マイナンバーカードで健康保険証が廃止に?どう思う?

マイナンバーカードで健康保険証が廃止に?どう思う?
「任意のはずが実質強制になるのか」
「なぜそんなに急ぐの?」
「何枚もカードがあるとかさばるので一元化されると便利」

SNSに並んだコメントの数々。実はこれ、健康保険証とマイナンバーカードを一体化することについてのコメントです。

政府は今月13日、現在使われている健康保険証を2024年の秋に廃止し、マイナンバーカードへ一体化した形に切り替えると発表しました。

ネットでも検索が増えるなど関心が高まるマイナンバーカード。
マンナンバーカードをめぐりいま、何が起きているのでしょうか?

(取材班 小室洋平 奥野葉月 柳澤あゆみ)

「こんなに便利になりますよだったのに…」

『保険証廃止もそうだけど、マイナンバーカードは「持つとこんなことが便利になりますよ」だったはずなのに「持たないとこんなこともあんなことも不便にしてやるぞ」になってるのが嫌』
今月、マイナンバーカードについて投稿されたツイートです。

投稿したのは13万を超えるフォロワーがいるインフルエンサーの杏さん。

ふだんは美容や恋愛についてツイートしている杏さんが、突然、マイナンバーカードについてツイートしたのには理由があったといいます。
杏さん
「マイナンバーカードを作るのは任意のはずなのに最終的には作らなければならないのではないかという不信感が出てきたのかなと思います」
ツイートは2万件以上のリツイートと7万件以上のいいねがつくなど反響を呼びました。

マイナンバーカードの健康保険証「マイナ保険証」をめぐっては、これに対応した医療機関を受診した場合、患者が負担する金額が今月から変わりました。

3割負担の患者の初診の場合、
▽「マイナ保険証」を利用した際は21円から6円に引き下げ、
逆に▽従来の健康保険証を利用した際は9円から12円に引き上げられました。

さらに政府は今月13日、現在使われている健康保険証を2024年の秋に廃止し、マイナンバーカードへ一体化した形に切り替えると発表しました。
杏さん
「最初は、例えば住民票がコンビニで取れるなど「持つと便利」という話だったのが、健康保険証や料金の上乗せなど「持たないデメリット」が強調されていく感じになっているなと思っていたんです。私は確定申告のためにマイナンバーカードを作りましたが、年1回その時しか使っていません。なぜそこまでしてマイナンバーカードを広めようとするのか」

役所の窓口に来た人に話を聞くと…

政府は、今年度中にほぼすべての国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目標としています。

最大で2万円分のマイナポイントがもらえるようにしましたが、目標には遠く、9月末までだった対象となるカードの申請期間を年末まで3か月延長しました。

しかし、普及率は今月18日の時点で全国民の50.1%にとどまっています。
今月12日、新宿区役所のマイナンバーカードの申請窓口には朝から次々と人が訪れていました。話を聞いてみると…
75歳女性
「保険証が原則、廃止されるという報道を知って、登録しにきました。マイナンバー保険証は個人情報が詰まっているので、病院の窓口に出すために持ち歩くのって怖いです。公園にマイナンバーカードが落ちてるのを見た友達もいるし、私も落とさないか不安」

86歳男性
「情報漏れするかもしれないという不安があって口座や保険証などの登録をしてこなかったが、物価高で食料品や日用品の価格が上がっているので、ポイントを生活の足しにしたくて。背に腹は代えられないと思う」
こんな声が多く聞かれました。

医師たちからも懸念の声が…

保険証の廃止の方向が示されたことに全国の医師で作る団体からは懸念の声も出ています。

日本医師会の松本会長は今月12日の会見で課題を指摘しました。
日本医師会 松本吉郎会長
「もし仮に、政府が健康保険証の廃止を決定するのであれば、それについて周知、理解を国民にしっかりと求めていくことが肝要だ。また、医療現場でも、負荷がかかったり、混乱が生じたりする可能性もありますので、それを含めて、しっかりと手当てをしていただきたい」
また、全国保険医団体連合会の松山洋事務局主幹は、国民への説明が不十分で、利用者の誤解を招いてるケースもあると指摘します。
全国保険医団体連合会 事務局主幹 松山洋さん
「これまでの保険証が使えなくなったと思い捨ててしまった患者さんが、『マイナ保険証』に対応していない医療機関にマイナンバーカードを持って診察を受けに来たといった相談も寄せられている」

