【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(10月9日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる9日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ウクライナの郵便局 来月から橋崩落の記念切手を販売

ロシアが8年前に一方的に併合したウクライナ南部のクリミアと、ロシアをつなぐ橋の一部が爆発で崩落したことを受けて、ウクライナの郵便局は、来月から記念切手を販売すると発表しました。

切手は、1912年に氷山に衝突して沈没したイギリスの豪華客船を題材にした映画「タイタニック」のシーンをモチーフにしています。

郵便局は「客船が絶対に沈まないと言われていたように、ロシアも、この橋はロシアとクリミアの壊されない絆だといっていた。ロシアにとってのこの橋の重要性と、それが壊される意味も全世界はわかると思う」としています。

このほか、ロシア軍の戦車が壊れた橋から落ちる様子やロシアの道路標識が海に浮かぶ様子が描かれています。切手の販売の発表が崩落からわずかな時間で行われたことから、ウクライナ当局が崩落することを予測していたとの見方も出ています。

英国防省「ロシア軍兵力の維持に大きな影響を与える可能性高い」

イギリス国防省は9日、ロシアにとってこの橋はクリミアなどに物資を運ぶ戦略的に重要な補給路だとし、「通行が再開されたことはほぼ確実だが、供給量は大幅に低下する」などと指摘し、ロシア軍の兵力の維持に大きな影響を与える可能性が高いとの見方を示しています。

ロシア連邦捜査委 橋で起きた爆発の捜査進める

ロシアが一方的に併合したウクライナ南部のクリミアとロシアをつなぐ橋で起きた爆発についてロシア側は捜査を続けています。

ロシアで重大事件を扱う連邦捜査委員会は、トラックの所有者を特定し、走行ルートや自宅の捜査を進めるとともに9日は、ダイバーが現場付近を潜って損傷の状況を調べるということです。

一方、ロシアの独立系のネットメディア「メドゥーザ」は8日、プーチン政権が損傷が深刻だと受け止められないようにロシアの国営メディアに対して「破壊されたのではなく、部分的に損傷した」と伝えるよう助言したと報じました。

プーチン政権は戦況で劣勢となる中、クリミア支配の象徴としてきた橋の爆発に神経をとがらせているものとみられ、今後の出方が焦点となっています。

ウクライナ保安庁 橋の爆発について詩的にコメント

一部のメディアで関与が指摘されているウクライナ保安庁は8日、今回の爆発についてツイッターに投稿しました。

この中では、「夜明けだ。橋が美しく燃えている。きれいな鳴き声の鳥たちがクリミアの方角へ向かって飛び、そこで私たちと出会った」と、朝焼けを背景に現場の様子をとらえた写真とともに記しています。

そのうえで、「きょうは『コブザール』のことばを少しだけ言いかえる絶好の機会となった」と書き込み、ウクライナの著名な詩人タラス・シェフチェンコの詩集「コブザール」を引用したとしています。

今回の爆発について、ウクライナ政府は関与を認めていませんが、ウクライナ保安庁としては、ロシアへの抵抗の象徴ともされる詩人の作品と重ねあわせることで、みずからの関与を国民に暗に示したのではないかという見方も出ています。

橋の爆発「ウクライナの情報機関が計画」米紙が伝える

アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは、8日、ウクライナ南部のクリミアとロシアをつなぐ橋で起きた爆発について、ウクライナの政府高官の話として「ウクライナの情報機関が、橋の上を走っていたトラックに積まれた爆弾を使って計画したものだ」と伝えています。

また、ウクライナの有力メディアの1つも8日、情報筋の話として「爆発はウクライナの情報機関が行った特別作戦だ」と伝えています。

ザポリージャ州でロシア軍による攻撃 12人死亡

ウクライナ南東部ザポリージャ州の州知事は9日、SNSへの投稿で「市中心部でロシア軍による攻撃があり、5棟の民間の住宅が破壊されたほか、9階建ての集合住宅の一部が損壊した。これまでに12人が死亡し、49人がけがをして病院で治療を受けている」と明らかにしました。

州知事が投稿した画像では、攻撃を受けたとみられる集合住宅が大きく壊れてがれきが散乱しているほか、避難する住民の姿も確認できます。

ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、SNSへの投稿で「またザポリージャで平和な人々に対する無慈悲な攻撃が行われた。絶対的な悪、テロリストである彼らに必ず責任を取らせる」と述べ、ロシアを強く非難しています。

