北朝鮮ミサイル“グアムまでの距離 念頭の発射か” 韓国専門家

韓国軍は、北朝鮮が4日朝、北部チャガン(慈江)道から東に向けて中距離弾道ミサイル1発を発射したと発表しました。
飛行距離がおよそ4500キロに達したことから、韓国では、アメリカ軍の基地があるグアムまでの距離を念頭に置いた発射だったとする見方が出ています。

韓国軍の合同参謀本部は、北朝鮮が4日午前7時23分ごろ、北部のチャガン道ムピョンリ(舞坪里)付近から東に向けて中距離弾道ミサイル1発を発射したと発表しました。

飛行距離はおよそ4500キロ、高度はおよそ970キロで、速度は音速の17倍に当たるマッハ17に達したということです。

これについて韓国の専門家からは、アメリカ軍のアジア太平洋地域の戦略拠点で、核兵器を搭載できる戦略爆撃機が展開するアンダーセン空軍基地があるグアムまでの距離を念頭に置いた発射だったとする見方が出ています。

今回の発射を受けて韓国政府は4日午前、緊急のNSC=国家安全保障会議を開き、北朝鮮の挑発を見過ごすことはできないとして、国際社会とともに制裁の強化を含めた対応を模索していく方針を確認しました。

また、この中でユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領は「北の核・ミサイルの挑発は、日米韓3か国を含む域内外の安全保障協力をさらに強化させるだけだ」と述べ、発射を繰り返す北朝鮮を強くけん制しました。

専門家「米へのけん制がねらいか」

北朝鮮情勢に詳しい南山大学の平岩俊司教授は、北朝鮮のねらいについて「韓国で5年ぶりの保守政権であるユン・ソンニョル政権ができ、米韓合同軍事演習、日米韓の共同訓練も行われ、3か国が結束を固めている中、政治的なメッセージとして発射したとみられる」と分析しています。

そのうえで「今回の飛距離は、アメリカの基地があるグアムに届くと推定され、在韓米軍、在日米軍も視野に入れた、より体系的で緻密な体制を作るための訓練だとみられる」と話し、アメリカへのけん制をねらったとの見方を示しました。

また、今後の北朝鮮の出方について「アメリカの中間選挙までは、対話に応じず、国防力強化の方針にしたがって、変則軌道の弾道ミサイルやSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルなど、多種多様なミサイルを発射する可能性があるほか、核実験を実施するおそれもある」と指摘しました。

北朝鮮 ミサイル発射前に国連で核開発を正当化

北朝鮮による弾道ミサイルの発射に先立つ日本時間の4日未明、アメリカ ニューヨークの国連総会では、軍縮を扱う委員会で北朝鮮の代表が、核・ミサイル開発を改めて正当化していました。

委員会では、アメリカやEU=ヨーロッパ連合の代表が、北朝鮮の核・ミサイル開発を安全保障理事会の決議違反だなどと指摘しました。

これに対して、北朝鮮の代表は「アメリカやEUの挑発的な主張を断固として拒否する。われわれは安保理決議を今後も決して受け入れない」と述べ、強く反発しました。

さらに、北朝鮮の代表は「アメリカ政府の最終的なねらいは、われわれに圧力をかけることで、われわれの政府を打倒することだ」と述べ、アメリカを非難するとともに、核・ミサイル開発を正当化していました。

米高官 “脅威に断固対応”

ロイター通信によりますと、アメリカ国務省でアジア政策を統括するクリテンブリンク国務次官補は3日、北朝鮮によるミサイル発射について「生産的ではなく、残念だ」と批判し「増大する脅威には断固として対応する」と述べました。

一方で「外交の道は開かれている」としたうえで「北朝鮮には対話の道を選び、真剣かつ継続的な外交に取り組むよう求める。これ以上地域を不安定化させる行動を控えるべきだ」と述べて、北朝鮮に対し、改めて対話に応じるよう求めました。

米元高官 “米の中ロとの関係悪化を踏まえたもの”

北朝鮮が中距離弾道ミサイルと推定される1発を発射したことについて、アメリカのオバマ政権で東アジア政策を担当したダニエル・ラッセル元国務次官補は、NHKの取材に対し「キム・ジョンウン(金正恩)総書記は、アメリカと日本、韓国に圧力をかけるため、緊張を高めることを始めた」と指摘しました。

そのうえで「キム総書記は、アメリカが中国やロシアと緊張関係にあるため、大胆になっている。北朝鮮に対するさらなる国連安保理の制裁に、習近平国家主席もプーチン大統領も賛成しないからだ」として、今回の行動が、米中や米ロの関係の悪化を踏まえたものだとの見方を示しました。

さらに「キム総書記は、アメリカがウクライナや中間選挙の対応にかかりきりになっていることもわかっている」として、北朝鮮はバイデン政権がウクライナへの支援や、11月の連邦議会などの選挙「中間選挙」への対応に追われている間隙(かんげき)を縫って、ミサイルの発射に踏み切ったと分析しています。

一方、アメリカ政府の今後の対応については「北朝鮮を抑止し、日本と韓国を防衛するというアメリカの決意はこれまでになく強固だ」として、引き続き、日本や韓国と連携し、北朝鮮への抑止力を強化していくことになるとの見方を示しました。