【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(25日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる25日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア前大統領 工場で戦車などを視察

ロシアの前の大統領で安全保障会議のメドベージェフ副議長は24日、プーチン大統領の指示で中部ニジニ・タギルにあるロシア最大の装甲車メーカーを訪れたとSNSに投稿しました。

このなかで、メドベージェフ氏は工場で戦車などを視察し、ウクライナの軍事侵攻で使用される装備品の部隊への供給を加速させることを協議したとしています。

さらに、メドベージェフ氏はSNSのなかで、「敵側は、ロシアが装備品や兵器をまもなく使い切るといった主張を繰り返している。期待しないほうがいい。戦車や大砲、ミサイル、無人機といった兵器などの製造量は数倍に増加している」と主張しました。

ウクライナへの侵攻でロシア軍は多くの装備品を失い、制裁の影響も受けて、ミサイルなど兵器不足に直面していると欧米側は指摘しています。

プーチン政権は、こうした主張に反論するとともに首相をはじめ、国防相、治安機関のトップなどをメンバーにした調整会議を発足させるなどして軍などの部隊に必要な物資を調達することに力を入れています。

ウクライナ軍の反撃続く中 ロシア軍 南部へルソンで戦闘準備か

ウクライナ東部ドネツク州の知事は25日、ウクライナ側の拠点の1つバフムトでロシア軍による攻撃で市民7人が死亡したほか、3人がけがをしたとするなど犠牲者が増え続けています。

これに対してウクライナ軍は、東部や南部で領土奪還に向けて反転攻勢を強め、このうちロシアが一方的な併合に踏み切った南部ヘルソン州では、ウクライナ軍の反撃が続いています。

一方、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は24日、ヘルソンでの戦況について、ロシア軍が中心都市ヘルソンでウクライナ軍との戦闘に向けた準備をしている可能性が高いと指摘しました。

アメリカ国防長官とウクライナ国防相が電話会談

ロシアが、ウクライナ側がいわゆる「汚い爆弾」を使用する可能性について一方的な主張を展開する中、アメリカのオースティン国防長官とウクライナのレズニコフ国防相が電話会談を行いました。

アメリカ国防総省によりますと、会談は24日に行われ、このなかでオースティン国防長官は、ロシアがウクライナに関して虚偽の主張を行っているという認識を重ねて示したということです。その上で、ロシアによる虚偽の主張や、それを事態の悪化に利用しようとするいかなる試みも拒否すると強調し、ウクライナへの支援を継続する方針を確認したとしています。

一方、ウクライナのレズニコフ国防相は自身のツイッターへの投稿で、今回の会談ではアメリカからの追加の軍事支援についても話し合われたとしています。

ゼレンスキー大統領 侵攻8か月 “領土奪還へ反転攻勢続ける”

ゼレンスキー大統領は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから8か月となった24日、公開した動画で、「戦争が始まってきょうでちょうど8か月になった。この間、われわれはウクライナの土地を一歩ずつ解放してきた。時が来れば、ウクライナ全土が自由になるだろう」と述べて、これまでの戦果を強調し、領土の奪還を目指して、反転攻勢を続ける考えを改めて示しました。

そのうえで、ゼレンスキー大統領は、「ロシアはウクライナに関し、さまざまなでたらめを言い立て、欧米諸国を威嚇しているが、われわれには気を緩めるつもりはなく、これからもウクライナの勝利への道を歩んでいく」と述べ、ロシア軍の攻撃に備えて、インフラ施設の防御を強化していくとともに、防空システムの構築などを進めていくと強調しました。

イラン “無人機の使用 ウクライナと検証する用意ある”

イランの国営通信によりますと、ロシアにイランが無人機を供与していると指摘されていることについて、イランのアブドラヒアン外相は24日、首都テヘランで出席した会議で、「われわれは過去に武器をロシアから受け取ったり、ロシアに供与したりしたことはあるが、ウクライナの戦争が起きてからはない」と述べ、改めて否定したということです。

そして、アブドラヒアン外相は、今月20日にEU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表と電話会談した際に、ウクライナの軍事専門家と合同チームを立ち上げ、無人機の使用を検証する用意があると伝えたことを明らかにしました。

