キーウなどミサイル攻撃で14人死亡 97人けが 各国が相次ぎ非難

ウクライナの首都キーウなど各地へのロシア軍の大規模なミサイル攻撃でウクライナ当局はこれまでに14人が死亡し、97人がけがをしたと明らかにしました。ロシアによる民間施設などへの大規模攻撃に対し、各国から非難が相次いでいます。

ウクライナでは10日、首都キーウや西部リビウなど各地でロシア軍によるミサイル攻撃が相次ぎました。

この攻撃で、エネルギー関連施設のほか公園や美術館なども被害を受け、ウクライナの非常事態庁などによりますとこれまでに市民ら14人が死亡し、97人がけがをしたということです。

攻撃についてロシアは、一方的に併合したウクライナ南部クリミアとロシアをつなぐ橋で今月8日に起きた爆発の報復措置だと主張しています。

ゼレンスキー大統領は10日に公開した動画で「ロシア軍は朝のラッシュアワーにわざとこのような攻撃をした。これは典型的なテロリストのやり方だ。より多くの恐怖をあおり、多くの人に動揺を与えたかったのだ」と述べ、ロシアを強く非難しました。
一方、10日に行われたウクライナ情勢をめぐる国連総会の緊急特別会合ではおよそ20か国が演説し、ロシアへの非難が相次ぎました。

このうちロシアとウクライナの仲介役を務めてきたトルコのシニリオール国連大使は「全世界が戦争の終結を呼びかける中、わたしたちは再び衝撃的なニュースで目を覚ました。市民が死傷したロシアの攻撃は深く憂慮すべきであり、容認できない」と非難しました。
これに対し、ロシアのネベンジャ国連大使は、「ウクライナ側と、戦争をするよう仕向けた欧米側に、われわれの報復措置の原因がある」と主張しました。

プーチン大統領 “報復措置” ウクライナ側をけん制

ロシアのプーチン大統領は10日に安全保障会議を開き「ロシアはウクライナのエネルギー、軍事、通信施設に対して大規模な攻撃を行った」と述べました。

プーチン大統領は、一方的に併合したウクライナ南部クリミアとロシアをつなぐ橋で今月8日に起きた爆発がウクライナ側による破壊工作だったとしたうえで、その報復措置だと主張しました。

また「ウクライナの情報機関はロシア国内の発電所やガスの輸送インフラに対しても テロを試みている」などと主張したうえで「わが国の領土でテロ攻撃の試みが続くなら、その脅威のレベルに応じた規模で厳しく対応していく」と述べ、ウクライナ側を強くけん制しました。

現地のようすは

キーウでは、ミサイル攻撃によって住宅やレストランの窓ガラスが割れて破片が散乱し、片づけ作業に追われる住民の姿も見られました。

このうち39歳の女性は、いすの上に散乱した窓ガラスの破片を指し示しながら「このガラスを見てほしい。もし私が座っていたらすべて降りかかってきたかもしれない。どうにかして修理したい」と話していました。

また地下鉄の構内に避難したという32歳の女性は「爆発で目を覚ましました。建物全体が揺れ始めましたが、窓ガラスは割れずにすみました。大規模な攻撃が行われていることを知り、地下に避難することにしました。私の子どもに座る場所を与えてくれるなど皆、落ち着いて助け合っていました」と当時のようすを語りました。

ドイツの領事業務を行う事務所が入る高層ビルも被害

ロイター通信はキーウ中心部の鉄道駅の近くにある高さ100メートル余りのオフィスビルの映像を配信しています。

ドイツ外務省はこのビルには現在は使っていないドイツの領事業務を行う事務所が入っていて、ロシアのミサイル攻撃を受けたと発表しています。

ビルの下層階を中心に多くのガラスが割れ、室内がむき出しになっていました。また、ビルの前の路上には粉々に割れたガラスが散らばっています。

米バイデン大統領「違法な戦争の徹底的な残虐性を示すもの」

アメリカのバイデン大統領は「市民を殺傷し軍事施設以外を標的とする攻撃は、プーチン大統領によるウクライナの人々に対する違法な戦争の徹底的な残虐性を示すものであり強く非難する」との声明を発表しました。

この中でバイデン大統領は「家族や愛する人々を無差別に殺害された人々に哀悼の意を表するとともに負傷したかたがたの回復を心からお祈りする」としています。そして「ロシアによる攻撃はウクライナの人々とともに立ち上がるという我々の連帯をさらに強めるだけだ。同盟国やパートナーとともに、プーチン大統領とロシアによる残虐行為と戦争犯罪の責任を追及し、ウクライナ軍が国と自由を守るために必要な支援を提供し続ける」としたうえでロシアに対し直ちに侵略をやめてウクライナから撤退するよう求めました。

