電動キックボード 免許は必要?ヘルメットは?

電動キックボード 免許は必要?ヘルメットは?
電動キックボード。皆さんは乗ったことありますか?
キックボードに乗っていたら、危険な目に遭ってしまう人も。
そしてルールも複雑です。
安全に乗るためにはどうすればいいのでしょうか?

(大阪放送局 福田和郎 千田慎太郎 ネットワーク報道部 松原圭佑)

電動キックボード急増中

電動キックボードは2つの車輪とハンドルが付いたボードの上に乗り、アクセルとブレーキ操作で走行する乗り物です。

手軽な移動手段として、東京や大阪など都市部を中心に広がりを見せています。
利用したことがあるかどうか大阪の街で聞いてみると…
30代会社員男性
「きょう初めて乗りました。すごい便利で、車で走っていたら気づかない店も見つかるのでいいと思います」
18歳女子学生
「大阪はいっぱい走ってますね。スピードものってるし、いいかなと思います」

そもそも電動キックボードって何?

電動キックボードは道路交通法上、車両にあたります。
そのため、公道を走る際には運転免許が必要です。

免許は、キックボードの性能によって異なっていて、▽最高時速が30キロ以下のものは原付バイク、▽30キロを超えるものは自動二輪車に該当します。
車両扱いなのでナンバープレートやウインカー、ミラーなどを設置する必要があります。

走行する際は左側通行で、歩道の走行は禁止されています。
また、ヘルメットも着用する必要があります。
一方、最近、よく街なかで見かけるレンタルの電動キックボートは扱いが異なります。
国の認可を受けた事業者が去年4月以降、実証実験として街なかで貸し出しを行っていて▽最高速度は15キロ以下となっています。

小型特殊自動車扱いで、普通自動車や自動二輪の免許で運転できます。

自転車レーンなどを走ることができ、ヘルメットの着用は任意となっています。

公共交通機関を補う日常の足や、地域を観光するための新たな移動手段として、今では全国19都府県に広がっています。

電動キックボードで事故に遭った男性は?

一方で、事故も増えています。

埼玉県の30代の男性は、ふだんから走行中の映像を撮影していました。
電動キックボードを購入して乗り始めておよそ3か月。
今年4月、軽ワゴン車と衝突する事故に遭いました。
男性が交差点を直進しようとしたところ、対向車線から軽ワゴン車が右折。
ブレーキをかけましたが避けられずに転倒したといいます。
キックボードで転倒した男性
「ぶつかった衝撃で体も回転して転倒したんですけど、どのように転んだかも覚えていない状態で。もう少し先を僕が走っていたら正面から突っ込まれていて、車の下敷きになっていた可能性もあったので、怖い事故だったと思います」
事故を経験し、男性が感じているのは“乗るのは簡単だけどうまく運転するのは簡単ではない”ということ。

電動キックボードは路面の影響を受けやすく、安定した姿勢で乗ったりブレーキをスムーズにかけたりするのに“慣れ”が必要だといいます。

便利で楽しい乗り物だからこそ、安全に乗る方法を共有することが必要ではないかと指摘しています。
キックボードで転倒した男性
「運転経験を積んだいま、改めて振り返ってみると、ブレーキをかけるのが少し遅れたのかなと思います。軽いけがで済んだが、初心者だと反応できないおそれもある。軽い気持ちで乗っている人も少なくないと思う。正しい乗り方をもっと知ってもらう事が必要だが、現状そういう機会がない」
電動キックボードの事故の件数は、警察庁によるとおととしは4件だったのが、去年は27件へと増加。今年も3月までの3か月で9件起きています。

先月は東京で初めての死亡事故も起きています。

警察によると、マンションの駐車場で電動キックボードに乗っていた50代の男性が車止めに衝突。転倒して、頭を強く打ったということです。

実証実験の電動キックボードだったため、ヘルメットの着用義務はなく、男性もヘルメットはかぶっていなかったということです。

警察は取り締まりを強化

マナーを守らない運転も問題になっています。
去年9月からことし3月までの検挙件数は、全国で265件。
内訳は▼通行ができない歩道を走行するなどの「通行区分」が164件(62%)▼信号無視が28件(11%)▼一時不停止が22件(8%)▼整備不良が13件(5%)▼その他が38件(14%)となっています。

