「クリミア大橋」で爆発 一部崩落 ロシア軍の補給活動に影響か

ロシアが8年前、一方的に併合したウクライナ南部のクリミアと、ロシア南部を結ぶ唯一の橋で8日、爆発とともに大きな火災が起き、橋の一部が崩落しました。

爆発が起きたのは、ロシアによるクリミア支配の象徴ともされてきた全長19キロの「クリミア大橋」です。

ロシアの治安機関などでつくる「国家反テロ委員会」は「橋の自動車道路でトラックが爆発し近くを走行していた列車が運搬していた燃料タンクに引火した」と発表し、ロシアで重大事件を扱う連邦捜査委員会は、現場近くで3人の死亡が確認されたとしています。

クリミア大橋は、ロシアにとってクリミアに物資を運ぶ戦略的に重要な補給路で橋の通行が難しくなれば、クリミアに駐留するロシア軍の活動などに影響が出るとみられます。
プーチン大統領はミシュスチン首相に対し、政府委員会を設置して原因究明を急ぐよう指示し、その後、クリミアとロシアを結ぶ電力やガスなどインフラ設備のセキュリティーを強化するため、ロシアの治安機関FSB=連邦保安庁に権限を与えたことを明らかにしました。

一方、ウクライナ政府は直接の関与には言及していません。

火災のあと、ロシア側は橋の道路や鉄道について通行などが一部再開したと発表したほか、ロシア国防省もウクライナ南部に展開するロシア軍の補給は陸路や海路を通じて行われているとしていて、影響は限定的だと示すねらいもあるとみられます。
ロシア側は、プーチン大統領の最側近の1人が今月、クリミアで行った会議で「破壊工作やテロ行為の脅威が高まっている」と主張し警戒を強めていて、プーチン政権の今後の出方が焦点となります。

また、ロシア国防省は8日、軍事侵攻の総司令官に新たに陸軍出身のスロビキン氏が任命されたと発表し、ウクライナ軍が東部や南部などで反転攻勢を強める中、戦況の立て直しを急ぎたい考えとみられます。

ウクライナ軍事専門家「事故ではなく攻撃だ」

クリミア大橋で爆発が起きたことについて、ウクライナの軍事専門家オレクサンドル・ムシエンコ氏は8日、NHKのオンライン取材に応じ「事故ではなく意図を持った攻撃だ」と指摘しました。

そのうえで「数週間のうちにウクライナ側によるものだとわかるだろう」と述べ、爆発はウクライナ側による攻撃の可能性が高いとの認識を示しました。

さらにムシエンコ氏は「橋はロシア側からクリミア半島への主要な補給路であり、意味合いは極めて大きい。今後、ロシア側の動きはにぶるだろう」と述べ、ロシア側の戦術に大きな影響が出ると分析しています。

市民「ウクライナにとってはいいニュース」

ウクライナの首都キーウでは、戦況が有利になるのではないかといった声が聞かれました。

このうち物流関係の会社に勤める26歳の男性は「私たちウクライナ人は皆この瞬間を待っていたと思う。これはロシアに勝つための大きな一歩だ」と話していました。

また、66歳の女性は「この橋を使ってたくさんの武器がクリミアにいるロシア軍に供給されてきた。これで武器の供給が困難になるので、ウクライナにとってはいいニュースだ」と話していました。

さらに、24歳の女性は「最初にこのニュースを知ったときは、喜びさえ感じた。ロシアを恐れる必要はなく、私たちはロシアから奪われた土地を取り戻し勝たなければならない」と話していました。