またバイデン大統領は10日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、ロシアによるウクライナの首都キーウなどへのミサイル攻撃を非難し、犠牲者への哀悼の意を伝えました。そしてバイデン大統領はウクライナに対し高度な防空システムを含む国の防衛に必要な支援を提供し続けることを約束しました。

また同盟国やパートナーとともに、プーチン大統領とロシアによる残虐行為と戦争犯罪の責任を追及し、ウクライナへの安全保障や経済、それに人道面での支援の提供に向けて継続して取り組んでいることを強調しました。

仏大統領がゼレンスキー大統領と電話会談 支援拡大を確認

フランス大統領府によりますと、ウクライナの首都キーウなどにロシア側による攻撃が行われたとみられることを受け、マクロン大統領がゼレンスキー大統領と急きょ電話会談を行いました。

このなかでマクロン大統領は、市民の犠牲者が出ていることに懸念を示したうえで、軍事面を含むウクライナへの支援を拡大することを確認したということです。

また、フランスのコロナ外相は「一般市民を意図的に狙うことは戦争犯罪だ」とSNSに投稿し、攻撃を非難しました。

英首相もゼレンスキー大統領と電話会談

イギリスの首相官邸によりますとトラス首相は10日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談しロシアによるウクライナ各地への攻撃を強く非難するとともに、軍事面などで引き続きウクライナを献身的に支えると強調しました。

会談後、トラス首相はツイッターに「市街地への驚くほどひどい攻撃は、プーチンが自暴自棄になっている明確な兆候だ。イギリスは、自由のために戦うウクライナを支え、重要な軍事物資を提供し続ける」と書き込み、全面的な支援を約束しました。
また、ゼレンスキー大統領も「ウクライナへの国際政治と防衛面での支援がイギリスのリーダーシップによって強固なものになると期待している。とりわけ領空の防衛とロシアのさらなる孤立化に向けてだ」と書き込みました。

松野官房長官「断じて正当化できず強く非難」

松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で、今のところ日本人の被害情報は入っていないとしたうえで「ロシアの攻撃により、ウクライナ各地で多くの市民が犠牲になっていることを極めて深刻に受け止めている。民間人や民間施設への攻撃は国際法違反であり、断じて正当化できず、強く非難する」と述べました。

そのうえで「G7をはじめとする国際社会と緊密に連携し、ロシアに対し、即時に侵略を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう改めて強く求めていくとともに、引き続き、ウクライナ政府や国民を支援していく」と述べました。

林外相「滞在者は安全を確保し直ちに退避を」

林外務大臣は、閣議のあとの記者会見で「現時点までに在留邦人の生命や身体に被害が及んでいるとの情報には接していないが、同様の攻撃が続き民間施設が巻き込まれる可能性も否定できない」と述べ、ウクライナに滞在している人に対し、安全を確保したうえで直ちに退避するよう呼びかけました。

また、今月5日からキーウで大使館業務を再開したことについて「大使館員全員の無事を確認済みだ。ウクライナ政府やG7=主要7か国各国とも連携しつつ、できるかぎりの安全対策を講じたうえで業務を行っており現時点で方針に変更はない」と述べました。

国連事務総長も声明「強い衝撃」

国連のグテーレス事務総長は10日、報道官を通じて声明を発表し「多くの市民が死傷したと伝えられている大規模なミサイル攻撃に強い衝撃を受けている」としたうえで「容認できない戦争の激化であり、いつもと同じく、市民が最も高い代償を払っている」と非難しました。

モスクワの市民の反応は

ウクライナ南部のクリミアとロシアをつなぐ橋で爆発が起きたあと、ウクライナの首都キーウなどでロシア側による攻撃が相次いでることについて、ロシアの首都モスクワでは、さまざまな声が聞かれました。

このうち30代の男性は、橋での爆発について「ウクライナ側が多くの武器をもらうために戦争を長引かせるためにやったのだろう」と批判したうえで、ロシア軍による攻撃について「もっと攻撃すれば戦争がより早く終わる。この方法でしか終わらせられない」と話し、報復攻撃を支持していました。

20代の女性も橋の爆発を非難したうえで、ロシア側による攻撃について「正しい報復だと思う。戦争状態にあることは支持できないが、われわれの市民が殺害されることも受け入れられない。報復は必要だ」と述べ、戦争には反対しながらも報復は必要だという考えを示しました。

また別の男性は、橋で爆発について情報が限られていて判断が難しいとしたうえで「アメリカが絡んでいると思う。ウクライナではない誰かが得をしている。ウクライナが直接やっているわけではなく、操られているのだ」と話していました。

一方、年金生活者の女性は「こんなことになって残念だ。とても心配している。もういい加減にして欲しい。双方に大勢の犠牲者が出ている。首尾よく戦争を終わらせなければならない」と話し、双方の応酬が激しさを増している現状を嘆いていました。