そのうえで、「もし、ロシアがイランの無人機を使ったことが証明されれば、われわれは無関心ではいられない」と述べたということです。

米ホワイトハウス「ロシアが核兵器使用する準備の兆候なし」

ロシアのショイグ国防相が、放射性物質をまき散らす爆弾、いわゆる「汚い爆弾」をウクライナが使用する可能性に一方的に懸念を表明したことについて、ホワイトハウスのジャンピエール報道官は24日、記者会見で「ロシアによる偽の主張は受け入れられず、さらなる事態の緊迫化につながる口実に使われることを懸念している」と述べてロシア側を批判しました。

また、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は記者団に対し、「現時点では、ロシアが核兵器や『汚い爆弾』を使用する準備をしているという兆候はない」としながらも、引き続き、事態を注視していくとしています。

また国務省のプライス報道官は記者会見で、「もし、プーチン大統領が『汚い爆弾』を使えば、彼の残虐性を示すことになる。ロシアには、『汚い爆弾』でも、核兵器でも、使用すれば、重大な結果をもたらすと明確に伝えてきた」と述べ、ロシア側がいわゆる「汚い爆弾」の使用に踏み切った場合、アメリカとして何らかの対抗措置をとる考えを示しました。

ロシア 軍の部隊に必要物資調達へ「調整会議」発足

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは、軍などの部隊に必要な物資を調達するための政府の調整会議を発足させました。

この調整会議は今月19日、プーチン大統領が一方的な併合に踏み切ったウクライナ東部と南部の4つの州を対象に戒厳令を導入した際に立ち上げを指示したもので、ミシュスチン首相をはじめ、国防相や経済担当の閣僚、それに、治安機関のトップやモスクワ市長などで構成されています。
ミシュスチン首相は会合で、「大統領が設定した目標を達成するために、必要な資源を軍に提供する。前線や後方部隊、訓練場まで、すべての兵士に短時間で提供しなければならない」と述べました。

調整会議は、地方の行政機関や当局に指示を出しながら、軍などの部隊が必要とする、武器や装備、通信機器から医薬品、食料まで幅広く調達する任務を負うほか、必要な労働力も提供していくということです。

ウクライナへの軍事侵攻を開始して8か月がすぎる中、ロシアは、さらなる長期戦を見据えた体制を築こうとしています。

NATO事務総長 「汚い爆弾」はロシアの虚偽の主張

NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は24日、ツイッターで、放射性物質をまき散らす爆弾、いわゆる「汚い爆弾」をめぐるロシアの主張について、アメリカやイギリスと協議したことを明らかにしました。

ロシアは、ウクライナが「汚い爆弾」を使用する可能性について一方的に懸念を表明していますが、ストルテンベルグ事務総長はこれを「虚偽の主張」だとしたうえで、「NATO加盟国は、この主張を受け入れない。ロシアは緊張を高める口実に使ってはならない。ウクライナに対するわれわれの支援にゆるぎはない」として、ロシアをけん制しました。

ロシア国防省 ウクライナの「汚い爆弾」 各国に懸念展開

ロシア国防省は24日、ロシア軍の制服組トップのゲラシモフ参謀総長が、アメリカ軍の制服組トップ、ミリー統合参謀本部議長と電話で会談したと発表し、ウクライナ側が放射性物質をまき散らす爆弾、いわゆる「汚い爆弾」を使用する可能性について、一方的に懸念を表明しました。

ゲラシモフ氏はイギリス軍のトップ、ラダキン参謀長とも電話で会談し、同様の主張を展開したとしています。

23日には、ロシアのショイグ国防相がフランス、トルコ、イギリスの国防相とそれぞれ電話で会談し、ウクライナ側が「汚い爆弾」を使用する可能性について批判していて、ラブロフ外相も24日、国連安全保障理事会でこの問題を取り上げる考えを示しました。

これに対してウクライナ側は、ロシア側の情報のねつ造だと強く反発しています。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は23日、「ロシア側が攻撃を受けたかのように情報をねつ造する、いわゆる偽旗攻撃で、『汚い爆弾』による攻撃を準備している可能性は低い。欧米側を威嚇し、ウクライナへの軍事支援を止めさせるねらいとみられる」とする見方を示しています。

ウクライナ 発電機や暖房設備の確保で日本の支援に期待

ウクライナ政府のチェルニショフ地域発展相がNHKの取材に応じ、ロシアによるミサイル攻撃などでエネルギー関連のインフラが大きな被害を受けているとして、冬の寒さに備えるため、発電機や暖房設備の確保で日本からの支援に期待を示しました。

