インフルエンザ患者数 今は低い水準 海外で流行も 今後注意を

新型コロナウイルスとの同時流行が懸念されているインフルエンザについて、今月16日までの1週間に報告された患者の数は全国で97人でした。新型コロナが流行する前の同じ時期と比べ、低い水準となっていますが、専門家は海外では流行したところもあるとして注意を呼びかけています。

厚生労働省によりますと、今月16日までの1週間に全国およそ5000か所の医療機関から報告があったインフルエンザの患者数は前の週から29人増えて97人でした。

インフルエンザは、1医療機関当たりの1週間の患者数が全国で1人を超えると「全国的な流行期」入りとされていますが、今の時点では0.02人と大きく下回っています。患者が報告された地域は前の週の19の都府県から3増え22の都道府県となりました。

コロナ前は同じ時期に例年、数百人から1000人程度の患者が報告されていましたが、それと比べると低い水準となっています。ただ、コロナが流行していた去年やおととしと比べると10倍ほど多くなっています。

感染症に詳しい東邦大学の舘田一博教授は「オーストラリアでは例年より早くインフルエンザの流行が来たほか、アジアやヨーロッパでも流行が見られた。こうした国や地域の中にはマスクの着用など基本的な感染対策を止めたところもあるので、対策を維持したうえで、新型コロナとの同時流行が起こるのかどうか注意して見ていく必要がある」と話しています。

新型コロナとの同時感染 重症化や死亡リスク高まるとの報告

インフルエンザと新型コロナウイルスに同時に感染すると、重症化や死亡リスクが高まるとする報告もあります。

イギリスの医学雑誌「ランセット」にことし3月に発表された論文によりますと、イギリスのエディンバラ大学などのグループが、去年12月までに新型コロナに感染したおよそ7000人のうちインフルエンザにも同時に感染していた200人余りの症状を調べたところ、新型コロナにのみ感染していた人と比べて、重症化して人工呼吸器による治療を受けるリスクは4.14倍、死亡するリスクは2.35倍高かったということです。

また、長崎大学のグループは去年、ハムスターに新型コロナとインフルエンザを同時に感染させると、それぞれを単独で感染させた場合よりも、肺炎が重症化し、回復も遅れたとする実験結果をまとめています。

東邦大学の舘田一博教授は「コロナとインフルエンザそれぞれのウイルスの感染によって、肺の障害や全身状態悪化が進むので、感染が重なれば、総花的に症状が悪化してもおかしくない。また、以前は、1つのウイルスに感染するともう1つのウイルスに感染しにくくなる、『ウイルス干渉』という現象が起き、インフルエンザとコロナの同時感染は起きないのではと指摘されたこともあったが、今のところ、それを裏付けるようなデータは出ていない」と話しています。

専門家「同時検査キットも購入できるようにすべき」

現在、新型コロナウイルスの抗原検査キットは薬局などで販売され、自分で検査ができるようになっていますが、インフルエンザの検査キットは一般には販売されていないため、専門家は供給体制が整えば、薬局などで購入できるようにすべきだと指摘しています。

厚生労働省は、コロナの抗原検査キットについて体調が気になる場合に自宅などでみずから検査してもらうことで、医療機関の受診につなげようと、去年9月から、薬局での販売を特例的に認め、ことし8月には、インターネットでの販売も解禁しました。

そして、政府は今月13日、コロナとインフルエンザの同時流行が起きた際に医療のひっ迫を避けるための新たな対応策として、中学生から65歳未満の人が発熱などの症状が出た場合は、新型コロナの抗原検査キットを活用して、陽性の場合は自宅療養を、陰性でもインフルエンザなどの可能性が疑われ、受診を希望する場合はオンライン診療やかかりつけ医などの受診を検討するよう呼びかけています。

さらに、コロナとインフルエンザの感染の有無を同時に調べられる抗原検査キットを、およそ3800万回分確保し、診療体制を強化すると公表しています。

ただ、この同時検査用のキットを含めインフルエンザの検査キットはコロナ用のキットのように一般への販売は認められておらず、感染の有無を調べるためには医療機関での検査が必要です。

これについて、東邦大学の舘田一博教授は「感度がいい新型コロナの検査キットがどんどん出ていて、多くの人が自己検査して結果を判定することに慣れてきていて、コロナとインフルエンザの同時検査キットも使えるはずだが、医療機関に向けても供給が追いついていない現状もある。医療体制の負担軽減にもつながるので、同時検査のキットも生産体制が整えば、同様に購入できるように検討すべきだ」と話していました。