宇宙天気予報 日常が変わる!?10月20日 15時56分

まず、大学の入試問題を見てみましょう。

問題
太陽と地球に関する次の文章を読み、下の問いに答えよ。

大規模なフレアが発生すると、地球では（　　）が起こったり、日本でもオーロラが観測されることがある。

（　　）に入れる語句を答えなさい。

（大学入試センター試験 2017年 地学 改題）

正解は「磁気嵐」です。
フレアは英語で炎が燃え上がること。太陽の表面に起こる爆発現象を「太陽フレア」と言います。
この問題のように、大規模な「太陽フレア」が発生して磁気嵐が起きると、磁場の乱れで通信障害や停電が起きて、生活に大きな影響が出てしまいます。
そうした影響が出るサインを事前に知ろうという「宇宙天気予報」という取り組みが注目されているんです。

では、「宇宙天気予報」とは、どんなものなのでしょうか。
日本天文学会の元会長、柴田一成さんにうかがいました。

同志社大学 特別客員教授 柴田一成さん
「雨とか台風の予報を天気予報と言いますけど、実は宇宙の嵐の予報のことを『宇宙天気予報』と呼んでいるんです」

宇宙の嵐は、どうして起きるのか。

その原因が「太陽フレア」です。
「太陽フレア」が発生すると高エネルギーの粒子や電気を帯びたガスなどが噴き出します。
それは、地球に到達することがありますが、地球はふだんは周りを取り巻く磁場に守られています。

しかし時折、粒子が北極など極地に入り込み、オーロラが見られることがあります。
フレアの規模が大きいと、日本など比較的緯度が低い地域でもオーロラが現れます。
このとき、「磁気嵐」という磁場の乱れが起きています。

柴田さん
「磁気嵐が起きると、電線に電気が流れるんですよ、突然。コンセントをたどってコンピューターが壊れたりテレビが壊れたり、変電所の変圧器っていうのがね、焼け焦げてしまうことがあるんですね。磁気嵐は地球全体で起きますからね、あらゆるところで被害が起きるわけですね」

「磁気嵐」では、1989年にカナダで約10時間に及ぶ大規模な停電が発生して600万人に影響が出たほか、2003年にはJAXAの人工衛星の一部の機能に障害が出る事故が起きています。
総務省がことし6月にまとめた被害想定では、最悪の場合、断続的に2週間、携帯電話の利用やテレビ放送の視聴ができなくなるとされています。
また、GPSの精度に誤差が出て、カーナビや自動運転が正しく機能しなくなるおそれもあります。

こうした生活への影響を考えると、大規模な「太陽フレア」が発生して「磁気嵐」が起きるタイミングを知りたくなりませんか？
柴田さんに聞いてみました。

柴田さん
「大体は予測できます。地震に比べれば、はるかに太陽フレアとか磁気嵐の予測はできるんですね」

フレアが活発になる時期を予測するカギは、太陽に現れる黒点です。
黒点の数が増えると、フレアが発生しやすくなるからです。

黒点が現れる数は、11年周期で増減を繰り返していることがわかっています。
次のピークは、3年後の2025年だと予想されています。

その時期をさらに短期間に絞って予測するのが「宇宙天気予報」です。
「太陽フレア」で放出された物質が地球に届くまでには時間差があります。
そこで、太陽を観測し、地球にどのような影響が出るかを予測しているのです。

「宇宙天気予報」を日本で行っている情報通信研究機構は、24時間体制で太陽の黒点やフレアなどを監視しています。
観測データに基づいて、太陽フレアなどの今後の状況を予測して、ホームページで天気予報のように発表。

日報、週報、臨時情報などの形にして、希望者にはメールで配信しています。
専門的な学術用語が多く、一般にはわかりにくいことが課題ですが、今後、実際にどのような影響がもたらされるのか、わかりやすく発信しようとしています。

柴田さん
「おそらく天気予報の時間に『あすは磁気嵐が起きそうですから注意しましょう』とか、『携帯がつながらなくなるかもしれないから準備してください』とか、そういう予報がされる時代になると思います」

「宇宙天気予報」を見ることが日常になるというんですね。
柴田さんは、「宇宙天気予報」のことをもっと知ってほしいと、以前の勤め先だった京都の花山天文台で、ことし春からオンライン講座を始めました。
受講者には気象予報士や通信の専門家もいるということで、宇宙天気予報士制度や宇宙天気検定などもつくっていきたいと話していました。

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