新型コロナの水際対策の緩和を受けて9日、徳島県美馬市にフランスから団体客が訪れ、江戸時代などの建物が残る町並みなどを見てまわりました。
美馬市を訪れたのはフランスからのツアー客17人で、市や観光団体の担当者などが、フランスの国旗を持って出迎えました。
ツアー客たちは、江戸時代や明治時代の建物が残る「うだつの町並み」を見学し、藍染めの原料の流通拠点として発展したことなどの説明を受けながら、町並みを写真に収めていました。
ツアー客の1人は、「フランスとは違う日本の文化を知ることができました。コロナの影響で旅行がしにくかったので、とてもよかったです」と話していました。
ツアー客を受け入れている団体によりますと、コロナ禍の前までは、フランスやアメリカなどから年間およそ370人の観光客を受け入れていましたが、外国のツアー客を受け入れるのはおよそ2年半ぶりだということです。
団体の出尾宏二さんは、「ツアー客のみなさんの楽しそうな顔を見て、やっとこの日が来たとすごく嬉しく思っています。観光が今後盛り上がってくれればと思います」と話していました。

水際対策緩和や「全国旅行支援」需要回復に期待 課題も…
11日からの水際対策の緩和や政府の新たな観光需要の喚起策「全国旅行支援」のスタートで、コロナ禍で大きな影響を受けた観光業界では需要の回復が期待されます。
ただ、新たに従業員を採用したくても人手の確保が難しいとして頭を悩ましている宿泊施設もあります。
徳島 美馬市では約2年半ぶりの外国人観光客

アメリカ航空大手 利用客の増加に期待

11日から入国者数の上限が撤廃されることを受けて、アメリカの大手航空会社は利用客が増加することに期待を寄せています。
アメリカの航空大手ユナイテッド航空の羽田空港のオフィスです。
11日からはアメリカからの便の搭乗者数が増加する見込みです。
アメリカの航空大手ユナイテッド航空の羽田空港のオフィスです。
11日からはアメリカからの便の搭乗者数が増加する見込みです。

ミーティングでは、海外からの観光客が羽田空港から大阪や北海道など観光地に向かうケースが増えることからスムーズに乗り継ぎができるよう対応するスタッフの態勢を確認していました。
また、小さな子ども連れや車いすが必要な利用客への対応に不備がないよう責任者が空港スタッフに呼びかけていました。
この航空会社は今後、利用客の増加が見込まれるとして来月から東京を発着する便の座席数をおよそ13%増やすことにしています。
具体的には、成田とヒューストンを結ぶ便をこれまでの週4便から毎日の運航に切り替えるほか、ニューヨークやロサンゼルスなどアメリカの主要都市を結ぶ便では機材を大型のものに変更するということです。
日本政府観光局によりますと、新型コロナの感染拡大前、2019年の1年間にアメリカから日本を訪れた外国人旅行者は中国、韓国、台湾などに続き、第5位で172万人余りとなっています。
また、小さな子ども連れや車いすが必要な利用客への対応に不備がないよう責任者が空港スタッフに呼びかけていました。
この航空会社は今後、利用客の増加が見込まれるとして来月から東京を発着する便の座席数をおよそ13%増やすことにしています。
具体的には、成田とヒューストンを結ぶ便をこれまでの週4便から毎日の運航に切り替えるほか、ニューヨークやロサンゼルスなどアメリカの主要都市を結ぶ便では機材を大型のものに変更するということです。
日本政府観光局によりますと、新型コロナの感染拡大前、2019年の1年間にアメリカから日本を訪れた外国人旅行者は中国、韓国、台湾などに続き、第5位で172万人余りとなっています。
航空会社「ほかの地域と同様に需要回復を期待」

ユナイテッド航空で、日本を含む世界全体の営業を統括しているドリーン・バース上級副社長はNHKのインタビューに対して、「シンガポールやオーストラリアなど、規制が緩和された地域では需要が急速に回復しているが、中国本土と香港を除いた日本を含むアジア太平洋地域全体で見ると、新型コロナの感染が拡大する前の2019年と比較しておよそ6割にとどまっている。ユナイテッド航空としては、日本を非常に重要視していて、ほかの地域と同じように需要が回復することを期待している」と話していました。
栃木 鬼怒川温泉の旅館では

栃木県の鬼怒川温泉にある旅館では、先月下旬に水際対策の緩和が発表されたあと、外国人観光客のツアーに関する問い合わせが連日のように入っているということです。

先日も、旅行代理店から「紅葉シーズンの11月に台湾から訪れる延べ240人分のツアー客の予約ができるか」という連絡があったということで、観光客の増加に期待感が高まっています。
ただ、この旅館が今、頭を悩ましているのが人手の確保です。
長引くコロナ禍で旅行や宿泊業界全体の売り上げが低迷する中、募集をかけても人手が集まりにくくなっているといいます。
この旅館でも来年春に新卒で入社する社員を10人ほど採用する計画ですが、経済活動が再開し、さまざまな業種が採用を増やすなかで、去年やおととし以上に学生からの応募が減りました。
さらに、パートの従業員も新型コロナの感染拡大前より採用が難しくなっているということです。
ただ、この旅館が今、頭を悩ましているのが人手の確保です。
長引くコロナ禍で旅行や宿泊業界全体の売り上げが低迷する中、募集をかけても人手が集まりにくくなっているといいます。
この旅館でも来年春に新卒で入社する社員を10人ほど採用する計画ですが、経済活動が再開し、さまざまな業種が採用を増やすなかで、去年やおととし以上に学生からの応募が減りました。
さらに、パートの従業員も新型コロナの感染拡大前より採用が難しくなっているということです。