さらに、飲酒運転も増えています。
東京都内では、先月末までに39件検挙されているといいます。
大阪でも、今月13日の夜、大阪市内の繁華街など11か所で電動キックボードの取締りを実施。

飲酒運転の検挙はなかったものの、ミラーを付けていなかったり、歩道を走ったりするなど44件の違反があったということです。
大阪府警交通指導課 稲積崇管理官
「電動キックボードも車の仲間なので、ルールを守って安全に利用して欲しい」

加害者になる可能性も

人を傷つけてしまうリスクもあります。

交通事故の鑑定などを行っている事故解析技術研究所は、電動キックボードと人が衝突したときの状況をシミュレーションした動画を作って公開しています。
時速19キロで走る電動キックボードが、歩行者にぶつかったという想定です。
キックボードがぶつかると歩行者は勢いよく倒れ、地面に頭を強く打ちつけます。

運転手も転倒し歩行者に覆いかぶさるようになるため、衝撃はさらに大きくなるということです。
事故解析技術研究所 相見薫さん
「飲酒運転や歩道を走るなどルールを守らず走る人もいて、乗り物として軽く見られているが、一定の速度が出るため今後、重大な事故が増えていくと思い動画を作った。自分でも購入して走ってみたが、前進しているだけでよろけてしまうような不安定な乗り物だと感じた」
また、転倒した際には運転手も大きなけがをするおそれがあることから、ヘルメットを着用するよう呼びかけています。
事故解析技術研究所 相見薫さん
「立っている状態で乗っていて頭が高い位置にあり、転倒して頭をぶつければ運転手も大けがをするので、ヘルメットは任意ではなく必ず着けてもらいたい。タイヤが小さいので街なかの段差でも簡単に転倒してしまい、私自身も段差を乗り越えられなくて転びそうになったことがある。運転手に必要な安全教育をしたうえで、電動キックボードの構造や運転方法を理解して乗ることが大事だ」

変わる交通ルール

手軽で便利な交通手段として利用が広がっていることから、交通ルールも見直されることになっています。
道路交通法を改正し▼車体が長さ1メートル90センチ、幅60センチで▼最高速度が時速20キロ以下の電動キックボードを「特定小型原動機付自転車」と位置づけます。

年齢制限を設け、16歳未満の運転は禁止するとしていますが、運転免許は不要となります。

車道だけでなく、自転車専用レーンや自転車道も走行できることになります。

歩道は原則禁止ですが、最高速度を時速6キロまで制御できるなど一定の条件を満たす場合は例外的に通行が認められます。

ヘルメットの着用は、努力義務として課されています。

改正された道路交通法は、2024年4月までに施行されることになっています。

安全性についての議論は続いていて、運転免許やヘルメットの着用の義務化などについては、引き続き検討するということです。

安全に乗ってほしい 業界団体の安全対策は…

事業者も、利用者に安全に利用してもらおうと対策に力を入れています。

このうち、東京や大阪などで電動キックボードのシェアリングサービスをするLUUPは▽免許証を登録してもらうこと、▽あらかじめ道路交通法のテストを受けてもらい全問正解してもらうこと、▽乗車ごとに安全ルールの確認画面を表示することなどに取り組み、利用者に安全な運転を促しています。

飲酒運転を防ごうと、週末を中心に夜間の利用者の多い乗車場所で飲酒運転防止の呼びかけも始めています。

電動キックボードの事業者などでつくる団体は、改めて交通ルールの周知を図っていきたいとしています。
マイクロモビリティ推進協議会 城譲 事務局長
「まだまだルールを正しく理解していない方いるので、効果的なやり方を業界のほかの企業、関係行政機関、警察などと連携して対策を進めていきたい。安全安心にきちんとルールを守って乗ってもらえれば、公共交通機関が行き届いていないようなところで非常に有用な乗り物になると思う」
便利で新しい交通手段。
私(千田)も休日に外出するときには、よく利用しています。
正しいルールやマナーを守って、安全に利用してほしいと思います。