スポーツクライミング複合ワールドカップ 女子は19歳森が優勝

スポーツクライミングの2種目による複合の初のワールドカップは、最終日の22日、盛岡市で女子の決勝が行われ、19歳の森秋彩選手がボルダリングで4つの課題をすべて登り切って2位につけると、得意のリードで最も高くまで登って逆転し優勝を果たしました。

2年後のパリオリンピックと同じ形式のボルダリングとリードの2種目による複合で初めて実施されたワールドカップの盛岡大会は、各種目100点ずつが与えられ、合計点数で順位が決まる方式で行われました。

女子の決勝には8人のうち日本選手が4人進出し、このうち予選と準決勝ともにトップだった森選手は、ボルダリングで持ち味の指の強さを生かし、4つの課題をすべて登り切って2位につけました。

そして、予選と準決勝ともにただ1人最後まで登り切った得意のリードでは、柔軟性の高さとホールドをつかむ力の強さを発揮して、壁の上部まで到達しました。最後まで登り切る「完登」はならなかったものの、リードではトップの92.1点を獲得し、合計190.9点で逆転優勝を果たしました。

2位はアメリカのナタリア・グロスマン選手、3位は韓国のソ・チェヒョン選手でした。

東京オリンピックの銀メダリスト、野中生萌選手は、得意のボルダリングで2つの課題の完登にとどまり、リードでも得点を伸ばせず、5位でした。

また、19歳の谷井菜月選手が6位、地元、盛岡市出身の20歳、伊藤ふたば選手は得意のボルダリングで課題を1つしか完登できずに出遅れ、7位でした。

パリオリンピックと同じ形式の2種目で行われた初めての複合のワールドカップで、日本勢は表彰台を独占した男子に続き、女子でも優勝を果たし、2年後へ向けて弾みとなる結果になりました。

森「順位が一番上だったのはうれしい」

優勝した森秋彩選手は「リードで完登して優勝するという目標は達成できなかったが、順位が一番上だったのはうれしい。きょう出た教訓を生かしていきたい」と話していました。

4つの課題をすべて登り切ったボルダリングについては「失敗を恐れずに攻めたトライができた。すべて完登できたのはよかったし、いい流れができた」と冷静に振り返っていました。

一方で完登を逃したリードについては「いつも壁との戦いだと思っているので、それに負けたのは悔しい。今でも登り直したいが、完登して満足するより、悔しい思いができた方が収穫があると思う」とさらなる成長を誓っていました。

効率的な練習と精神力の強さ

スポーツクライミング、複合のワールドカップで優勝した19歳の大学生、森秋彩選手はことし、リードのワールドカップでの2連勝に続いて、これで出場したワールドカップで、3連勝と勢いが止まりません。

その背景には、学業と両立するための効率的な練習と、自らを追い込み続ける精神力の強さがありました。

森選手は1メートル54センチと小柄な体格で、柔軟性の高さと指の強さを生かした登りで、持久力が要求されるリード種目を得意としています。

ことし3年ぶりに出場したリードのワールドカップでは、東京オリンピック金メダリストで「絶対女王」とも呼ばれるスロベニアのヤンヤ・ガンブレット選手を破って、ワールドカップ初優勝を果たすと、続く大会でも優勝し、一気に注目を集めました。

この春大学に入学した森選手は、学業と両立させながら練習に取り組んでいて、授業が多く入っているときは練習時間は2時間程度と制限されています。

それでも、「練習は短時間でも集中してやれている。学業とメリハリをつけてやれている」と効率的な練習を意識してきました。

さらに、「もともと自分を追い込むのが好き」という性格もあって難しい課題を繰り返して負荷を高めるなど、疲れた状態から力を絞り出すためのトレーニングに励み、「精神面での強さは自信になってきた」と好成績の背景を分析しています。

今回、初めて挑んだ2種目での複合の大会では得意のリードで予選と準決勝をただ1人最後まで登り切りトップに立ち続けました。

決勝でも、ボルダリングの4つのすべての課題を登り切って勢いに乗ると、得意のリードでもトップ近くまで登って高得点を獲得し、2位に20点近い差をつけて2種目の複合のワールドカップで最初の頂点に立ちました。

東京オリンピックでは代表選考基準をめぐる日本と国際競技団体との解釈の違いによって、選考レースが途中で終わり代表入りを逃した森選手。

2年後のパリオリンピックへ向けては、「クライミングを楽しみながら、その中の1つのイベントとして捉えている。オリンピックだけにフォーカスはせず、努力をしていきたい」とあくまで冷静に向き合うつもりです。

「今は期待を楽しめている。来年は大学に支障がない程度に大会に出て、パリに着実に近づいていければ」と話す19歳はさらなる高みを目指してどのようにみずからの登りを磨いていくのか注目です。

記者がみたパリ五輪への「カギ」とは

パリオリンピックと同じ形式の「ボルダリング」と「リード」の2種目による複合で、初めて行われたワールドカップ。

出場した選手からは、2種目両方をこなす「総合力」と「体力」がポイントになるという声があがりました。

パリ五輪への試金石の大会

パリオリンピックへ向けた試金石と位置づけられた今回のワールドカップで、日本勢は男子のエース、楢崎智亜選手が優勝するなど表彰台を独占し、女子も19歳の森秋彩選手が優勝を果たし2年後に向けて弾みをつけました。

初めての形式でのワールドカップを終えた選手たちは来年から始まるオリンピック出場枠争いを控え、主に2つのポイントを挙げていました。

問われる総合力

1つはボルダリングとリードという異なる特徴のある種目をどちらも高いレベルでこなす、「総合力」です。

今大会では、2種目の得点を足し合わせた合計得点で順位が決められました。

選手からは、「新たな複合は設定された『課題』や『ルート』によって、戦略が左右される」という声があがりました。

例えば、ボルダリングが誰も攻略できない難しい課題が多かった場合は、点差がつきにくく、リードの得点がカギを握ることになり、リードの設定が上部に行きやすいルートの場合は、ボルダリングで取りこぼすと、その差を埋めることが難しくなるということです。

そのため、どちらかの種目に特化した選手では得意種目で差をつけられなかった場合に、巻き返すことが難しくなります。

リードを得意とする本間大晴選手は今大会6位に終わり、「どちらかの種目に偏ると通用しないと痛感した」と厳しい表情で語りました。

一方で優勝した楢崎選手は、決勝では得意のボルダリングで2位につけ、リードでも2位と、総合力の高さが際立ち、「2種目どちらも世界のトップクラスでないと勝てない」と話していました。

2年後に向けて、選手たちは苦手種目の底上げをいかにできるかが問われることになります。

2種目をこなす体力

さらにもう1つ、選手たちが課題として挙げていたのが2種目をこなす「体力」です。

森秋彩選手は「体力や疲れが不安だった」と明かし、男子で2位に入り、体力の回復にも自信があるという緒方良行選手も「スケジュールがタフで、戦いきれるスタミナをつけるトレーニングをしていきたい」と話していました。

2種目の得点配分は

このほか、現時点では固まっていない得点の配分方法なども今後の戦略に影響を与えます。

今回の大会では、ボルダリングでトライに失敗した際の減点が0.1点と少なかったため得点差がつきにくく、後半のリードで一気に点差を挽回できてしまうという意見も聞かれました。

日本勢はボルダリングを得意とする選手が多く、対応が迫られそうです。

パリオリンピックの出場枠をめぐる争いは、来年8月にスイスで行われる世界選手権からスタートします。

複合の出場枠は男女ともに最大2人、激しい代表争いの行方は、新たな“2種目の複合”の形式にいかに対応できるかがカギを握りそうです。