
“意図しない妊娠したかも” 20代以下で5割超 性に関する調査
妊娠や避妊など性に関する意識や経験を、NHKが研究グループと共同で調査したところ、「意図しない妊娠をしたかもしれない」と不安になった経験がある人が20代以下で5割を超え、研究者は性に関する知識や自己決定する力の不足が背景にあるとしています。
調査は、NHKが性と生殖の現状や課題を研究しているグループと、ことし8月にインターネット上で行ったもので、18歳から74歳の男女2836人から回答を得ました。
このうち、▼避妊をするかどうか誰が決めているか性行為をしたことがある人に聞いたところ、
▽「自分で決めている」が37%、
▽「パートナーと相談して決めている」が35%、
▽「パートナーが決めている」が11%、
▽「その場の流れで決まる」が15%でした。
▼またパートナーに性行為をしたくない時に断れるか聞いたところ「いつも言える」と答えたのは、
▽男性が47%、
▽女性が61%でした。
▼自身やパートナーが「意図しない妊娠をしたかもしれない」と不安になったことがあると回答した割合は38%で性別・年代別では、▽20代以下の女性で56%と最も高く、次いで
▽40代の女性が47%、
▽20代以下の男性が46%などとなりました。
一方、▼人工妊娠中絶や避妊について、十分な知識を得る機会が「あまりない」「全くない」と答えた人は全体の51%と半数を占め、
▼「避妊について正しい知識を学校でもっと教えてほしかった」と答えた人は、
▽全体では52%、
▽20代以下では61%となりました。
調査した研究グループ「SRHR Japan」の代表で産婦人科医の池田裕美枝さんは「知識を得る機会がないだけでなく、男性も女性も体について納得がいく選択ができていない現状が浮き彫りになった。性や体に関する知識や自己決定する力をいかに得られるようにするか、社会として課題となっている」と指摘しています。
「ユースクリニック」に若い世代から相談相次ぐ

去年10月に大阪市の繁華街に開設された施設では、助産師が中高生や20代からの相談にLINEや対面などで応じています。
この1年間に寄せられた相談は関西を中心に全国から500件を超え、
▼「妊娠したかもしれない」とか「避妊に失敗した」といった妊娠への不安に関する相談が28%、
▼避妊や生理痛の緩和に使われる「低用量ピル」に関する相談が14%、このほか
▼生理痛や生理不順緊急避妊薬に関する相談が多くなっています。
▽中高生の中には「生理が4日遅れている」とか「性器を触られた」といった理由で妊娠したのではないかと悩むケースもあり、知識不足が背景にある相談が多いといいます。
一方、▽20代からの相談では、「避妊を頼めない」とか「性行為を断れなかった」、「妊娠したが相手と連絡が取れなくなった」などと関係性に課題があるケースが目立つということです。
「スマルナステーション」の相談員で助産師の神保ゆうこさんは「妊娠や生理、性感染症などに関する知識不足に加え、断ることや嫌と言うことを教わっておらず、そもそも性のことを人に相談していいと思っていない。親にも言えず相談場所もなく、ここにたどりつく人も多い」と話しています。
秋田県 中学校で学ぶ機会設け中絶減少

国の「学習指導要領」では、個々の生徒の発達状況や保護者の価値観の違いなどを理由に、中学校では性行為や避妊、人工妊娠中絶について、原則、取り扱わないとしたいわゆる「歯止め規定」があります。
このため、教員が授業で教えるのは難しい一方、秋田県ではかつて10代の中絶の実施率が全国平均を大幅に上回った危機感から、地元の医師や助産師など外部の講師の協力を得て学ぶ機会を設けてきました。
先月、潟上市の中学校で行われた講義では、産婦人科の医師が3年生およそ70人に対し、県内で実際にあった10代の妊娠事例をもとに、▽妊娠した時の体の変化、▽中絶する場合の心身の負担やいつまでに判断が必要かなどを教えていました。
低用量ピルやコンドームといった避妊方法のほか、失敗した場合には緊急避妊薬があることを伝えつつ、いずれも100%妊娠を防げるものではないと説明しました。
男子生徒は「友達や先生に性のことは聞きづらいので多くの知識をもらえてよかったです」と話していたほか、女子生徒は「知ることで注意しないといけないと思う点が増えました」と話していました。
保健体育の高砂明教諭は「教員より突っ込んだ内容が多くためになると思います。知識がないと世の中に氾濫している間違った情報をうのみにする場合もあるので、正しい知識を身につけ正しい判断や行動につなげていってほしい」と話していました。
県教育委員会によりますと、生徒へのアンケートでは「中学生のうちは性的接触をしない方がよい」という回答が、受講後に増える傾向にあるといい、保護者からも理解が得られているということです。
取り組みを続けてきた中で、秋田県の15歳から19歳の人口1000人当たりの人工妊娠中絶の実施率は、▼21年前の18.2人から▼おととしには2.4人にまで減少し、全国平均より低い数値を保っています。
高校で独自の取り組み
東京・世田谷区にある大東学園高校では、「性教育」を1年生の必修科目にしていて毎週1時間学んでいます。
性行為や避妊、ジェンダーや人権、性の多様性、それに性暴力の防止などを総合的に学ぶ、「包括的性教育」と呼ばれる内容で、多様な考え方を知り互いを尊重することを重視しています。
今月の授業では、性や体に関する日本とアメリカの子ども向けの教材や映像を比較しながら、「自分の体について自分で決める」という体の自己決定権について意見を交わしていました。
生徒からは「体の権利のことは考えたことがなかった」とか、「自分が嫌なことは伝えていいんだと思った」といった声のほか、「人によって価値観や考え方が違うので、同意が必要なんだと分かった」という声も聞かれました。
教科主任の牛坂安未教諭は「1年間必修で学ぶことで体や自分自身、他者とのつきあい方について、バランスよく総合的に考えられるようになります。人を傷つけてからでは遅いし、避妊について知らないまま妊娠しては困る。大人になる前に学んだうえで生きていってほしいです」と話していました。
この高校では、教科書に載っている内容だけでは、生徒たちが性や体の悩みにみずから対応するには不十分だと考え、教員たちが独自に教材を作成して授業を続けてきました。
当初から関わり、今も非常勤講師として教える水野哲夫さんは「前提として『あなたの体はあなたのもので、あなただけが決められる』という体の権利という概念を共有しています。性は人権と切り離せない大事なことだと知ってほしいと思います」と話していました。