ウクライナ側が放射性物質をまき散らすいわゆる「汚い爆弾」を使用する可能性について一方的に懸念を表明したということです。

ロシア国防省はこれまでもアメリカ、フランス、トルコ、イギリスに対してもそれぞれ同じ主張をしていますがロシアと伝統的に友好関係にある中国やインドにも訴え、理解を得たいねらいがあったとみられます。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は26日、「汚い爆弾」について「ウクライナ側の無責任な行為を阻止するため国際社会に措置をとってもらおうとわれわれの見解を伝え続ける」と述べています。

これに対してウクライナ側はロシア側の情報のねつ造だと強く反発し、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は「欧米側を威嚇し、ウクライナへの軍事支援をやめさせるねらいとみられる」と分析しています。

プーチン大統領 「汚い爆弾」に言及

ロシアのプーチン大統領は26日、旧ソビエト諸国でつくるCIS=独立国家共同体の治安機関のトップによる会議にオンラインで出席しました。この中でプーチン大統領は「ウクライナ側が、いわゆる『汚い爆弾』を挑発として利用する計画は知られたところだ」と述べ、放射性物質をまき散らす、いわゆる「汚い爆弾」をウクライナ側が使用する可能性があるとする、これまでのロシア側の一方的な主張に言及しました。

また、ウクライナについて「実質的に主権を失いアメリカから直接、支配されている。アメリカは、この国を、ロシアやベラルーシ、CIS全体に打撃を与えるために利用している」と主張し、外国の情報機関などに連携して対処する必要があると訴えました。

CISに加盟する中央アジア諸国の中には軍事侵攻を続けるロシアと距離を置く動きもみられる中、プーチン大統領は「CIS全体でも各国でも、これほど複雑な脅威に直面したことはない」と強調していて、ウクライナを支援するアメリカは共通の脅威だとする持論を展開しながら、結束を図りたい思惑があるとみられます。

ロシア “核戦力を使った軍事演習”の開始を発表

ロシア大統領府は、核兵器の搭載が可能なミサイルの発射など核戦力を使った軍事演習を開始したと発表しました。

演習は、定期的に行われているもので、プーチン大統領がクレムリンでオンライン形式で指揮するなか実施されました。

ロシア北部の基地から大陸間弾道ミサイルの「ヤルス」を発射したほか、北西部のバレンツ海では潜水艦から弾道ミサイル「シネワ」の発射訓練などが行われたとしています。

ロシア大統領府は、演習の目的は、戦略的抑止力のためで、想定された課題は達成されたと強調しました。

アメリカ政府は25日、ロシア側から、核戦力の軍事演習を実施すると事前に通知を受けたことを明らかにし、米ロの偶発的な衝突のリスク軽減につながるとしています。

一方、ウクライナ情勢をめぐる緊張が続く中、欧米側は、ロシア軍の核戦力の動きを注視しているものとみられます。

ウクライナ副首相 電力不足で国外避難者に“今は帰国しないで”

ウクライナのベレシチュク副首相は、26日までに地元メディアのインタビューで、国外に避難している人たちに対し、ロシアによるエネルギー関連施設への攻撃で電力が不足しているとして今は帰国しないよう呼びかけました。

このなかでベレシチュク副首相は「私たちはこの冬を乗り越えなければならない。今、帰国すれば、自分の子どもや親戚、高齢者などは大変な状況にさらされるかもしれない。冬を国外で過ごせるのであればそうしてほしい」と訴えました。

ウクライナの電力状況をめぐっては、エネルギー相が、先週、電力インフラの30%から40%が攻撃を受け、特に火力発電所が標的にされたことで火力発電能力の少なくとも半分が失われたと明らかにしています。

ウクライナ公共放送 テレビ塔破壊を非難 人権裁判所に訴え

ウクライナの公共放送は、ロシアの攻撃でテレビ塔が破壊されて放送の中断を余儀なくされたことは人権と基本的な自由の保護に関する条約などに反するとして、ヨーロッパの人権裁判所に訴えました。

この中では、ウクライナの公共放送はこれまでに首都キーウなどにある9つの地域のテレビ塔がロシアの攻撃を受けて放送が一時中断したほか、南部の都市メリトポリでは、テレビ塔が占拠されるなどしたとしています。

訴えについてウクライナの公共放送は「テレビ塔が攻撃されたことで人々にいち早く危険を知らせることができなくなった。ロシアのプロパガンダにそぐわないすべての情報源を遮断するのがロシア政府の方針だ」とするコメントを発表しロシアを非難しました。

訪日のウクライナ議員団 “日本の知見生かし復旧や復興目指す”

ウクライナの議員団は、ことし2月にロシアによる軍事侵攻が始まって以降初めて今月15日に来日し、国会議員や日本政府の関係者らと面会を重ね、26日に帰国するのを前に都内で記者会見を開きました。

議員団の代表をつとめるハリーナ・ミハイリュク氏は「日本は、信頼できるパートナーであり感謝している」と述べ、日本の各方面からウクライナへの支援を続ける意向が示されたとして謝意を表しました。

そのうえで「エネルギーインフラの40%が破壊され、冬を乗り越えるために発電機などが必要だ」と述べ、冬を迎える市民の生活支援や街の復旧に向けた経済協力などを訴えました。

また、ことし5月に激戦の末、ロシアに掌握された東部マリウポリ出身のヤロスラフ・ジェレズニャク議員は、「戦争に勝ったあと再び日本を訪問して再建計画を議論したい。日本が戦争や震災から復興したようにウクライナをよりよい状態に再建したい」と述べ、今回の訪問で得た日本の知見なども生かして復旧や復興を目指す考えを示しました。

