健康保険証がなくなる… “マイナ保険証”導入の現場では

「保険証を廃止されたら困る」
「カード1枚で事足りるなら便利」

現在使われている健康保険証を再来年秋ごろをめどに原則廃止し、マイナンバーカードと一体化した形に切り替える方針とのニュースが流れると、SNS上では賛否両論が沸き起こりました。

マイナンバーカード、すでに導入されている医療現場ではどのように使われているのでしょうか。

一方で、利用や導入が進まない現場の実情は。

「マイナ保険証」導入した病院では

早期に導入して積極的に利用を促してきた病院では少しずつ利用者も増えてきています。
去年2月に設備を導入した山形県酒田市の「日本海総合病院」の窓口には、顔認証付きのカードリーダーが設置されています。

ここに自分のマイナンバーカードを置いて顔が見えるようにすると、カードの顔写真との照合による本人確認が自動で行われます。

そして、過去の特定健診の結果や、薬の情報を医療機関に提供することに同意するかしないかを選択すると、受け付けを済ませることができます。

顔認証の代わりに、暗証番号でも本人確認を行うことができるということです。

マイナンバーカードを使って診察の受け付けをしていた女性に声をかけてみると。
80歳女性
「取得して初めてマイナンバーカードを使いましたが、簡単でした。暗証番号は忘れがちですが、顔認証があってよかったです」

市役所に行ったらカードの申請を促され、利用はこの日が初めてとのこと。

暗証番号を忘れて困ったなと思ったら、顔認証での本人確認ができて楽だったと話していました。
病院内ではマイナンバーカードの申請を受け付ける市の出張窓口も定期的に設けられ、取材した今月12日も患者が次々に訪れて説明を受けたあと、カードの申請をしていました。

カードの申請に訪れた73歳の男性にも聞いてみると。

73歳男性
「保険証がいずれ一元化されるというニュースを聞いて申請に来ました。何枚もカードを 持つより1枚になっていいと思いますが、セキュリティーはしっかりしてもらいたいと思います」

マイナンバーカードで一元化される個人情報の管理は厳重にしてほしいとの意見でした。

病院では院内のデジタル掲示板で案内したり、窓口でカードの利用を確認したりして、積極的に利用を呼びかけていて、運用開始から1年8か月余りでカードの利用は約440件あり、今月に入ってからは1日10件以上の日もあるということです。
島貫隆夫 病院長
「病院の業務の効率化につながり患者も医療に参画できる非常に便利な仕組みなので、積極的に取り入れています。カード自体が普及しないと利用が進まないので、市とも連携して進め、患者側にも意義を認識して使ってもらいたい」

導入は全国で約30% 導入後も使われない現場も

一方、マイナンバーカードを保険証として利用するために必要な設備を導入し、運用を開始した全国の医療機関や薬局(※導入対象の施設)は今月2日時点で全体の33.5%にとどまっています。

医療機関からは設備を導入したのに利用する患者がいないとか、導入のメリットがわかりづらいなど、課題を指摘する声もあがっています。
このうち、東京 江戸川区のクリニックでは5か月ほど前にカードリーダーなど利用するためのシステムを導入しましたが、これまで一度も患者の利用がないということです。
診察に訪れた72歳男性
「どういうメリットがあるかよくわからず、マイナンバーカードをまだ作っていません。カードを医療機関でも使えることも知りませんでした。年配者にはしつこいくらい周知したほうがいい」

クリニックの医師は、マイナンバーカードを利用すれば過去の薬の情報が確認できるなど患者自身にとってメリットもあると感じていますが、患者側への周知が不足していると指摘します。
目々澤醫院 目々澤肇 院長
「患者も保険証があるならそれで受け付けをすればいい、使わなくてもいいと言われてしまう。医療の情報のオンライン化は大切なので普及を進めたいが、なかなか難しいのが現状です」

医療機関は費用面や患者データ共有に不安も

また、システムを導入していない東京・練馬区のクリニックは費用面の課題を指摘するとともに患者データの共有などに不安があるとしています。
国はクリニックの場合、カードリーダー1台を無償で提供し、システム改修などの費用として補助制度を設けていますが、クリニックの医師が調べたところ別の医療機関の見積もりではディスプレイや作業費などを含めて補助の額を上回るケースもあったということです。

さらに、システムの改修に伴ってこれまで院内だけで管理してきた電子カルテのデータなどが将来的にどこまで共有されていくことになるのか不透明な部分も多いとして不安に感じているということです。
国はマイナンバーカードの利用を進めるため、来年4月から医療機関などに必要なシステムの導入を原則として義務づける方針を示していますが、クリニックの医師は制度に納得していない状況で受け入れるのは難しいと話しています。
よしだ内科クリニック 吉田章 院長
「昨今のコロナの流行で日常の仕事も手いっぱいで、正直に言って準備は全然できていません。国は説明不足で、勢いで進めてしまうのは無理があると感じます」

「国は丁寧に説明を」

課題を指摘する声が上がる中、今後どのような対応が求められるのでしょうか。

医療情報に関する研究や開発などを行う医療情報システム開発センターの山本隆一理事長に聞きました。
「よりよい医療を提供するためには医療費がかかるので、効率化を進めるために大事な基盤となるこのシステムの意義は大きい。一方、移行期はカードの利用者が少ないとメリットが目に見えづらいが、一定数利用するようになれば自覚してもらえると思うので、少し長い目で見てほしいと思います」

「日本の医療機関はぎりぎりの業務量のところも多く、利用者が少ない状況でさらなる仕事を増やすのが難しい状況もある。目の前のシステム導入を求めるだけでは反発が起こるので、国は医療の持続性を保ち、効率を上げるという大きな意義を丁寧に説明して理解を得ることが必要だ」