北朝鮮 ミサイル「火星12型」とは 射程距離 これまでの経緯は

4日午前、北朝鮮から発射された弾道ミサイルは、飛行距離がこれまでで最も長く、中距離弾道ミサイル級の「火星12型」と同型の可能性があるとみられています。

「火星12型」とはどのような弾道ミサイルなのか、まとめました。

射程距離は?

防衛省によりますと、中距離弾道ミサイル級の「火星12型」は液体燃料方式で、射程がおよそ5000キロに及びます。
北朝鮮の首都、ピョンヤンを中心に半径5000キロの円を描くと、アメリカ軍の拠点があるグアムに加え、インドの首都、ニューデリーもその中に含まれます。

一方、北朝鮮が開発を進めているICBM=大陸間弾道ミサイル級のミサイルの中には、搭載する弾頭の重量などによっては、1万キロや1万5000キロを超える射程となりえるものもあるとされています。

ピョンヤンから1万キロとなるとアメリカのロサンゼルスやサンフランシスコが含まれ、1万5000キロの円を描くとその中にアメリカ全土が入ります。

これまでに4発発射

ことしの防衛白書によりますと、北朝鮮は「火星12型」を、これまでに4発発射しています。

最初の発射は5年前の2017年5月14日で、朝鮮半島の東、およそ400キロの日本の排他的経済水域の外側に落下しました。およそ30分をかけて800キロほど飛び、高度は2000キロを大きく超えたとみられ、通常よりも発射の角度を上げて高く打ち上げる「ロフテッド軌道」だったと推定されています。通常の軌道で発射されたとすれば射程は最大でおよそ5000キロに達するとみられ、アメリカ軍の拠点があるグアムが射程に入ります。

2回目が2017年8月29日です。北海道の渡島半島や襟裳岬の上空を通過し、襟裳岬の東、およそ1180キロの太平洋上に落下したと推定されています。飛行距離はおよそ2700キロ、最高高度は襟裳岬付近の上空でおよそ550キロに達したとみられています。

3回目が2017年9月15日です。2回目と同様、渡島半島や襟裳岬の上空を通過し襟裳岬の東、およそ2200キロの太平洋上に落下したと推定されています。飛行距離は、8月の発射より1000キロ長いおよそ3700キロに達しました。また、最高高度も8月の発射を250キロ上回り、およそ800キロだったと推定されています。

そして4回目がことし1月30日です。北朝鮮内陸部から発射され、日本のEEZ=排他的経済水域の外側の日本海に落下したと推定されています。飛行時間は30分ほど、飛行距離はおよそ800キロで、最高高度はおよそ2000キロに達し、「ロフテッド軌道」で発射されたとみられています。また、このときのミサイルも、通常の軌道で発射されたとすれば、射程は最大でおよそ5000キロに達するとみられています。

中距離弾道ミサイルをめぐって北朝鮮は2016年に「ムスダン」と呼ぶミサイルの発射を繰り返しましたが、この年の10月に2回連続で発射に失敗していて、防衛省は、北朝鮮が「火星12型」の実用化を進めているとみられ、生産段階にある可能性も考えられるとしています。

5年前にはグアム島周辺に発射計画

北朝鮮は、アメリカのトランプ政権との間で緊張が高まった2017年8月に、グアム島周辺に向けて弾道ミサイルを発射する計画を検討していると発表していました。
この中で、北朝鮮軍で弾道ミサイルの運用を担う戦略軍は、アメリカ軍の戦略爆撃機が展開するグアム島周辺に向けて、中距離弾道ミサイルの「火星12型」4発を同時に発射することを検討していると明らかにしました。

また、日本についても言及し「日本の島根県、広島県、高知県の上空を通過し、3356.7キロの距離を1065秒間飛行したあと、グアム島の周辺30から40キロの海上に落ちるだろう」と飛行ルートを予告しました。

その3週間後、米韓合同軍事演習のさなかに、北朝鮮は「火星12型」1発を首都ピョンヤン郊外から北海道の上空を通過させる形で発射し、キム・ジョンウン(金正恩)総書記は「訓練は、敵の基地があるグアム島をけん制するための前奏曲だ。今後、太平洋を目標として弾道ミサイルの発射訓練を多く実施すべきだ」と発言していました。

これに対し、当時のアメリカのマティス国防長官は、グアム島を直撃すると予測した場合には迎撃する考えを示したうえで「もしアメリカをねらって発射すれば、一気に戦争に発展するだろう」と強くけん制していました。

専門家「今回の飛距離はグアムに届くと推定」

北朝鮮情勢に詳しい南山大学の平岩俊司教授は、今回、弾道ミサイルを発射した北朝鮮のねらいについて「韓国で5年ぶりの保守政権であるユン・ソンニョル(尹錫悦)政権ができ、米韓合同軍事演習、日米韓の共同訓練も行われ、3か国が結束を固めている中、政治的なメッセージとして発射したとみられる」と分析しています。

そのうえで「今回の飛距離はアメリカの基地があるグアムに届くと推定され、在韓米軍、在日米軍も視野に入れた、より体系的で緻密な体制を作るための訓練だとみられる」と話し、アメリカへのけん制をねらったとの見方を示しました。

また今後の北朝鮮の出方について「アメリカの中間選挙までは対話に応じず、国防力強化の方針にしたがって変則軌道の弾道ミサイルやSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルなど多種多様なミサイルを発射する可能性があるほか、核実験を実施するおそれもある」と指摘しました。