水際対策緩和や全国旅行支援開始 航空業界は人手不足対策

水際対策の緩和や全国旅行支援が始まりましたが、航空業界では期待の一方で、コロナ禍の影響による人手不足も懸念されていて、別の部署からの応援や中途採用などで需要の増加に対応しようとしています。

国内の航空会社では、去年の利用者数が感染拡大前に比べて国内線で60%、国際線で95%減少するなど、コロナ禍で厳しい状況となり、採用の取りやめや離職者の増加によって、さまざまな職種で人手不足が懸念されています。

海外では、需要が回復してもスタッフ不足で旅客数を制限せざるをえなかったケースもあるため、各社が対応を加速しています。

このうち全日空のグループ会社では、羽田空港のチェックインカウンターなどで乗客対応にあたるスタッフが3年前から2割減ったため、現在は客室乗務員およそ40人が応援に入っています。

客室乗務員の1人は「多くの便のお客様に同時に対応するので、客室より問い合わせが幅広く、難しい部分もありますが、本来の仕事に戻っても生かせると思います」と話していました。

さらに会社では、およそ3年ぶりに採用を再開し、今月から羽田空港の旅客サービス部門に51人が入社しました。

ホテルや英会話学校などで働いていた中途採用者が中心で、現場に出るには1か月半程度かかるということですが、今月末からの運航規模の拡大や年末年始に向けて研修に励んでいました。

ホテルから転職した新入社員は「就職活動中に航空会社の採用が中止され、悔しい思いをしたので、一員になれて信じられない気持ちです。たくさん学び、早く現場の力になれるよう努力したい」と話していました。
ANAエアポートサービスの野口博史部長は「水際緩和は非常にうれしく、現時点でそれほど飛んでいない国際線の需要もあがってくるのではないか。人手不足で厳しい面もあるが、知恵を絞って業務の効率化を図り、今後の需要に応えていきたい」と話していました。

観光バス運行会社 ドライバー採用に頭悩ませる

観光バスの運行会社の中には、水際対策が緩和されても実際にどれだけ外国人観光客が戻ってくるか不透明なため、ドライバーを新たに採用すべきか頭を悩ませている会社もあります。

札幌市東区にある観光バスの運行会社では、新型コロナウイルスの感染が拡大する前は、売り上げの8割ほどが韓国や台湾などからの外国人観光客の利用によるものでした。

その後、感染拡大の影響で売り上げは激減し、一部のバスを稼働させず車検と保険料が免除される「休車」扱いとしたり、ドライバーの人員を減らしたりしてコストを削減してきました。

今回の水際対策の緩和を受けて、海外の旅行会社から予約や問い合わせが相次いでいることもあり、会社では「休車」させているバス2台を年内にも再稼働させられるよう準備を始めています。
一方、感染拡大前に15人いたドライバーは現在10人に減らしていて、今後、外国人観光客が本格的に回復すれば、たちまち人員不足に陥る見通しです。

会社によりますと、人材の確保は他社との競争にもなるため、早めに動く必要があるものの、現状では実際にどれほど外国人観光客が戻ってくるか不透明なため、なかなか募集に踏み切れないということです。

「北海道ファミリー観光バス」の山口勝運行統括は「外国人観光客の回復を期待する一方、また往来が制限されるのではないかという懸念もある。ドライバーを確保できるか不安はあるが、タイミングを慎重に見極めて増員していかないといけない」と話していました。