英 スナク新首相がゼレンスキー大統領と電話会談

イギリスのスナク新首相は25日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談しロシアの侵攻に対抗するため、引き続き全面的に支援すると伝えました。

イギリスの首相官邸によりますとこの中で両首脳は、ロシアのプーチン政権に、経済制裁の継続を通じて、圧力をかけ続ける必要性で一致したということです。

また、ゼレンスキー大統領から就任を祝福されたスナク首相は感謝を示したうえで「近いうちに直接会いたい」と伝えたとしています。

イギリスはウクライナに対し、軍事・経済の大規模な支援をしていて、スナク首相としては、ロシアに強硬な姿勢をとってきたジョンソン元首相やトラス前首相と同様、引き続き、ウクライナを全面的に支援する姿勢を示した形です。

ゼレンスキー大統領 英 スナク新首相に祝意

ウクライナのゼレンスキー大統領は、スナク新首相の就任を受けて、自身のツイッターに「イギリス社会と世界全体が、現在、直面しているすべての困難をうまく乗り越えることを願っている」と投稿し、祝意を表しました。

また、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を続けるなか「ウクライナとイギリスの戦略的な協力関係をともに強化し続ける準備はできている」としてイギリスとの連携を一層強めていく考えを示しました。

「汚い爆弾」めぐり安保理で緊急会合

25日、非公開で行われた国連の安全保障理事会の緊急会合で、ロシアは放射性物質をまき散らす爆弾、いわゆる「汚い爆弾」を使用する計画をウクライナ側が持っているというみずからの主張を繰り返したということです。

会合のあと、ロシアのポリャンスキー国連次席大使は記者団に対し「非常に深刻な脅威だ。ウクライナには汚い爆弾を製造する能力と理由がある」と述べました。

一方、イギリスのカリウキ国連次席大使は記者団に対し「ロシアから証拠は示されなかった。ロシアによるあからさまな虚偽の主張で、われわれがこれまで何度もみてきたものだ」と述べました。

また、ノルウェーの国連代表部もツイッターに「ロシアは証拠のない主張を広めるべきではない」と投稿するなど、欧米各国は「汚い爆弾」をめぐるロシアの主張は虚偽の情報だと非難しました。

バイデン大統領「核兵器使用は考えられないほど重大な過ち」

アメリカのバイデン大統領は25日、ロシアが放射性物質をまき散らすいわゆる「汚い爆弾」や核兵器を使用する可能性があると考えるかどうか記者団から問われ「これだけは言っておきたい。戦術核兵器を使用すれば、考えられないほどの重大な過ちを犯すことを意味する」と述べ、ロシアに警告しました。

一方、「汚い爆弾」をウクライナ側が使用する可能性についてロシアが一方的に懸念を表明していることが、ウクライナ側から攻撃を受けたかのように装って攻撃の口実を得る「偽旗作戦」につながるかどうかについては「わからない」と述べるにとどめました。

ウクライナ原子力発電公社「ロシア軍が無許可の工事」

ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」は25日、声明を発表し、南部のザポリージャ原子力発電所にある使用済み核燃料の貯蔵施設付近で、駐留するロシア軍が無許可の工事を行っていると明らかにしました。

工事はこの1週間秘密裏に行われていて、ウクライナ人の職員や現地に駐在しているIAEA=国際原子力機関の専門家が現場に立ち入るのは禁止されているとしています。

エネルゴアトムはロシアが放射性物質をまき散らす爆弾、いわゆる「汚い爆弾」をウクライナ側が使用することへの懸念を表明していることについて「ザポリージャ原発で貯蔵する核物質や放射性廃棄物を利用したテロ行為をロシア側が準備していることを示しているのではないか」との見方を示し、IAEAによる査察の早期実現を求めています。

IAEAグロッシ事務局長 ウクライナ側要請に応じ査察官派遣

ロシアが放射性物質をまき散らす爆弾いわゆる「汚い爆弾」をウクライナ側が使用する可能性について一方的に懸念を表明する中、IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は24日、声明を出し、ウクライナ側の要請に応じ査察官を派遣すると発表しました。

グロッシ事務局長は声明で、今回の査察は定期的に査察官が訪れている2つの原子力関連施設で行われるとしていて、このうち1か所については1か月前に査察を行い、その際、申告されていない核関連の活動や物質は発見されなかったと説明しています。

IAEAは2つの施設がウクライナのどの施設なのか明らかにしていませんが、近く査察官を派遣するための準備をしているということです。

ウクライナのクレバ外相は、25日、ロシア側の主張に根拠がないことを示すためとして、グロッシ事務局長に「汚い爆弾」が製造されているとロシアが主張するウクライナ国内の施設での査察をIAEAに求めたことを明らかにしていました。

ザポリージャ州で親ロシア派が住民部隊を組織 ロシアメディア

ロシアメディアは25日、ウクライナ南部ザポリージャ州で親ロシア派がウクライナとの戦闘に加わる住民の部隊を組織し、すでに活動を開始したと伝えました。

部隊は地雷の除去のほか、鉄道の線路や送電線の管理など重要インフラの安全確保にあたるとする一方、「必要に応じて前線に送られる」としています。

24日には、南部ヘルソン州でも親ロシア派が地域に残っている住民による部隊を組織したと発表しました。

ロシア側は一方的に併合したとし、戒厳令を導入した地域で兵員不足を補い、ウクライナ軍の反転攻勢を食い止めたいねらいがあるものとみられます。