ザポリージャ州では、ロシア軍による攻撃が相次いでいて、先月30日には市民が乗った車の列が攻撃を受け、地元当局によりますと、30人が死亡、88人がけがをしたほか、今月6日にも市中心部にある複数の集合住宅が攻撃を受け、18人が死亡しています。

キーウには橋の爆発をモチーフにした大きな絵

ウクライナの首都キーウ中心部には橋の爆発をモチーフにした大きな絵が掲げられていて、市民が笑顔で記念撮影をする姿が見られました。

20代の男性は、「私たちウクライナ人は、皆この瞬間を待っていたと思う。 これはロシアに勝つための大きな一歩だ」と話していました。

プーチン大統領 ミシュスチン首相に原因究明急ぐよう指示

ロシアが8年前、一方的に併合したウクライナ南部のクリミアと、ロシア南部を結ぶ唯一の橋で8日、爆発とともに大きな火災が起き、橋の一部が崩落したことについて、ロシアの治安機関などでつくる「国家反テロ委員会」は、「橋の自動車道路でトラックが爆発し、近くを走行していた列車が運搬していた燃料タンクに引火した」と発表し、ロシアで重大事件を扱う連邦捜査委員会は、現場近くで3人の死亡が確認されたとしています。

プーチン大統領は、ミシュスチン首相に対し、政府委員会を設置して原因究明を急ぐよう指示していて、プーチン政権の今後の出方が焦点となります。

ゼレンスキー大統領 橋の爆発に言及せず「未来は晴れている」

ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、SNSに投稿した動画で、南部クリミアとロシアをつなぐ橋でおきた爆発と火災について直接的には言及しなかったものの「われわれの未来は晴れている。それはウクライナ全土、特にクリミアで占領者のいない未来だ」と述べ、改めてクリミアの奪還に意欲を示しました。

ザポリージャ原発 砲撃で再び外部電源失う

IAEA=国際原子力機関が発表した声明によりますと、ザポリージャ原発につながる送電線が砲撃によって損傷し、8日、外部からの電力供給が失われたということです。

これを受け原発では非常用の発電機を稼働させ、冷却機能を維持しているほか、損傷した送電線の復旧作業も始まっているということで、現時点で安全に問題はないということです。
現在、ロシア軍が占拠しているザポリージャ原発は、これまでも相次ぐ砲撃によって一時的に外部電源を失うなど安全性への懸念が広がっています。

IAEAのグロッシ事務局長は声明で、近くロシアを訪問し、原発の周辺を安全な区域に設定するための協議を前進させたい意向を示しました。

ウクライナ軍事専門家「事故ではなく攻撃」

クリミア半島とロシア側をつなぐ橋で爆発が起きたことについて、ウクライナの軍事専門家オレクサンドル・ムシエンコ氏は8日、NHKのオンライン取材に応じ「事故ではなく意図を持った攻撃だ」と指摘しました。

そのうえで「数週間のうちにウクライナ側によるものだとわかるだろう」と述べ、爆発はウクライナ側による攻撃の可能性が高いとの認識を示しました。

さらにムシエンコ氏は「橋はロシア側からクリミア半島への主要な補給路であり意味合いは極めて大きい。今後、ロシア側の動きはにぶるだろう」と述べ、ロシア側の戦術に大きな影響が出ると分析しています。

クリミア大橋の爆発 ロシア軍の補給活動に影響か

ロシアが8年前に一方的に併合したウクライナ南部のクリミアとロシアをつなぐクリミア大橋で8日、爆発とともに火災が起き、橋の一部が崩落しました。

クリミア大橋は、ロシアにとってクリミアに物資を運ぶ戦略的に重要な補給路で橋の通行が難しくなれば、クリミアに駐留するロシア軍の活動などに影響が出るとみられます。
火災のあと、ロシア側は橋の道路や鉄道について通行などが一部再開したと発表しました。影響は限定的だと示すねらいもあるとみられます。

ロシア国防省 新たな総司令官を発表

ロシア国防省は8日、軍事侵攻の総司令官に新たに陸軍出身のスロビキン氏が任命されたと発表しました。

ウクライナ軍が東部や南部などで反転攻勢を強める中、戦況の立て直しを急ぎたい考えとみられます。