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AIが絵を描く? 進化する画像生成AIの最前線

ことし8月、SNSにアップされたある漫画。近未来的な世界観の絵とストーリーのおもしろさで話題を集め、合わせて10万を超えるリツイートといいねがつくなど大きな反響を呼びました。

この漫画の1コマ1コマ、じつは、全部AIが描いたものなんです。

AIがクリエーターの表現の幅を広げると歓迎する声もある一方、新たな課題も生まれています。
(おはよう日本 池田佳恋、ネットワーク報道部 柳澤あゆみ)

AIで桃太郎を描いてみた

この漫画を作ったのは、作家・漫画原作者として活動するRootportさんです。
作家・漫画原作者 Rootportさん
「私自身、絵心はゼロなので、それまでは漫画なんて描けないと思っていました」
サイバーパンクのテイストと、昔話として親しまれている桃太郎を組み合わせたら斬新な物語になるのではないかと考え、試しに画像生成AIで絵を出力してみることにしました。
「ピンクの髪、アジアの男の子、サイバーパンク」などのキーワードを入れて画像を作らせてみたところ。
生成された絵に目を奪われたといいます。
この男の子(のちの桃太郎)の顔を見た瞬間、脳内でストーリーが一気に組み上がってきました。
Rootportさん
「彼の顔を見て、ぼんやりと頭の中にあったサイバーパンクと桃太郎の組み合わせがおもしろいかな?というアイデアが、1本のストーリーとしてわっと立ち上がってきた感じですね。想像力が刺激されました」
早速、ツイッターで漫画の更新を始めましたが、画像生成AIからイメージどおりの絵を引き出すことは簡単ではありませんでした。

丸1日かけ、100枚以上の絵を描かせたこともあるといいます。
AIに繰り返し描かせた絵
Rootportさん
「人間の描く絵に比べたら、AIの絵というのは全然、実力が及んでないんですよね。最初からねらった絵が出せるとは限らないので、AIが描いてくれたものの中からいいものを選んで、それに合わせて話をちょっとずつ調整していくことが必要になってきます」
手間はかかるものの、AIが想像を超える絵を描いてくれることもあり、ストーリーを調整して1本の作品を作り上げました。

クリエーターとして新たな表現手法を手に入れたと感じると同時に、画像生成AIに大きな可能性も感じています。
Rootportさん
「AIの絵にはAIの持ち味があるので、新しいAI漫画であるとかAI映画という、新しいジャンルが生まれるのではないかと想像しています」
「私がすぐには思いつかないような使い方をして、新しい自己表現をしてくれるアーティストがあらわれてくれるといいなと思いますし、新しい使い方が、この先、発展していくんじゃないかなと思います」

AIがなぜ、絵を描けるの?

そもそも、画像生成AIとは何なのか。

自分がイメージする描きたい絵に関するキーワードを打ち込むと、そのイメージに近い絵や画像を、自動的に生成してくれるAIです。
◎画像生成AIの使い方
1.どんな絵を描いてほしいか、キーワードを入力
2.AIが生成した絵を見て、キーワードを追加するなどして、自分のイメージに近い絵の生成を目指す
所要時間はキーワードを入力してから、最短で10秒ほど。
キーワードのイメージに近い画像が生成されます。

では、なぜ、AIが、イメージに近い絵を描くことができるのか。
画像生成AIは、インターネット上にある膨大な数の絵や写真を学習し、例えば人間の子どもが絵の描き方を学ぶように、絵を描くとはどういうことかを理解していきます。

そうして学習したAIが、人間が入力したキーワードに沿ったオリジナルの絵を描き出しているのです。

“カンブリア紀のようだ”

画像生成AIはことしの夏ごろから世界中でさまざまなサービスが相次いで公開され、大きな注目を集めています。

AI研究者の清水亮さんは、画像生成AIに大きな可能性があるといち早く注目し、世界中で日々、開発と改良が進む現在の活発な状況を、地球上に生物が爆発的に誕生した『カンブリア紀』にたとえています。
清水亮さん
「業界だけではなく、一般の人、絵が描けない人にもハイクオリティなイラストが作れるとなると、今まで“万能だけど何ができるかわからなかったAI”の可能性をより豊かに想像できるようになります。画像生成AIが進化したおかげで、AIを身近に感じるきっかけになるのではないでしょうか。
カンブリア紀のように、多様性のある、AIを媒介にした共進化が起きています」
画像生成AIは、すでにさまざまな業界から注目されています。

