北朝鮮 日本の上空通過は「新型の中長距離弾道ミサイル」

北朝鮮は、今月4日に日本の上空を通過させる形で発射したミサイルについて「新型の地対地中長距離弾道ミサイルだ」としたうえで「より強力で明確な警告を敵に送る」という朝鮮労働党の決定に基づく発射だったと明らかにしました。

キム・ジョンウン(金正恩)総書記は「必要な場合はすべての軍事的な対応措置を講じていく」として、日米韓3か国への対決姿勢を強調しました。

北朝鮮は今月4日、内陸部から弾道ミサイル1発を東に向けて発射し、防衛省によりますと、青森県の上空を通過したあと日本の東およそ3200キロの日本のEEZ=排他的経済水域の外側に落下したと推定されています。

これについて北朝鮮は、10日付けの朝鮮労働党機関紙「労働新聞」で初めて具体的に言及し「新型の地対地中長距離弾道ミサイルが、日本列島を横切って4500キロ先の太平洋上に設定された目標水域を打撃した」と明らかにしました。

また、今回の発射は「朝鮮半島の不安定な情勢に対処し、より強力で明確な警告を敵に送る」という党中央軍事委員会の決定に基づくものだったとしています。

紙面には移動式の発射台から炎を噴き出しながら上昇するミサイルや、日本の上空を通過する形の軌道が表示されたモニターを見つめるキム・ジョンウン総書記の写真が掲載されています。
一連の発射は、アメリカが原子力空母を日本海に展開し日本や韓国と実施した共同訓練に合わせて、先月25日から9日まで行われた朝鮮人民軍の戦術核運用部隊の訓練の一環だったとしています。

キム総書記は「敵の軍事的な動きを鋭く注視し、必要な場合はすべての軍事的な対応措置を強力に講じていく」と述べ、日米韓3か国への対決姿勢を強調しました。

7回にわたる弾道ミサイル発射 それぞれの目的は

北朝鮮はメディアを通じ、7回にわたる弾道ミサイルの発射について、朝鮮人民軍の戦術核運用部隊の訓練だったとし目的などの詳細を伝えています。

▽先月25日に発射された短距離弾道ミサイルについては「貯水池の水中発射場での戦術核弾頭の搭載を想定した弾道ミサイルの発射訓練だった」としたうえで、貯水池にミサイルの発射場を整備していく方針を示唆しています。

また「日本海に設定された標的の上空を飛行した」として、当時、朝鮮半島に展開していたアメリカの原子力空母などへの攻撃を想定した可能性を示唆し、設定した高度で正確に弾頭が起爆することが確認されたとしています。

労働新聞の紙面には、5月にも発射したとされる小型のSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルの可能性があるミサイルが水中から発射される写真が掲載されています。

▽先月28日に発射された短距離弾道ミサイルについては「南の作戦地帯にある飛行場を無力化させる目的だ」として韓国への攻撃を想定していたとしています。

▽翌29日と今月1日に発射された短距離弾道ミサイルについては「複数の戦術弾道ミサイル」の発射実験だったと明らかにし「空中爆発と散布弾をあわせて標的に命中させた」として、クラスター爆弾などでの攻撃能力を誇示した可能性が指摘されています。

▽今月4日に日本の上空を通過させる形で発射した弾道ミサイルについて「新型の地対地中距離弾道ミサイルで日本列島を横切り、4500キロ先の太平洋上に設定された目標水域を打撃した」と明らかにしました。

また、朝鮮労働党中央軍事委員会が「朝鮮半島の不安定な情勢に対処し、より強力で明確な警告を敵に送る」との決定を下したとしていて、日米韓3か国をけん制する目的だったと強調しています。

▽今月6日に発射された短距離弾道ミサイルについては「敵の重要軍事指揮施設への攻撃を想定した『超大型ロケット砲』と『戦術弾道ミサイル』による訓練」だとしているほか、
▽9日の発射は「敵の主要な港への攻撃を想定した『超大型ロケット砲』による訓練だ」としていて、いずれも明け方に軍事施設などを攻撃することを想定した訓練だったとしています。

「戦闘機150機余で大規模訓練」米をけん制

10日付けの北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、キム・ジョンウン総書記の立ち会いのもと、10月6日と8日に「朝鮮人民軍の前線長距離砲兵区分隊と空軍飛行隊による訓練が行われた」と伝えました。

6日の訓練には、「中距離空対地誘導爆弾と巡航ミサイル、それに爆撃機」が投入され、敵の軍事基地を想定した島を目標にした攻撃を行ったとしています。

また、8日には日本海にアメリカ軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」が、再び展開したことを受けて「史上初めて150機あまりの戦闘機を出撃させた大規模航空攻撃総合訓練を行った」としてかつてない規模での訓練だったとアメリカなどをけん制しています。

訓練では「対象物に応じた空襲の方法などが再確認され、新型空中兵器システムの発射実験を通じて信頼性を検証した」として、新型兵器を投入した訓練だったとしています。

また、夜間には「敵の作戦飛行場への攻撃を想定した攻撃訓練を行った」ということです。労働新聞の紙面には、目標に対して、▼ロケット弾などが着弾したり、▼戦闘機などが編隊を組んで飛行して空爆したりする様子を見るキム総書記の写真が掲載されています。訓練についてキム総書記は「周辺の軍事情勢の悪化を鑑みると、より迅速で徹底した戦争の準備態勢と軍事的な対応能力の強化が求められている」と強調しました。

岸田首相「断じて容認できない」

岸田総理大臣は、訪問先の鹿児島県霧島市で「北朝鮮の発表の中で、さまざまな主張が出されているようだが、こうした挑発行動は、関連する国連安保理決議に明らかに違反するものであり、断じて容認することはできない」と述べました。

その上で「引き続き、警戒監視や情報収集に全力をあげるとともに、国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化に向け、日韓、日米韓、さらにはG7をはじめ、さまざまな枠組みを通じて国際社会と連携していかなければならない。国民の命や暮らし、安心、安全を守るために働きかけを続けていきたい」と述べました。