プーチン大統領 ウクライナ4州「併合条約」に署名

ロシアのプーチン大統領は、日本時間の9月30日の夜、モスクワのクレムリンで行われた式典で、ウクライナの東部や南部の4つの州について、ロシアが併合すると定めた「条約」だとする文書に署名しました。
プーチン大統領が一方的な併合に踏み切ったことで、国際社会から一層非難が強まるのは確実です。

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は、日本時間の9月30日の夜9時すぎからモスクワのクレムリンで行われた式典で演説しました。

この中でプーチン大統領は、▽ウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州、▽南東部ザポリージャ州、▽南部ヘルソン州の合わせて4つの州で強行された「住民投票」だとする活動について「住民は、自分たちの選択を行った。この地域に住む人々は永遠にロシア国民だ」などと述べ、ロシアがウクライナの4つの州を併合することを一方的に宣言しました。

そして、演説のあと、4つの州にいる親ロシア派勢力の幹部とともに、ロシアが併合すると定めた「条約」だとする文書に署名しました。

一方、プーチン大統領は演説の中で、併合の正当性を強調したうえで、「われわれはウクライナに即時停戦し、交渉のテーブルに戻ることを求める。われわれの準備はできている。しかし、4つの州の人々による選択について議論の余地はない。ウクライナは、この地域の住民の選択を尊重すべきで、これが唯一の平和への道となり得る」と述べ、ウクライナ政府に対して交渉に応じるよう迫りました。

また、「われわれは、あらゆる力と手段を講じてロシアの領土を守る」とも述べ、核戦力を念頭にウクライナや欧米をけん制したものとみられます。

アメリカやEU=ヨーロッパ連合は、追加の経済制裁を科す方針を明らかにしていますが、強硬な姿勢を崩さないプーチン大統領は、8年前、ウクライナ南部のクリミアを併合したのに続いて、再び力による一方的な現状変更に踏み切ったもので、国際社会からいっそう非難が強まるのは確実です。

岸田首相 ツイッターで強く非難

岸田総理大臣は、みずからのツイッターに「ロシアによるウクライナの一部地域の『編入』を強く非難します。これは、ウクライナの主権と領土一体性を侵害し、国際法違反であり、決して認められません。力による一方的な現状変更の試みは看過できず、ロシアが侵略を直ちに止めるよう改めて強く求めます」と、日本語と英語で投稿しました。

林外相「国際法に違反する行為 強く非難する」

ロシアのプーチン大統領の署名を受けて、林外務大臣は9月30日の夜談話を発表し、「ウクライナの主権と領土の一体性を侵害し、国際法に違反する行為であり、決して認められてはならず、強く非難する。武力によって領土を取得しようとする試みにほかならず、無効であり、国際社会における法の支配の原則に正面から反する」としています。

その上で、「力による一方的な現状変更の試みを決して看過できず、引き続きロシアに対し、即時に侵略を停止し部隊をロシア国内に撤収するよう改めて強く求め、 G7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携しながら強力な対ロ制裁とウクライナ支援の2つの柱にしっかり取り組んでいく」としています。

米大統領「この併合にはまったく正当性がない」

ロシアによる一方的な併合について、アメリカのバイデン大統領は30日、声明を発表し「ロシアは国際法に違反し、国連憲章を踏みにじった。この併合にはまったく正当性がない。アメリカは国際的に認められたウクライナの国境を常に尊重していく」と非難し、併合を認めない考えを示しました。
そのうえで「ロシアを非難し、責任を取らせるよう国際社会を結集させていく。アメリカはウクライナが自衛のために必要なものを提供し続ける」として、今後も軍事支援を続けていくと強調しました。

英首相「さらなる制裁を科すことを含め行動する」

イギリスのトラス首相は30日、ロシアによる一方的な併合に関する声明を発表し「プーチン大統領は、ウクライナを併合するという脅迫で、国際法に再び違反している。われわれはさらなる制裁を科すことを含め、ちゅうちょせず行動する」と非難しました。

イギリス外務省が発表した追加の制裁では、ロシアの産業にとって不可欠な数百の商品など、およそ700品目について輸出を禁止したほか、イギリスのITシステムの設計を含むコンサルティングや法律顧問などの分野で、ロシア向けのサービスを停止するとしています。

そのうえで「侵攻が始まって以来、ロシアから17万人以上のIT専門家が国外に逃れていることから、これらの措置はロシアの能力をさらに減退させる」と、追加制裁の効果を強調しています。

仏大統領府「ともにロシアの侵略に立ち向かう」

フランス大統領府は30日、声明を発表し「ロシアによる非合法な併合を強く非難する。これは国際法とウクライナの主権に対する重大な侵害だ。フランスはウクライナが自国の領土全体で完全に主権を回復できるよう、ともにロシアの侵略に立ち向かう」としています。

EU「違法な併合 決して認めない」

EU=ヨーロッパ連合は9月30日、声明を発表し、ロシアによる一方的な併合を非難しました。

声明では、「ルールに基づく国際秩序を損ない、独立や主権、領土の一体性といったウクライナの基本的な権利をはなはだしく侵害することで、ロシアは世界の安全を危険にさらしている。われわれはこの違法な併合を決して認めない。すべての国と国際機関にも受け入れないよう求める」としています。

そして、「ウクライナには、国際的に承認された国境内で占領された地域を解放する権利がある」としたうえで、今後もロシアへの制裁を強化し、ウクライナへの経済的、軍事的な支援を続けていくと強調しました。

NATO事務総長「違法に土地を奪う行為だ」

NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は30日、ベルギーの本部で記者会見を開き、今回のロシアによる一方的な併合について「違法に土地を奪う行為だ。NATOの加盟国は今も、そしてこれからも、これらの地域をロシアの一部だとは認めない」と非難しました。

そのうえで「ロシアが戦うことをやめれば平和が訪れるが、ウクライナが戦うことをやめれば独立した主権国家として存在できなくなってしまう。われわれはロシアの侵攻に対して、ウクライナが戦い続けるかぎり、支援していく決意だ」と強調しました。

イタリア 右派党首「新たな帝国主義的な価値観示すものだ」

イタリアで先月(9月)行われた議会選挙の結果、上下両院で第1党となった右派政党「イタリアの同胞」のメローニ党首は30日、ロシアによる一方的な併合に関するコメントを出しました。

この中で、「暴力的な軍事占領下で実施された偽の国民投票を経て行われた併合は、法的にも政治的にも価値がない。ヨーロッパ大陸全体の安全保障を脅かす、新たな帝国主義的かつソビエト的価値観を、改めて示すものだ」として、ロシアのプーチン大統領を名指しで批判しました。

メローニ党首は、10月中旬以降首相に就任する見通しで、ともに連立を組む複数の政党の党首がロシアに融和的なことなどから、ロシア寄りの政権になるのではないかと懸念されていました。