例えば、ゲームや広告などのデザイン。
企業がプレゼンテーションで使う画像つきの資料。

こうしたものを画像生成AIを使って簡単に作成できるようになれば、社会へ大きな影響を及ぼしうると清水さんは考えています。
清水さん
「画像生成AIが人間に与えるいちばんの恩恵は、その想像力です。これが普及すると、表現者も増えます。AIは人間が想像できないようなことまで形にできます。
絵やマンガ、映画など全く違うものを作ることにもつながるツールで、これからはAIと一緒に、自分は何がほしいか問いかけながら探していく時代になってくると思います」

AIによるフェイク画像も

誰もが手軽にプロのイラストレーターや写真家が手がけたかのような画像を入手できるようになった便利さの反面、新たな問題も出てきています。

9月に静岡を襲った記録的な豪雨。

その際に画像生成AIで作成された水害のフェイク画像がネット上で拡散しました。

画像では一面茶色く濁った水で覆われた町のようすが上空からのアングルで捉えられていますが、これは実際に撮影したものではなく、画像生成AIで作成されたものでした。
SNSに投稿した人はこの画像を画像生成AIで作成したと認めました。

画像の作成にあたって使ったキーワードは「flood damage」と「shizuoka」の2つだったとSNS上で説明しています。

ぱっと見ただけではフェイクと見抜けない画像。

今回、フェイクとは知らずに拡散してしまった人が相次ぎ、画像生成AIの持つ危険性が浮き彫りになりました。

公開1日でサービス停止も

また、SNS上では、画像生成AIが際限なく学習を深めてしまうことへの懸念やクリエーターから仕事を奪ってしまうのではという不安の声も上がっています。
「画像生成AIの学習を拒否できる技術や取り決めも必要」
「イラスト生成のAI…あそこまでの絵を作れるようになったらさすがにまずい。この勢いで成長を続けたら本当にイラストレーターが失業しちゃう…」
こうした懸念や不安を受けて、ある画像生成AIを使ったサービスが公開からわずか1日で停止となった騒動も起きています。

このサービスmimicは、クリエイターが自分の作品を15枚から100枚ほどアップロードすると、AIが画風を学習して、ほぼ無限に新たなイラストを生み出すサービスです。
8月末にサービスを開始したところ、他人が著作権を持つ作品を自分のものと偽ってアップロードする人が出てくるのではないかと懸念が相次ぎました。

会社では規約で禁止しているものの、不正利用を防ぐ仕組みが不十分であると認め、公開からわずか1日でサービスを停止しました。

会社では利用者の身元確認を徹底するなど対策を講じたうえで今月にもサービスを再開したいとしています。
mimicを提供する会社
「当初は不正利用がないか手作業でチェックする予定だったのですが、話題となって利用者が急増したことで対応できる範囲を超えてしまいました。改良を加え、事前審査制度などを導入し、盗作などの不正利用を防ぐ対策を強化しています。
クリエイターさんに安心して使っていただくためにしっかりと信頼を得たサービスにならなければいけないなと思っております」

著作権って生まれるの?

画像生成AIと著作権をめぐる問題。
この分野に詳しい柿沼太一弁護士に聞きました。
柿沼太一 弁護士
Q:AIがネット上の絵や画像を学習することは法律違反にならないのか?
A:
著作権法においては、AIが、絵や画像などの著作物を著作者の許可なく学習するのは問題ないとされています。
ただ、AIが生成した画像が、仮に、既存の絵や画像とすごく似たものだった場合、著作権侵害にあたる可能性はあります。
この点については、気を付ける必要があります。

Q:AIが出力したものに著作権は発生するのか?
A:
人間が加工するなどの手を加えなければ発生しません。
ただ、加工を加えた場合や、イメージに近づけるために具体的な指示を繰り返して画像を生成した場合は、加工や指示をした人に著作権が生じると考えられます。
いわゆる「著作権フリー素材」と同じような感覚で捉え、ほかの人がAIで生成した画像を使えると考えている人もいるかもしれませんが、著作権がある前提できちんと許可を得るなど適切に対応する方が安全です。
私たちの生活に大きな変革をもたらす可能性を秘めた画像生成AI。

新しい技術なだけに、その使い方や権利の問題についても議論が巻き起こっていますが、使い方しだいではさまざまな可能性があるように感じました。

この先、画像生成AIはどんな未来図を“描いて”いくのか。

目が離せません。

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