「長周期地震動」に緊急地震速報 来年2月から発表 気象庁

地震の際に超高層ビルをゆっくりと揺らす「長周期地震動」について、気象庁は、来年2月から緊急地震速報の発表の対象に加えることになりました。非常に大きな揺れが予測された地域に速報を発表し、ビルの高層階などへの警戒を呼びかけることにしています。

長周期地震動は、超高層ビルなどを大きくゆっくりと揺らす周期の長い揺れで、2011年の東北沖の巨大地震では震源から遠く離れた東京や大阪の超高層ビルも大きく揺れました。

こうした長周期地震動について気象庁は、来年2月1日から緊急地震速報の発表の対象に加えることになりました。

発表の対象となるのは、気象庁の定める長周期地震動の4段階の揺れの大きさのうち、上から2番目で、立っているのが困難だとされる「階級3」以上の揺れが予測される地域です。

従来の震度5弱以上の揺れが予測された場合に加えて、こうした長周期地震動が予測される地域にも緊急地震速報が発表され、ビルの高層階などに警戒が呼びかけられるようになります。

一方、長周期地震動では震源から遠く離れた地域でも大きく揺れることがあり、一度、震源の近くの地域に速報が発表されたあと、長周期地震動が予測された別の地域に追加で発表されることもあるということです。

気象庁によりますと、2000年以降、「階級3」以上の長周期地震動を伴う地震は、東日本大震災の際の地震に加え、2004年の新潟県中越地震や2016年の熊本地震など合わせて33回にのぼります。

こうした中、超高層ビルが大都市を中心に増加し、長周期地震動の影響を受ける人が増えているとして、緊急地震速報の枠組みで警戒を呼びかけることを決めたということです。

気象庁は、来年2月の運用開始に向けて周知を進めていくことにしています。

ビルの上層階ほど揺れが大きい 長周期地震動とは?

「長周期地震動」は、大きな地震の際に発生し、震源から離れても揺れが衰えにくく、超高層ビルをゆっくりと大きく揺らすのが特徴です。

2011年の東日本大震災では、震源から遠く離れた東京や大阪の超高層ビルも大きく揺れて、揺れ幅は最大で2メートルに達しました。

エレベーターが止まったり壁や天井が崩れたりする被害が出たほか、家具やオフィス機器が転倒や移動するなど超高層ビルの屋内の危険性も明らかになりました。

国の想定では「南海トラフ巨大地震」でも長周期地震動が発生し、東京・名古屋・大阪の超高層ビルの揺れ幅は2メートルから3メートルに達して東日本大震災を上回ることもあるとしています。

ビルの上層階ほど揺れが大きく、固定していない家具が転倒したり、オフィス機器が移動したりして人がけがをするほか、エレベーターの停止や閉じ込めなどが起きるおそれがあると指摘されています。

国土交通省によりますと、高さ60メートルを超える超高層ビルは全国に数千棟あり、東京都内を中心に年々増加していて、高さ200メートルを超えるオフィスビルの建設も相次いで予定されています。

また、不動産調査会社「東京カンテイ」によりますと、2021年の時点で20階以上のタワーマンションが全国で1427棟にのぼり、このうち3割余りは東京に集中しているということです。

揺れの大きさに応じた4段階の「階級」とは?

気象庁は、長周期地震動の揺れの大きさに応じて、4段階に分けた「階級」を作っています。

【階級1「やや大きな揺れ」ほとんどの人が感じる】
最も小さい「階級1」は「やや大きな揺れ」で、室内にいるほとんどの人が感じ、ブラインドなどのつり下げたものが大きく揺れるとしています。9月末までの20年余りの間に249回発生しているということです。

【階級2「大きな揺れ」歩くのが難しい】
「階級2」は「大きな揺れ」で、室内では物につかまらないと歩くことが難しく、棚にある食器や本が落ちることがあるとしています。先月末までの20年余りの間に84回発生しているということです。

【階級3「非常に大きな揺れ」立っていることが困難】
「階級3」は「非常に大きな揺れ」で、立っていることが困難になるほかキャスター付きのオフィス機器などが大きく動き、不安定なものは倒れることがあるとしています。

緊急地震速報の対象となるこの揺れは、先月末までの20年余りの間に16回発生しているということです。最近では、2021年3月20日に起きた宮城県沖を震源とするマグニチュード6.9の地震で、宮城県涌谷町で「階級3」の揺れを観測しています。

【階級4「極めて大きな揺れ」東日本大震災でも】
「階級4」は、「極めて大きな揺れ」で、立っていることができず、固定していない家具の大半が移動し倒れるものもあるとしています。先月末までの20年余りの間に17回発生していて、2011年の東日本大震災の際の東京の揺れもこの階級に相当するということです。

気象庁「これまでどおり慌てずに身の安全を」

長周期地震動を緊急地震速報の発表の対象に加えるねらいなどについて、気象庁地震津波防災推進室の古謝植之調査官に聞きました。

Q 長周期地震動に関する情報の導入のねらいはどこにある?

A 長周期地震動は震源から離れたところまで大きな揺れが伝わる特徴があり、東日本大震災では、東北から離れた東京や大阪でも高層ビルで被害が出た。

しかし、現在の緊急地震速報では危険を伝えることができないため、長周期地震動の情報を基準に加えることにした。全国的に高層ビルが増加する傾向がみられているのでビルの利用者、管理者ともに情報を活用してもらいたい。

Q 長周期地震動が発生した場合の、室内にいる人の危険とは?

A 例えば、超高層ビルのオフィスでは、コピー機などの大型機器が大きく動いたり、書類を入れた棚が倒れてきたりしてけがをすることなどが考えられる。

タワーマンションなどの住宅では、固定されていない家具が大きく動くほか、場合にはよってはピアノなど重量のあるものも動くことも想定される。
細かい例でいうと、高いビルに設置されたプールにいると危険な場合も想定される。揺れが増幅されて「共振」すると、水が激しく揺れて中で泳いでいる人が危ないこともある。

商業施設やホテルにいる場合にも地震が発生することがあるため、ふだんは超高層ビルを使わない人も、ひと事と思わないでほしい。

Q タワーマンションに住む人や高層ビルのオフィスに勤める人は、情報をどう生かせばいい?

A まず、国内では、長周期地震動で超高層ビルが倒れた事例は確認されていないので、慌てて逃げ出さないでほしい。従来の緊急地震速報を受けての行動と、長周期地震動に備えた行動は今までと変わらないと考えているので、これまでどおり慌てずに身の安全を守ってほしい。

高いビルやマンションで過ごす人たちは、事前に安全な場所はどこか確認して、どう行動するのかを決めておくことが大切だ。また、家具やオフィス機器の固定など、日頃の備えも再確認しておいてもらいたい。

NHKも来年2月から運用開始

NHKは、この長周期地震動を追加した緊急地震速報を来年2月の運用開始から迅速に伝え、揺れへの警戒を呼びかけることにしています。