国連総会「ロシアによる併合は国際法違反」非難決議を採択

ロシアがウクライナの4つの州を一方的に併合するとしたことについて、国連総会では、ロシアによる併合の試みは国際法に違反し無効だと非難したうえで、ロシアに対して一連の決定の撤回などを求める決議案の採決が行われ、143か国が賛成して採択されました。

ニューヨークの国連本部では12日、国連総会の2日目の緊急特別会合が開かれ、ロシアがウクライナの東部や南部の4つの州を一方的に併合するとしたことをめぐって、ウクライナが提出した決議案の協議が行われました。

決議案は、ロシアが「住民投票」だとする活動やその後の併合の試みについて国際法に違反し無効だと非難したうえで、各国に対して領土のいかなる変更も認めないよう求め、ロシアに対して一連の決定を撤回し軍を撤退させるよう求めています。

演説したアメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は、ロシアによって国連が試されていると指摘し「明確なメッセージを送ろう。国連は違法な併合の試みを容認しない。隣人の土地を力で奪うことを決して容認しない」と述べ、決議案への支持を呼びかけました。

これに対してロシアのネベンジャ国連大使は「住民投票で圧倒的多数がロシアの一部となることを選択した」と主張し、決議案は不当だと訴えました。

このあと行われた採決では、日本や欧米各国など143か国が賛成、ロシアや北朝鮮など5か国が反対、中国やインドなど35か国が棄権し、棄権と無投票を除く3分の2以上の賛成で決議が採択されました。

国連では先月30日、安全保障理事会で同様の決議案がロシアの拒否権によって否決されていました。

ことし2月の軍事侵攻以降、国連総会でロシアに対する決議が採択されたのは4回目ですが、一方的な領土の併合の試みを前にこれまでで最も多くの国が決議に賛成しました。

ただ、反対や棄権などに回りロシアに配慮を示した国もおよそ50か国にのぼり、国際社会の足並みの乱れも改めて浮き彫りになりました。

日本「ロシアの一方的な試みは国際秩序の基盤を揺るがす」

決議案には、欧米各国や日本などおよそ80か国が共同提案国に加わりました。

12日の緊急特別会合で演説した日本の石兼国連大使は「ロシアによる言語道断の行動を国連総会が認めてはならない。力ずくで現状を変えようとするこうした一方的な試みは、国際秩序の基盤そのものを揺るがすものであり、世界のどこであっても起きてはならない」と述べ、決議案への支持を呼びかけました。

松野官房長官「即時に侵略を停止するよう強く求める」

松野官房長官は午前の記者会見で「143票の賛成票は、3月2日のいわゆるウクライナ侵略決議の141票、3月24日のいわゆるウクライナ人道決議の140票を上回るもので、国連総会として、国連憲章の原則と目的を守る強い意思を表明したものと受け止めており、歓迎する。日本は共同提案国に入り、賛成票を投じた」と述べました。

そのうえで「わが国は、力による一方的な現状変更の試みを決して看過せず、引き続きG7をはじめとする国際社会と連携し、ロシアに対し、即時に侵略を停止し、部隊を撤収するよう改めて強く求めていく。また、安全保障理事会や国連総会の動向を、強い関心を持って注視していく」と述べました。

林外相「国連憲章守る意思の表明を歓迎」

林外務大臣は参議院外交防衛委員会で「決議が賛成多数で採択されたことは、国連総会として国連憲章の原則と目的を守る強い意思を表明したものと受け止めて歓迎する。わが国としても1か国でも多くの国が賛成し、ロシアに対する国連総会としての強い意思が示されるよう、多くの国への働きかけを行った」と述べました。

そのうえで「引き続きG7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携しながら、ロシアに対し即時に侵略を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう改めて強く求め、安保理や国連総会の動向を注視していく」と述べました。