いま注目!お米の可能性

いま注目!お米の可能性
私たち日本人にいちばん身近な食材ともいえる「コメ」。その現状について、皆さんはどこまで知っていますか?

課題山積!? コメの現状は

中学入試ではこのような問題が出されています。
問題
内容の正しいものを2つ選んで答えなさい。

ア:一般家庭の食料品への支出額をみると今ではパンが米を上回っている。
イ:国内で米が余るようになったため平均的な米の価格は下がり続けている。
ウ:第二次大戦後からバブル景気の頃まで米の消費量は年々増加していた。
エ:アメリカやヨーロッパへの日本米の輸出量は年々増加傾向にある。

(慶應義塾普通部 2020年 社会 改題)
正解は、です。

国内では近年、家庭でのコメの支出金額がパンに逆転される一方で、海外ではコメの需要は増えているのが実情です。

日本人にいちばん身近な「お米」 さまざまな用途に!

国内で「米離れ」が課題になる中、自由な発想で「コメ」の可能性を広げていこうという動きも出始めています。
原料として小麦粉が使われることが多いパンや麺類、クレープなどの食品ですが、小麦粉の代わりにコメを製粉した「米粉」を使ったものが各地で次々と生産され、注目を集めています。

でも、なぜコメを活用する動きが広がっているのか?
その理由を教えてくれるのは、農業経済学が専門で、コメの新たな活用法などを研究している新潟大学農学部助教の伊藤亮司さんです。
背景には世界をゆるがすウクライナ情勢があるといいます。
伊藤さん
「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、小麦が世界的に暴騰している。ウクライナは世界有数の小麦の生産国で、そこが戦争になると収穫もできず、できた小麦を世界に運ぶこともできない。世界的に小麦の供給がひっ迫する中、コメは意外に価格が安く、国内で安定供給し続けられる主要作物なんです。このため代替品としての需要が高まり、価値を見直す動きが始まっている」
小麦の値上がりを背景に広がりを見せている米粉。
伊藤さんによると近年、加工技術が向上して、コメらしいもちもちした食感が出せるようになってきているといいます。
さらにほかにもメリットが。
伊藤さん
「小麦アレルギーの原因物質が、米粉だとつくられないのは大きなメリット。今まで小麦のパンが食べられなかった人がコメ由来のパンや麺など、さまざまなものが楽しめるようになる」

“米離れ”進む日本の厳しい現実

しかし、コメを取り巻く環境は厳しさを増しています。
1人あたりのコメの年間消費量は1962年度の118キロをピークに減少し、2020年度は50キロ余りとおよそ60年で半分以下に。
さらに家庭の食料品の支出金額でも、この10年でパンがコメを逆転しました。
食生活が多様化して「米離れ」が進み米農家の経営環境が厳しくなる中、伊藤さんは発想を転換していくことが必要だといいます。
伊藤さん
「消費を作っていくということがなによりも大事。日本人は白い米、粒で炊いたおいしいごはんに今までこだわりすぎていたが、その固定観念をいったん外して、今までコメが使われていなかった分野に挑戦して、とにかく何かやってみることが必要だ」

お米再活用で新規市場を開拓せよ!

こうした中、コメ業界では、新たな市場を開拓しようと、これまでにない商品の開発が進められています。
神戸の米卸会社が開発したのはコメからできた「チーズ」。
この“米チーズ”、材料はすべてコメで、もち米に酒かすを加え、コメから抽出したうまみ成分を混ぜることで、チーズのような味を引き出せるんだそうです。
一方、大阪のカレー店が開発したのは、コメを使った“クラフトビール”。
新型コロナで客足が減り、廃棄米が増えたことから地元の醸造所と協力してコメを使ったビールの開発を進めました。
炊きたてのお米のような甘さに加え、後味はビールらしい苦みも感じられるということです。

注目されるいまだからこそ挑戦へのサポートを

伊藤さんは農業の活性化のために、今後は現場で進むコメの活用に向けた、さまざまなチャレンジを後押ししていく仕組みが必要だといいます。
伊藤さん
「コメは日本人の体、健康、命を支え安定供給のできる大事な農産物だ。消費者の手元にさまざまなコメ製品を届けて楽しんでもらうことで、コメの世界がどんどん生き生きしていってほしい。そして、そんな挑戦をサポートする体制整備がいま求められている」
日本人の食文化でもある「お米」。
その可能性を新たな形で高めていければいいですね。
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