このため、この旅館では人手不足に対応できるようサービスの質を落とさずに業務を効率化する方法を模索しています。
すべての客室に、タブレット端末を置きました。
旅館の案内やよく質問を受ける項目などが簡単にわかるように工夫したほか、大浴場やフロントの混雑具合を分かるようにすることで宿泊客の利用を分散できるようにしました。
こうした工夫で従業員の負担を軽減しようとしています。
すべての客室に、タブレット端末を置きました。
旅館の案内やよく質問を受ける項目などが簡単にわかるように工夫したほか、大浴場やフロントの混雑具合を分かるようにすることで宿泊客の利用を分散できるようにしました。
こうした工夫で従業員の負担を軽減しようとしています。

「鬼怒川グランドホテル 夢の季」の波木恵美社長は「旅館は情緒が売りだったり、人と人とのふれあいが大切だったりするので、そこは絶対に人を省けない。しかし、そのほかで少しでも省力化できる所はないかを考えて、人手不足に対応しなければならない」と話していました。
人力車も…人手不足の懸念広がる

観光需要の回復が期待される一方、人手が足りないという懸念はさまざまな業種に広がっています。
東京・浅草にある会社は、新型コロナの感染拡大前から人力車による観光案内や、茶道や書道など日本文化の体験サービスを提供し、観光客の人気を集めていました。
しかし、コロナ禍で会社が一時、休業を余儀なくされたこともあり離職が相次ぎ▽人力車を引く担当の従業員が30人から18人に、▽茶道や書道などの日本文化を教える担当の従業員も5人から3人に減りました。
会社は観光需要に回復の兆しが見え始めたことし春ごろから本格的に採用を再開したものの、思うように応募が集まらない上、
採用した従業員の研修も
▽人力車の場合で少なくとも1か月、
▽茶道など日本文化を教える従業員は1年以上必要だということで、すぐに人手を増やせる状況ではないということです。
東京・浅草にある会社は、新型コロナの感染拡大前から人力車による観光案内や、茶道や書道など日本文化の体験サービスを提供し、観光客の人気を集めていました。
しかし、コロナ禍で会社が一時、休業を余儀なくされたこともあり離職が相次ぎ▽人力車を引く担当の従業員が30人から18人に、▽茶道や書道などの日本文化を教える担当の従業員も5人から3人に減りました。
会社は観光需要に回復の兆しが見え始めたことし春ごろから本格的に採用を再開したものの、思うように応募が集まらない上、
採用した従業員の研修も
▽人力車の場合で少なくとも1か月、
▽茶道など日本文化を教える従業員は1年以上必要だということで、すぐに人手を増やせる状況ではないということです。

「時代屋」の藤原英則代表は「コロナ禍のこの2年間は本当に長く先が全く見えなかったが、ようやく外国人観光客も来られるようになりほっとしている。観光業は各社が今、一斉に求人を出していて採用競争が厳しく焦りも感じている。一日も早くコロナ前の体制に人員を戻したいがサービスの質は落とせないので、焦る気持ちを抑えながら少しずつ採用を進めたい」と話していました。
旅館やホテルの人手不足 民間の調査でも明らかに
旅館やホテルの人手不足は、民間の調査でも明らかになっています。
民間の信用調査会社「帝国データバンク」は毎月、およそ50の業種の全国およそ2万6000社を対象に人手に関する調査を行っています。
最新の8月時点での調査結果によりますと、業種別では「旅館・ホテル」業界で「正社員が不足している」と答えた企業の割合が72.8%にのぼり、調査した業種の中で最も高くなりました。
去年の同じ月よりも45.5ポイント高くなり、コロナ前の2019年6月に次いで過去2番目に高い水準となっています。
また、非正規の社員についても「旅館・ホテル」業界では67.9%が「不足している」と答えています。
こうした状況の背景には、3年ぶりの行動制限のない夏休みを迎え、繁忙感が一気に高まったことなどがあると見られます。
観光庁によりますと、国内のホテルや旅館などの客室の利用割合を示す「稼働率」は、ことし8月の速報値で、おととし3月以降で初めて50%を超えました。
今後、観光需要のさらなる回復が見込まれるなか人手不足への対応など観光地の受け入れ体制の整備が課題となります。
民間の信用調査会社「帝国データバンク」は毎月、およそ50の業種の全国およそ2万6000社を対象に人手に関する調査を行っています。
最新の8月時点での調査結果によりますと、業種別では「旅館・ホテル」業界で「正社員が不足している」と答えた企業の割合が72.8%にのぼり、調査した業種の中で最も高くなりました。
去年の同じ月よりも45.5ポイント高くなり、コロナ前の2019年6月に次いで過去2番目に高い水準となっています。
また、非正規の社員についても「旅館・ホテル」業界では67.9%が「不足している」と答えています。
こうした状況の背景には、3年ぶりの行動制限のない夏休みを迎え、繁忙感が一気に高まったことなどがあると見られます。
観光庁によりますと、国内のホテルや旅館などの客室の利用割合を示す「稼働率」は、ことし8月の速報値で、おととし3月以降で初めて50%を超えました。
今後、観光需要のさらなる回復が見込まれるなか人手不足への対応など観光地の受け入れ体制の整備が課題となります。