リアルに赤裸々に 漫画で描く更年期

リアルに赤裸々に 漫画で描く更年期
職場で突然噴き出す汗に戸惑ったかと思えば、年下の同僚の何気ないことばに救われる。

そんな更年期世代の日常を、赤裸々に描いた漫画が話題になっています。作者の体験がもとになっているというこの漫画。

なぜ今、更年期をテーマに選んだのでしょうか。

子育て漫画は数あれど…異色の更年期漫画

仕事中、ちょっと走っただけで吹き出す汗が止まらなくなる。
生理が不順になり、取り引き先で服といすを汚してしまう…。
ことし3月から教育サービス大手「ベネッセコーポレーション」のウェブサイトで連載が始まった漫画「働きママン」。

更年期世代の働く女性が直面する体の変化や悩みを赤裸々に描いています。

サイトの担当者によると、更年期をテーマにした漫画を掲載するのは今回が初めてで、予想を超える反響があるといいます。

SNSでも「心に染みる言葉」「めっちゃ響いた」などといった読者の声が寄せられています。

リアルなエピソードは作者の体験がもとに

実はこの作品、最初の単行本が発売されたのは10年以上前。

当時は子どもを産んで職場に復帰した主人公が、育児や仕事で悩みながらも前向きに生きる姿が描かれました。

今回はその続編で、主人公が年を重ねて更年期を迎えたという設定です。

作者のおぐらなおみさん(53)は、主人公に自分自身を重ねているといいます。
「働きママン」の作者 おぐらなおみさん
「子どもがやっと手を離れて、これで仕事に集中できるという時に来るんですよ、更年期が。いつになったら集中して仕事ができる時期がくるのかすごく不安に思ったし、(自分と)同世代の主人公は今頃どうしているだろう、やっぱり更年期で悩んだりしているのかなと」
おぐらさんは45歳を過ぎたころから更年期の症状に悩まされるようになったそうです。

いちばんつらかったという47~48歳のころの日記には、症状と仕事のはざまで、まさに“格闘”していたことが記されています。
「びっくりするほど集中力がない」
「モーレツにイライラして皿を割ってしまう」
おぐらさん
「やる気はあるし、やらなきゃいけないっていうのは分かってはいるんですけど、座っていられない。座っているとドキドキしてしまう。汗が出てくる。集中力には本当に悩みましたね。以前は仕事が早かったのに、締め切りぎりぎりになるとか、ちょっと過ぎちゃうこととかあって。本当に泣きながらですよ。これだけつらいのだから、ものを書く人間として描かないわけにはいかないと」

話の中に必ず“救い”を入れる

今では症状はかなり改善されているというおぐらさん。

漫画では、主人公が更年期の症状に悩む様子だけでなく、そのつらさを分かってくれる人たちからの優しい目線も描いています。

例えば、いつもは怖い女性の先輩に体調がすぐれないことを打ち明ける場面。

先輩はすぐに察して「大変だよね」と言うと、「でも私が怒りっぽいのは更年期のせいじゃなくて、人生ずーっとそうだからね!?」と笑い飛ばします。
別の場面では、更年期の女性をやゆするような発言をする同僚に対し、別の男性社員が、自分の母親も50歳くらいのときは大変そうだったと、誰を批判するでもなく語ります。
おぐらさん
「この先どうなってしまうんだろうというのが更年期に入った女性は必ず思うことだと思うんですよ。症状も人と全然違ったりするし、自分だけの悩みになりがちなので、気持ちが楽になるような作品づくりを心がけたいと思っています。

必要以上に腫れ物に触るような感じで接してほしくないと思っているんですね。自然なことだし。ただ女性は自分でコントロールできないので、すごく悩んだりするんですけど、特殊なことではないので。人生の当たり前の流れだと思っていただければうれしいですよね」

男性の悩みを描く意味“互いに支え合おうよ”

おぐらさんに、作者としていちばん印象に残っている場面を聞くと、主人公の周りにいる男性たちの存在について語ってくれました。

作品の中には先ほど紹介した、職場の同僚のほかにも、夫や高校生の息子などが登場し、主人公に助け船を出したり、理解を示したりします。
また、夫が仕事や体力の面で人知れず悩んでいるといった描写も。

こうした場面は、意識して描いているといいます。
おぐらさん
「男性も(更年期について)分かってくれることが増えているという印象があって。自分の子どもも男の子ですが、『ちょっと助けてほしい』と言えるようになった。助けてもらえるのは心強いし、うれしいことなのでそれは描くように心がけています。また、男性もある程度の年齢になると更年期症状と言ってもいいような状態になると聞いて、お互い大変だよねと。助け合おうよという気持ちです」
現在大学生の息子にも、数年前から症状のことを話すようになったというおぐらさん。

「できることがあれば言って」ということばが返ってきて、気持ちが楽になったそうです。

“1人じゃない”と知って

自身の体験を踏まえて、更年期世代のリアルな日常を描くおぐらさん。
最後に、漫画に込めた思いを聞きました。
おぐらさん
「更年期はみんなが通る道だけど、割とみんな知らない。更年期ってこういうものだよと多くの人に知ってほしいし、1人で悩まないでほしいというのが1番ですね。

1人じゃない、仲間はここにいる、そういう気持ちで描いています。みんな悩んでバタバタしながら毎日を過ごしているんだよ、みんな同じだからと伝えたいです」
更年期は、閉経する前後のおおむね45歳から55歳を指し、女性の心身に大きな影響を及ぼします。

また、男性もストレスなどによって更年期に似た症状が出ることがあります。

NHKが去年、専門機関と共同で行ったアンケートでは、更年期の症状を経験したことがある人は女性37%、男性9%に上ります。(NHK「更年期と仕事に関する調査2021」40~50代で現在、または過去3年以内に経験した人の割合)

10月18日は「世界メノポーズデー(更年期の日)」です。
あなた自身、そして身近な人の更年期について、考えてみませんか?

(ネットワーク報道部記者 金澤志江)