「宿泊料金が軒並み高く‥」全国旅行支援で “便乗値上げ”?

新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和され、街中には海外からの旅行客の姿が多くみられるようになりました。

一方、水際対策の緩和とともに始まった全国旅行支援の影響で、ホテルなどの宿泊料金が値上がりしているという声も出ています。

秋葉原の家電量販店では

新型コロナウイルスの水際対策が今月11日から大幅に緩和され、ツアー以外の個人の外国人旅行者の入国もおよそ2年半ぶりに解禁されました。

東京・秋葉原にある家電量販店では、外国人の客の増加を見込んで外国語表記の看板や案内板を増やして対応していて、14日は炊飯器などの電化製品を品定めしたり、土産物を買ったりする人たちの姿が見られました。
アメリカから訪れた女性は「日本は旅行するのにお金がかかりますが、円安になったおかげで来ることができました。円安なので日本でたくさん買い物したいです」と話していました。

店の担当者によりますと、前の週の売り上げは去年の同じ時期に比べおよそ3倍に増えた一方、店を訪れる外国人の数は感染拡大前の3割ほどにとどまっているということです。

家電量販店の奥田和樹営業部長は「円安の影響で外国人旅行者が商品を購入するときの決断が以前より早くなっているように感じます。徐々に客足が戻ってきているので今後に期待していますが、中国や韓国からの観光客は以前のようには戻ってきていないので、コロナ前の水準に戻るのはまだ先になると思います」と話していました。

ゲストハウスにも外国人旅行者

130人余りが宿泊できる東京・新宿区にあるゲストハウスは、感染拡大前は年間およそ4万3000人が利用し、その8割以上を外国人旅行者が占めていました。

水際対策の緩和が発表されて以降、宿泊予約は徐々に増えていて、この週末は20人余りの予約が入ったということです。施設ではQRコードをスマートフォンで読み込むと英語表記でチェックインできるシステムや外貨の両替機を設置して対応にあたっていました。

オランダから訪れた男性は「日本の文化が大好きで来たので奈良や京都の寺社を回りたい。円安なので外国人が食事をしたり買い物をするのにもプラスの影響があると思う」と話していました。
一方、課題に感じているのがスタッフの確保です。

ゲストハウス運営会社の片岡明子さんは「稼働率が上がり対応がかなりタイトになってきているのでスタッフは増やさないといけないと考えています。海外サイトからの予約が増えていて、円安の影響を感じています。コロナ前と比べるとまだまだ少ないが、少しずつお客様が増えてきていてうれしい。日本らしくおもてなしをしたい」と話していました。

全国旅行支援 宿泊料がふだんより高い?

水際対策の緩和とともに、今月11日から「全国旅行支援」が始まりましたが、この影響で宿泊施設の価格が上がっているように感じるという声も聞かれました。

家族旅行を検討しているという40代の男性は「旅行サイトで調べましたが、値段が高く予約するのをやめたホテルもありました。2割増しくらいになっているイメージがあります」と話していました。

大阪への旅行を検討しているという20代の男性は「全国旅行支援に便乗して上がっていると感じます。ただ、上げたくなる気持ちもわかるので、しかたないと思います」と話していました。

需要の高まりを背景に“便乗値上げ”か

SNS上には「ホテルや旅館が便乗して値上げをしているのではないか」といった声が上がっています。

「全国旅行支援」は、コロナ禍で大きな影響を受けた観光業界を支援しようと、一定の金額を上限に旅行代金の40%を割り引くもので、東京を除く46の道府県で今月11日から始まりました。

初日から予約サイトや旅行会社のホームページにはアクセスが集中したほか、旅行会社などではすでに旅行商品の予約を停止する事態も相次ぎました。

こうした中、SNS上にはホテルや旅館の宿泊料金について「どこのホテルも軒並み金額が高くなっている」、「予約を取り直そうとしたら金額が2倍以上になっている」などと、割引きを前提とした値上げ、いわゆる“便乗値上げ”をしているのではないかという声が上がっています。
宿泊予約サイトの担当者によりますと、「全国旅行支援」が始まってから全体的に予約がかなり増加し、宿泊料金が高くなる傾向がみられるということです。

ただ、多くの宿泊施設は「ダイナミック・プライシング」と呼ばれる需要と供給のバランスに応じて価格を設定する仕組みをとっているため、予約状況に応じて価格を変動させるのは一般的だとしています。
航空・旅行アナリストの鳥海高太朗さんは「宿泊施設はこれまで利益を減らしてでも予約をとりたいという状況だったので、需要が高まった分、値上げをしているものと考えられる。ただ、過度な値上げは消費者の信頼を失うことにつながりかねないので、高すぎず、安すぎず、消費者と宿泊施設の双方にメリットがある適正な価格を探る必要がある」と話していました。

観光庁「不当な値上げないよう周知」

観光庁の担当者は、消費者から「便乗値上げではないか」という意見が出ていることは承知しているとしたうえで、「料金設定の方法や考え方は事業者によって異なるため、どこからが不当な値上げなのかを一律に定めることはできない。ただ、助成分をあらかじめ上乗せするなど、割引きを前提にした不当な値上げがされないよう都道府県を通じて事業者に周知していく」と話しています。

制度の趣旨を逸脱した悪質な値上げを防ぐため、独自に対策をとっていた自治体もあり、例えば、山梨県は「不適切な宿泊プランの設定などが発覚し、悪質と認められた場合、参加の取り消しを検討する」とマニュアルなどで周知しているということです。

埼玉県は事業者が参加を申し込む段階で便乗値上げをしないことなど、禁止事項を盛り込んだ同意書への記入を求めているということです。