チェルニショフ地域発展相は、ロシアがウクライナに軍事侵攻を始めてから8か月となる24日、ドイツのベルリンで開かれたウクライナの復興などをめぐる討論会に参加し、会場でNHKの取材に応じました。

チェルニショフ地域発展相は、「この2週間でエネルギー関連のインフラをねらった300を超えるミサイルやドローンの攻撃を受け、停電やエネルギー不足に直面している」と被害の大きさを訴えました。

そして、「やるべきことは多い。ミサイル防衛強化のための支援の取り付けと、発電機や暖房設備の確保だ」としたうえで、「日本はエネルギー技術の高さで知られている。われわれの大きな助けになるだろう」と述べ、エネルギー関連のインフラの復旧が課題となる中、発電機や暖房設備の確保で日本からの支援に期待を示しました。

ロシア軍のミサイル攻撃でウクライナ国内避難民 増加

ロシア軍が、今月中旬からウクライナ各地にミサイル攻撃などを繰り返す中、ウクライナ国内では、家を追われ、ほかの地域での避難生活を余儀なくされる国内避難民が一層増えています。

IOM=国際移住機関が、今月21日に発表した推計によりますと、こうした国内避難民は、今月18日の時点で330万人を超え、先月30日の時点に比べると、4万人以上増えているということです。

首都キーウにある避難民を支援する拠点では、多くの人が次々に訪れ、パンや缶詰、食用油などの物資を受け取っていました。

東部の町から避難しているという50歳の女性は、「まだ仕事が見つからないので、 こうした支援は生活の大きな支えとなっています」と話していました。

ただ支援拠点は、防空警報が鳴るごとに一時的に閉鎖されていて、51歳の避難民の男性は、「けさ早く支援物資を受け取りに来た時も途中で防空警報が鳴ったので引き返しましたが、今回も警報が鳴ったので、また受け取ることができませんでした」と話していました。

また、戦闘が終結する見通しが全く立たない中で、避難生活が長期に及ぶ人も増えています。

東部のマリウポリで育ったビクトリヤ・ベリグラさん(39)は、キーウ市内の集合住宅で、ことし5月から1人で避難生活を送っています。

ベリグラさんは、ウクライナ軍の軍医を務める45歳の夫が、ことし3月、ロシア軍に捕まって捕虜となり、連絡が取れないままとなっています。

急な避難だったため、最低限の荷物しか持ち出せず、夫とのつながりを感じられるものは、スマホに保存した夫の画像しかないといいます。

ベリグラさんは、趣味の刺しゅうに打ち込むことで気を紛らわせているということで、故郷のことを思いながらアゾフ海の海辺の風景を縫い付けていました。

ベリグラさんは、「夫の解放とともに、マリウポリの街も解放されるのを待っています」と話し、ロシアから夫と故郷を取り戻すまで戦い続ける決意を新たにしていました。

ウクライナ政治評論家 “冬は南部集中で戦果積み重ねる”

ウクライナの政治評論家で現在は、ウクライナ軍の部隊に所属し、戦闘に参加しているというタラス・ベレゾベツ氏がNHKのオンライン取材に答え、南部の戦況などについて明らかにしました。

この中でベレゾベツ氏は、ウクライナ軍が南部ヘルソン州で反撃を強めている背景について、「冬の間は、大規模な作戦を行うのが難しいからだ」と述べ、機動力が低下する冬の間は、広範囲に部隊を展開するのではなく、比較的暖かい南部に集中することで戦果を積み重ねていくねらいだと指摘しました。

そのうえで、「この冬の期間を利用することで、ことし2月以降に占領された地域の半分以上は解放したい」と述べるなど、冬の戦いに臨むウクライナ軍の目標の一部について説明しました。

一方、ベレゾベツ氏は、ロシア軍は空てい部隊や新たに動員された予備役の兵士たちをドニプロ川の右岸に、戦車や弾薬とともに投入していると明らかにしました。

そのうえで、「今後、数週間は彼らとの戦いが中心になる。ただ、ロシア軍は、ドニプロ川の右岸に追い詰められ、補給もなく、弾薬不足に陥るだろう」と述べ、補給路と退路を断つことでロシア軍を追い込み、ヘルソンでの戦いを有利に進めたいと意気込みを語りました。

そしてベレゾベツ氏は、「NATO諸国からの軍事支援があるからこそ、ロシアと戦うことができている。勝利を目指したい」と述べ、ロシア軍に勝利するためには、欧米側が供与する兵器が欠かせないと強調しました。