五輪組織委元理事 4回目逮捕 広告会社側などから受託収賄疑い

東京オリンピック・パラリンピックをめぐる汚職事件で、東京地検特捜部は組織委員会の元理事が、スポンサーの契約業務を請け負った広告大手ADKホールディングス側と、大会マスコットのぬいぐるみを販売した都内の会社に便宜を図り、総額5400万円の賄賂を受け取ったなどとして受託収賄の疑いで再逮捕しました。
また、贈賄の疑いでADKホールディングスの社長ら3人を新たに逮捕しました。
一連の事件で元理事が逮捕されるのは、これで4回目で、賄賂の総額はおよそ1億9600万円に上るとみられます。

受託収賄の疑いで再逮捕されたのは、大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)です。

また贈賄の疑いで、
▽東京 港区に本社がある広告大手ADKホールディングスの社長、植野伸一容疑者(68)と、
▽元事業統括部長の久松茂治容疑者(63)、
▽元事業統括部長補佐の多田俊明容疑者(60)が新たに逮捕されました。

東京地検特捜部によりますと、高橋元理事は植野社長らから依頼を受け、ADKのグループ会社がスポンサーの契約業務を請け負えるよう便宜を図った謝礼などとして、2017年11月からことし1月までの間に総額4700万円の賄賂を受け取った疑いが持たれています。
また、高橋元理事は、公式ライセンス商品の契約をめぐって大会マスコットのぬいぐるみを製造・販売していた東京 千代田区にある「サン・アロー」に便宜を図り、2018年10月から去年4月までの間に総額700万円の賄賂を受け取った疑いも持たれています。
関係者によりますと、賄賂とされる資金のうちADK側からのおよそ2000万円と、サン・アローからのおよそ700万円は、元理事の高校の後輩が代表を務める東京 千代田区のコンサルタント会社に送金された疑いがあるということです。

特捜部は、逮捕された4人の認否をいずれも明らかにしていませんが、関係者によりますと、高橋元理事は容疑をいずれも否認しているということです。

一連の事件で高橋元理事が逮捕されるのは、紳士服大手のAOKIホールディングス、出版大手のKADOKAWA、それに広告会社「大広」をめぐる事件に続いて4回目で、受け取った賄賂の総額はおよそ1億9600万円に上るとみられます。

特捜部は、元理事周辺の資金の流れについてさらに実態解明を進めるものとみられます。

ADKホールディングス「深くお詫び申し上げます」

ADKホールディングスは、植野伸一社長などが逮捕されたことをうけて、「このような事態に至りましたことは誠に遺憾であり、関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をお掛けしておりますことを、深くお詫び申し上げます。引き続き、当社は事件の解決に向けて、捜査に全面的に協力してまいります」などとするコメントを出しました。

「ADKホールディングス」とは

東京 港区に本社を置く「ADKホールディングス」は、電通と博報堂に次ぐ、業界3位の大手広告会社です。

「旭通信社」と「第一企画」が合併して発足した人気アニメシリーズの制作などを手がける「アサツー ディ・ケイ」が前身で、2017年の売上げは3126億円に上っています。

2018年にアメリカの投資ファンドの完全子会社となり、翌年、「ADKホールディングス」を持ち株会社とする体制に移行しました。

関係者によりますと、「ADKホールディングス」のグループ会社で植野社長が代表を務めていたADKマーケティング・ソリューションズは、東京大会のスポンサーの募集で、販売協力代理店として大手広告会社 電通から契約業務の一部を請け負ったほか、高橋元理事が経営するコンサルタント会社と取り引きがあったということです。

「サン・アロー」とは

民間の信用調査会社によりますと、「サン・アロー」は、1996年に設立されたぬいぐるみの製造・販売会社で、ことし3月期の売り上げは21億円余りです。

会社のホームページによりますと、
▼「スタジオジブリ」のキャラクターのぬいぐるみや、
▼クマのぬいぐるみ「テディベア」などの製造や販売を手がけ、静岡県と栃木県で「テディベアミュージアム」も運営しています。

東京大会では、マスコットの「ミライトワ」と「ソメイティ」のぬいぐるみを公式ライセンス商品として製造・販売したほか、1998年の長野オリンピックではマスコット「スノーレッツ」のぬいぐるみも販売しました。

「公式ライセンス商品」とは

「公式ライセンス商品」は、オリンピックのエンブレムやマスコットなどが付いた雑貨や土産物などの商品です。

組織委員会とライセンス契約を結んだ企業だけに製造・販売が許可され、東京大会では127社がおよそ8000種類の商品を販売しました。

ライセンス契約を結んだ企業は、マスコットなどの権利の使用料を組織委員会に支払う仕組みで、東京大会ではスポンサー企業からの協賛金とは別に、144億円の収入があり、大会の運営費などに充てられました。

ライセンス契約を希望する企業は、大手広告会社 電通を通じて申し込みを行い、IOC=国際オリンピック委員会などの承認を得たうえで、組織委員会と契約を結びます。

NHKが入手したライセンス契約に関する文書によりますと、ライセンス商品の製品化にあたっては、大きさや色合い、全体のデザインなどに細かな基準があり、企業側が商品などのサンプルを組織委員会に提出するなどして承認を得る必要がありました。

NHKの取材に対し、複数のメーカーの担当者は、組織委員会の審査はチェックが細かく、申請から商品化までには時間がかかるケースもあったと証言しています。

公式ライセンス商品販売の別の会社は

組織委員会と契約を結び、公式ライセンス商品を販売していた別の会社の幹部がNHKの取材に応じ、組織委員会との交渉について、「契約を結べるかどうか、明確な基準はなく、『これまでのライセンスビジネスの実績などを加味して総合的に判断します』と言われていたので、不安があった。元理事を通じたルートがあるという発想もなかったので、別世界のように感じている」と述べました。

そのうえで、「汚職事件で騒がれ、東京大会がダークなイメージで語り継がれていくことは、大変残念で悔しい思いです。競争は公平にすべきで、ブラックボックスになっていたところはもっと開示して、二度とこのようなことが起こらないようにしてほしい」と話していました。

賄賂の一部 “受け皿”疑いの会社へ

関係者によりますと、高橋元理事の4回目の逮捕容疑で、賄賂とされる合わせて5400万円のうち、2700万円は、元理事の高校の後輩が代表を務める東京 千代田区のコンサルタント会社に送金され、受け皿となった疑いがあるということです。

この会社は、経営コンサルタントやゴルフ会員権の売買などを目的に1986年に設立されましたが、登記上の本店があるビルからはすでに退去していて、現在は事実上の休眠状態だったとみられます。

識者「組織委関係者のほとんど 元理事に任せっぱなしだったか」

組織委員会の元理事が受託収賄の疑いで4度逮捕されたことについて、会計監査や組織のガバナンスに詳しい青山学院大学の八田進二名誉教授は、「組織のガバナンスは権限と責任を明確に分け、誰が監視するのかが明らかになっていることが大前提だ。しかし、組織委員会の関係者のほとんどがスポンサーに関することを元理事に任せっぱなしにしていたのではないか」と指摘しました。

そのうえで、「周りからみれば、スポンサーなどがどのような手続きを踏み、どう決まったのか、透明性がはかられていない。無責任体制で組織が構築されていたと言わざるをえない。組織委員会はすでに解散しているが、オリンピックという国家的な事業で起きた問題であり、どこに欠陥があり、何を見落としていたのか、真摯(しんし)に事案を究明することが必要だ」と述べました。