自治体からも困惑の声が…

マイナンバーカードをめぐっては、地方自治体からもさまざまな声が出ています。

氏名・性別・住所・生年月日が入ったICチップが埋められているマイナンバーカード。

総務省は、行政手続きにおいてオンラインで本人確認ができる唯一のもので、デジタル社会を実現させ、利便性を向上させるためには不可欠だとして普及を進めてきました。

政府はデジタル化を進めて地方活性化につなげるために来年度、新たに設ける交付金の配分に、自治体ごとのカードの普及状況を反映させる方針も示しています。

現時点でカードの交付率が低い自治体からは、匿名を条件に不満が相次いで聞かれました。
宮城県内の自治体
「交付金が少なくなれば、行政サービスにも影響が出かねない。政府がマイナポイントがもらえてお得だと言ってもお年寄りには伝わりにくい。高齢化率の高いうちのような自治体は普及が遅れる可能性もあり、不公平だ」

埼玉県内の自治体
「カードの申請はあくまで自由意思で、“ぜひ申し込んでください”という働きかけは熱心にできない」
他にも、人員が限られるなか、カードの発送作業や申請の受け付けに追われ、残業時間や休日出勤が増えているというところもありました。

メリットもあります

一方、すでに大多数の人にマイナンバーカードを行き渡らせた自治体もあります。

宮崎県都城市です。
取得率は市では最も高い84.7%(9月末時点)。

図書カードや職員の出退勤のほか、手続きが煩雑なお悔やみ窓口もカード1枚で。
避難所に行くのにもマイナンバーカードを使うことができるのでリアルタイムで避難が把握できるほか、10万円の現金給付もいち早く行うことができたと言います。
宮崎県都城市 デジタル統括課副主幹 佐藤泰格さん
「普及率のためにカードを無理やり使って不便になることはしたくない。いろんなところで使えて利便性が高まったり、手続きの選択肢が増えたりすることが重要だと思います」
また、一気に取得率を上げた自治体もあります。
兵庫県養父市です。

令和2年度当初の普及率は17%程度でしたが、ことし9月末の時点では82%以上と、60%以上も上昇しました。
マイナンバーカードを作ってもらうためにポイントのPRに努めたほか、個人宅や施設へ出張して手続きにかかる負担を軽減。

住民票の写しなどをコンビニエンスストアで発行する費用も300円から150円へと半額にするなど赤字ぎりぎりの普及作戦です。
兵庫県養父市 市民課マイナンバーカード交付推進担当 西垣文雄さん
「普及しなかったときはポイントのPRにも力を入れていなかったし作っても活用できる場面が少なかった。カードを作るメリットを説明したり住民の疑問に丁寧に答えたりするなど『できることはなんでもする』というスタンスのもと、全庁体制で情報発信に努めた結果だと思う」

マイナンバーカード どう思いますか?

マイナンバーカードの普及に向けた進め方は、自治体によってもバラツキがあるのが実情のようです。

カードの交付率が低い自治体からは「そもそも国の取り組みなのだから、国が一律で普及に取り組むべきだ。自治体に対応させるならもっと丁寧に説明してほしい」という声も聞かれました。

総務省は、取得するかどうかは任意、つまり国民の意思に任されているものの、政府としては取得してほしいと考えており、そのために普及策を進めていると説明します。
総務省 マイナンバー制度支援室 担当者
「いろんな場面で使えるよという使いみちを示してみたり、課題に応じたアプローチができればと思っています。カードを取得しなくてもいいよということではなく、取得してください、取ったら便利になりますよというのが基本的な考え方です。もし個人情報の取り扱いに不安があるなら安全だということをしっかり説明していきたい」
ほぼすべての国民にマイナンバーカードを行き渡らせるという政府の目標期限まであと半年。

皆さんはマイナンバーカード、どう思いますか?