【詳しく】旧統一教会めぐる「質問権」とは?今後の手続きは?

旧統一教会の問題をめぐって、岸田総理大臣が永岡文部科学大臣に宗教法人法に規定されている「質問権」の行使による調査を指示したことを受けて、文化庁は、「質問権」を行使する基準を明確にする必要があるとして、専門家による会議を立ち上げる方針を固めました。行使されれば初めてとなる「質問権」とは何か?具体的に解説します。

これまでに行使なし 信教の自由妨げないルールも

宗教法人法に規定されている「報告徴収・質問権」は、宗教法人に法令違反などが疑われる場合、文部科学省や都道府県の職員が運営実態などについて報告を求めたり、質問したりできるものです。
この規定はオウム真理教による一連の事件を受けて平成8年の法律改正で追加されましたが、これまでに「質問権」が行使された例はありません。

「質問権」を行使できるのは、次の3つに限られています。
▽宗教法人が公益事業以外の事業であげた収益を、宗教法人などのために使っていない疑いがある場合、
▽規則などの認証を受けたときに宗教団体としての要件を欠いていた疑いがある場合、
▽解散命令に該当する疑いがある場合です。

宗教法人が質問に応じなかったり虚偽の報告をしたりした時は、代表の役員が10万円以下の過料にされるという罰則もあります。

一方、信教の自由を妨げないためのルールも定められています。

文部科学省などは「質問権」の行使にあたり、有識者などでつくる宗教法人審議会の意見を聞くこととされています。また、質問のため宗教法人の施設に入るには、代表役員などの同意が必要だとする規定が設けられています。

報告や質問の結果、法令違反などが確認され、「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」などと文部科学省などが判断すれば、裁判所に解散命令を請求する可能性があります。

請求が出た場合、裁判所は宗教法人や文部科学省などの意見を聞いたうえで、解散命令を出すかどうか判断することとなります。

被害者家族「大きな一歩として評価」

岸田総理大臣が宗教法人法に規定されている「質問権」の行使による調査を実施するよう指示したことについて、「統一教会被害者家族の会」の60代の夫婦に聞きました。

25年前に入信した妻を、夫はおよそ1年半かけて脱会させた経験があり、現在は、夫婦ともにこの団体で旧統一教会をめぐる金銭トラブルや脱会に関する相談支援を行っています。
夫婦は「これまで『関係を断つ』と言いながら旧統一教会の実態解明に動いてこなかった政府が、質問権の行使を指示したことは大きな一歩として評価できる」と述べました。

そのうえで、「大切なのはなるべく早く調査を実行することだと思う。名称変更を認めた文科省がどこまで踏み込んだ調査をできるのか疑問もあるので、被害者や国民が納得できる人選とプロセスで教会の実態を解明してほしい」と話していました。

宗教2世の女性「早急に高額献金の規制を」

「小川さゆり」の名前で、両親が行った献金の実態や自身が受けた精神的な被害などを訴えている宗教2世の女性は、NHKの取材に対し、「ここまで国会でも取り扱っていただけて、そこに至るまで多くの被害者が声を上げてくれたおかげなので感謝しています。当事者としてもあいまいな態度での政府の在り方には納得できないので、被害者の声を聞き、また直接でも総理に聞いてもらい、早急に高額献金の規制の法律立案や、宗教法人解散を明確に宣言していただきたいです」などとコメントしました。

「小川さん」は、今月7日に日本外国特派員協会で会見を開いた際、旧統一教会から会見の中止を求められていました。

川井弁護士「解散命令を請求する要件は整っている」

「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の川井康雄弁護士は、「これまでの消極的な点を踏まえれば、質問権の行使は、政府が解散請求の要件に該当すると疑われる団体だと判断したことになり、旧統一教会の被害撲滅に非常に大きいと評価できる」と話しました。

そのうえで、「解散命令の請求に至る疑いの程度は、軽度なものから重大な疑念まであると思うが、旧統一教会の場合、かなり重大な疑念だ。弁護士連絡会としては、解散命令を請求する要件は整っていると捉えているので、質問権の行使で時間がかかり、被害が拡大することが最悪だと考えている。政府は事実解明、教団の不当性が明らかになるような質問権の行使の手続きを速やかに進め、旧統一教会にも速やかに応じるよう求めたい」と話しました。

「解散命令」請求求めるネット署名始まる

「世界平和統一家庭連合」旧統一教会について、宗教法人法に基づく「解散命令」を請求するよう国に求める、インターネット上の署名活動が17日から始まりました。

これは旧統一教会の元信者とその家族を支援する団体や、いわゆる宗教2世、それに学者やジャーナリストなど、40の個人と団体が呼びかけ人となって行うものです。

呼びかけ文では、宗教2世は、親の多額な献金による困窮や信仰の強要などの人権侵害で傷つけられ、正体を隠した伝道などは、不特定多数の人を巻き込んでいると指摘しています。

そのうえで、裁判で組織的違法性が認定されていること、旧統一教会が過去の活動の違法性を認めておらず、自助努力に期待できないこと、解散命令は宗教法人格を取り消すだけで「信教の自由」を損なうものではないことなどを理由に、文部科学大臣や法務大臣に宗教法人法に基づく「解散命令」を裁判所に請求するよう求めています。

オンライン署名は、1か月間行われ、来月をめどに、関係省庁への提出を予定しているということです。

署名の呼びかけを行った「統一教会被害者家族の会」は「この機会を逃したら旧統一教会の解散は実現できないので、世代を超えて幅広い人からの支持が必要だという思いで署名を集めることを決めた。より多くの人に協力をお願いしたい」と話していました。

旧統一教会「慎重に受け止めたい」

岸田総理大臣が宗教法人法に規定されている「質問権」の行使による調査を実施するよう指示したことについて、「世界平和統一家庭連合」旧統一教会は、「慎重に受け止めたいと思います。前例のないことなので、文化庁がどう判断し、質問権がどのように行使されるのかを待ちたいと思います」とコメントしています。