ウクライナ軍 南部ヘルソン州で反転攻勢 ロシア軍 撤退検討か

ウクライナ南部ヘルソン州では、支配地域の奪還に向けてウクライナ軍が反転攻勢を強め、親ロシア派は住民の強制的な移住を進めています。イギリス国防省などは、ロシア軍が中心都市ヘルソンなどから、部隊の撤退を検討しているという見方を示しています。

ウクライナ軍は、ロシアが一方的に併合したとする南部ヘルソン州で反転攻勢を強め、今後、ロシア側に占領された中心都市ヘルソンに向けて部隊を進軍させるとみられています。

これに対し、ヘルソン州の親ロシア派は、住民をロシア側などに強制的に移住させていて、さらに、占領政策を行う統治機構も、すでに安全な場所に移したと明らかにするなど、退避を余儀なくされています。

戦況を分析するイギリス国防省は20日、ウクライナ侵攻のロシア軍のスロビキン総司令官が18日に、ヘルソン州の戦況について「非常に困難な状況にある」と述べたことについて「総司令官が『特別軍事作戦』に関して否定的な話を強調するのは非常に異例なことだ」と指摘しました。

そのうえで「ロシア軍がドニプロ川の西側から大規模な部隊の撤退を真剣に検討している可能性がある」として、中心都市ヘルソンなどがあるドニプロ川の西側から、ロシア軍が部隊の撤退を検討しているという見方を示しています。

ただ、ドニプロ川の川幅はおよそ1000メートルで、ウクライナ軍の攻撃によって橋が損傷しているため、ロシア軍の撤退は「はしけ」など船の移送に頼らざるをえないと指摘しています。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」も19日「総司令官などの発言は、ロシア軍がヘルソンから撤退することや、領土を大幅に失うことを正当化するために情報を打ち出していることを示している」と指摘し、東部ハルキウ州でロシア軍が広範囲の領土を失い、国内からも批判が高まったことを踏まえ、少しでも影響を抑えようとしているという見方を示しました。

また、プーチン政権が一方的に併合した4つの州に戒厳令を導入し、ロシア国内の自治体の権限も強化したことに対し「将来の動員や国内の規制の枠組みを作り出し、ロシア軍がすでに行っている活動や、今後、必要な活動を主に法的に正当化するものだ」としたうえで、戒厳令に準じた措置がロシア各地に拡大される余地があると指摘しています。