ウクライナ軍 領土奪還に向け南部ヘルソン州で反転攻勢強める

ウクライナ軍は領土奪還に向けて、一方的に併合された南部ヘルソン州で反転攻勢を強めているのに対し、ロシア側は、中心都市ヘルソンで戦闘の準備を進め、今後、数週間にわたって戦闘が続くという見方が出ています。

ウクライナ東部ドネツク州の知事は25日、ウクライナ側の拠点の1つバフムトで、ロシア軍による攻撃で市民7人が死亡したほか、3人がけがをしたとするなど犠牲者が増え続けています。

これに対してウクライナ軍は、東部や南部で領土奪還に向けて反転攻勢を強め、このうち、ロシアが一方的な併合に踏み切った南部ヘルソン州では、ウクライナ軍の反撃が続いています。

一方、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は24日、ヘルソンでの戦況について、ロシア軍が中心都市ヘルソンでウクライナ軍との戦闘に向けた準備をしている可能性が高いと指摘しました。

また、ウクライナの政治評論家で現在は、ウクライナ軍の部隊に所属し、戦闘に参加しているというタラス・ベレゾベツ氏は、NHKの取材に対してロシア軍は、空てい部隊や新たに動員された予備役の兵士たちを、ヘルソンがあるドニプロ川の右岸に、戦車や弾薬とともに投入していると明らかにし、今後、数週間にわたって戦闘が続くという見方を示しました。

一方、ロシアのショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長は、24日までに行った各国との電話会談で、放射性物質をまき散らす爆弾、いわゆる「汚い爆弾」をウクライナが使用する可能性について、根拠を示さないまま一方的に懸念を表明しました。

ウクライナ側は情報のねつ造だと強く反発し、アメリカやNATO=北大西洋条約機構は「虚偽の主張だ」などとして、ロシアへの批判を強めています。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は24日までの分析で、ロシア側が情報戦を強化しているとしたうえで、欧米のウクライナへの軍事支援を阻止させようとするねらいもあるという見方を示しています。

ロシアによる虚偽の主張など拒否

ロシアがウクライナ側がいわゆる「汚い爆弾」を使用する可能性について、一方的な主張を展開する中、アメリカのオースティン国防長官とウクライナのレズニコフ国防相が電話会談を行いました。

アメリカ国防総省によりますと、会談は24日に行われ、このなかでオースティン国防長官は、ロシアがウクライナに関して虚偽の主張を行っているという認識を重ねて示したということです。

そのうえで、ロシアによる虚偽の主張や、それを事態の悪化に利用しようとするいかなる試みも拒否すると強調し、ウクライナへの支援を継続する方針を確認したとしています。

一方、ウクライナのレズニコフ国防相は自身のツイッターへの投稿で、今回の会談ではアメリカからの追加の軍事支援についても話し合われたとしています。

「汚い爆弾」とは

いわゆる「汚い爆弾」は、放射性物質をまき散らす爆発物のことで「放射性物質飛散装置」とも言われます。

内部には粉末状の放射性物質などが詰め込まれ、爆発によって放射性物質が広い範囲に拡散するほか、放射能を帯びた爆弾の破片でけがをするおそれがあります。
長崎大学核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎教授によりますと、核兵器と比較して広い地域を一瞬で破壊する威力はないものの、使用された地域では広い範囲で放射能汚染の被害が生じ、放射性物質の除去に時間や費用がかかるなど、住民生活に大きな影響を及ぼす可能性があるということです。

防衛省によりますと、軍隊が「汚い爆弾」を使用した例は把握していないとしています。