“軍事侵攻の大義「祖国防衛の戦い」に” ロシアの専門家指摘

ロシアの政府系シンクタンク「ロシア国際問題評議会」のアンドレイ・コルトゥノフ会長は、NHKのインタビューに対し、プーチン政権は軍事侵攻の大義を特別な軍事作戦から祖国防衛のための戦いに変えたという見方を示しました。そのうえで核戦力を使用する危険性に触れ、ロシアとアメリカによる対話の必要性を訴えました。

一方的な「併合」と「動員」について

コルトゥノフ氏は、ウクライナでの戦況に関連して「政権側は、『特別軍事作戦』としていたものを今では『祖国戦争』として見せようとしている。ロシアは、自分たちが併合した地域で戦闘が起きれば、領土の一体性への侵害だと主張し、相応の対応をとる」と述べ、プーチン政権は、ウクライナの4つの州の一方的な併合に踏み切ったことを受けて、軍事侵攻の大義を祖国防衛のための戦いに変え、動員も含めて国民の理解を得るねらいだと指摘しました。

その動員をめぐり、ロシア国内で混乱が広がっていることについては「30万人の動員であれば、政治の安定性に深刻なリスクを生み出すことはないが、これに限定されるのかはわからない」として、動員の規模が拡大すればプーチン大統領の政権運営にさらに影響を与える可能性があると指摘しました。

また「動員は、右派やタカ派からの要求に応えたものだ」と述べ、政権内の強硬派からの風当たりが強まっている可能性に言及しました。

停戦の見通しは

一方、コルトゥノフ氏は、先月開催された上海協力機構の首脳会議で、中国やインドから軍事侵攻に対する懸念が示されたとして「プーチン大統領にとって、この紛争を早く終結させようとする刺激となった可能性がある。併合した地域を『勝利』として示せば、軍事作戦の目標がかなり達成されたと訴えられる」と述べ、プーチン大統領が友好国からの懸念や併合の決定を踏まえ、停戦のきっかけを探りたいと考えている可能性に触れました。

一方「併合を決めたことが、近い将来のウクライナとの停戦の可能性を閉ざすことは明らかだ。主導権を握るウクライナが、領土を大幅に失うことを受け入れるとは想像できない」とも述べ、現時点で停戦が成立する見通しは非常に低いとしています。

核戦力の使用は

また、ロシアが核戦力を行使する可能性について、コルトゥノフ氏は「ロシア指導部は、欧米の軍事支援の強化を懸念している。核のリスクは、NATOがウクライナの紛争により直接的に、より大規模に関わった場合、増加するだろう」と指摘しました。

そして「プーチン政権は、いまでは戦争がロシアの領土内で直接起きていて、ウクライナだけでなく核兵器の保有国を含む欧米側が活発に関与していると主張することができる」と述べウクライナの4つの州を一方的に併合したことで、プーチン政権が核戦力を使用する危険性が高まるという見通しを示しました。

そのうえで「何よりも核大国であるロシアとアメリカの問題であり、何らかの協議や接触が必要となる」と述べ、米ロ両国による対話の必要性を訴えました。

今後のロシア 先行き見通せず

一方、ロシアで再来年予定されている大統領選挙の行方についてコルトゥノフ氏は「特別軍事作戦がどうなるか、ロシア経済はどうなるかなど多くの要因によって左右される」として、先行きは見通せないとしています。

そして「さらなる大規模な軍事活動を望むタカ派もいれば、早急な平和を望むハト派もいる。今後の外交政策を巡り、指導部内で何らかの闘争が立ちはだかるだろう」と述べ、体制内での権力争いが激しくなるという見方を示しました。