プーチン大統領 ウクライナ4州の併合 一方的に宣言か

ロシアのプーチン大統領は、日本時間の30日夜、ウクライナの東部や南部の4つの州をロシアが併合することを定めた「条約」だとする文書に署名し、併合することを一方的に宣言するものとみられます。ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは、8年前のクリミアに続いて、再び力による一方的な現状変更に踏み切る構えで、国際社会からの非難は一層強まる見通しです。

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は29日、ウクライナの南東部ザポリージャ州と南部ヘルソン州について、それぞれ「独立国家」として、一方的に承認する大統領令に署名しました。

ことし2月には、ウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州も「独立国家」だと、一方的に承認していて、プーチン大統領は、日本時間の30日夜9時から、モスクワのクレムリンで式典を開き、ウクライナの4つの州を併合することを一方的に宣言するものとみられます。

また、ロシアの憲法に沿うかたちで、4つの州をロシアが併合することを定めた「条約」だとする文書に署名する見通しで、ロシア大統領府のペスコフ報道官は30日「プーチン大統領による長い演説のあと文書の署名式がある」と述べました。

こうした動きに対して国連のグテーレス事務総長は29日、記者会見で、国連憲章と国際法に違反していると指摘したうえで「併合のためのいかなる決定も法的な価値を持たず、非難に値する」と強調しました。

また、アメリカのバイデン大統領も「アメリカは、ウクライナの領土をロシアのものとする主張を決して認めない」などと述べて非難しました。

アメリカやEU=ヨーロッパ連合は、追加の経済制裁を科す方針を明らかにしていますが、強硬な姿勢を崩さないプーチン大統領は、8年前、ウクライナ南部のクリミアを併合したのに続いて、再び力による一方的な現状変更に踏み切る構えで、国際社会からの非難は一層強まる見通しです。

ロシア大統領府報道官「演説後に署名式」

ロシア大統領府のペスコフ報道官は30日、式典について、日本時間の30日午後9時にクレムリン大宮殿の「ゲオルギーの間」で始まるとしたうえで「プーチン大統領による長い演説のあと文書の署名式がある」と述べました。

署名式には、ウクライナの4つの州にいる、プーチン政権を後ろ盾とする親ロシア派勢力の幹部もそれぞれ出席するとしています。

8年前のクリミア併合表明時も同じ場所で

30日の式典はロシアの政治の中枢、クレムリンの一角にあるクレムリン大宮殿の「ゲオルギーの間」で行われます。8年前の2014年、ロシアのプーチン大統領がウクライナ南部のクリミアをロシアに一方的に併合すると表明した際にも同じ場所で式典が開かれました。

8年前も現地時間の午後3時から始まり、上下両院の議員や地方の知事などが待つなか、プーチン大統領が入場し、まず、演説を行いました。およそ45分に及んだ演説ではロシアとウクライナの歴史的なつながりの深さを強調し、クリミアは、過去も現在もロシアにとって切り離せない土地だと述べました。

そしてロシアへのクリミアの一方的な併合を表明しました。演説の終了後、プーチン大統領は、地元行政府のトップらと署名式にのぞみ、クリミアをロシアに併合すると定めた、「条約」とする文書に署名しました。

ウクライナ軍反転攻勢で併合への一方的手続き急速に

ウクライナへの軍事侵攻後、ロシア側は東部や南部の支配地域で、ロシアへの併合に向けた動きを進めているとたびたび伝えられ、今月、ウクライナ軍による反転攻勢が鮮明になると、併合への一方的な手続きを急速に進めています。

このうちウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州では、2014年にロシアのプーチン政権が南部のクリミアを一方的に併合したあと、ロシアを後ろ盾とする親ロシア派の勢力がウクライナからの独立を一方的に表明しました。

親ロシア派の勢力は、ロシアへの編入を目指す意向を示していましたが、具体的な動きは進められていませんでした。しかし、ことし2月、プーチン大統領はこの2州の支配地域を独立国家として一方的に承認し、数日後の24日には、ウクライナへの軍事侵攻を始めました。

ロシア側は、侵攻当初からウクライナ南部へルソン州や南東部ザポリージャ州で支配地域を拡大すると、ことし4月、ウクライナ国防省の報道官は「ロシアが併合しようといわゆる『住民投票』を準備している」として、警戒を強めていました。しかし、住民の抵抗やウクライナ軍の抗戦を前に「住民投票」は実施されず、その後も準備の動きと延期の情報が繰り返し伝えられました。

ところが今月に入り、ウクライナ軍が東部ハルキウ州でロシア側から領土を奪還し、反転攻勢が鮮明になると、親ロシア派の勢力は20日、ドネツク州とルハンシク州、ザポリージャ州、それにヘルソン州の支配地域で、ロシアへの併合に向けた「住民投票」だとする活動を実施すると表明しました。

今月23日から5日間の日程で強行された「住民投票」だとする活動では、キーウなどに避難していた人は投票に参加できず、地元の住民からも「投票の際、投票箱を持った当局者に銃を持った兵士が同行している」などといった目撃情報も伝えられ、ウクライナや欧米などは「偽の住民投票」だと強く非難していました。

それでも、親ロシア派勢力は、各地域で「開票」の結果、編入に「賛成」する票がいずれも80%以上と「反対」を大きく上回ったとしてロシアへの編入を求めています。
こうした動きに対しG7=主要7か国やEU加盟国だけでなく、ロシアと良好な関係を築いてきたカザフスタンやセルビアの大統領からも、結果を認めないという考えが示されています。

ウクライナ避難民からは憤りの声

ロシアのプーチン大統領が、ウクライナの東部と南部の4つの州の一方的な併合に踏み切る構えを見せていることについて、日本に避難しているウクライナの人たちからは憤りの声が聞かれました。

ロシアのプーチン大統領は日本時間の今夜9時から式典を開き、ウクライナの4つの州を一方的に併合することを表明するものとみられます。

都内では30日、日本に避難しているウクライナの人たちの就労を支援する催しが開かれ、参加した人たちからは憤りの声が聞かれました。

ことし5月に東部ハルキウ州から避難してきた20代の男性は「ウクライナの一部をロシアが勝手に併合しようとしていることに本当に嫌な気持ちがする。ロシアが続けている行動が不正であることは世界中が理解していると思う。ロシアによるこれ以上の不正を止めないといけない」と話していました。

また、ハルキウ州出身の10代の女性は「ウクライナの市民がずっと前から暮らしていた土地を勝手に奪う権利がロシアにあるはずがない。ウクライナに対するロシアのひどい行動を世界で食い止めてほしい」と訴えていました。

この夏にハルキウ州から日本に避難してきた20代の男性は「今回のロシアの行動はクリミアを併合した時と全く同じで、うそばかりの歴史が繰り返されている。ロシアの主張をウクライナにいる人たちが信じるはずがなく、この戦争も最後にはウクライナが勝利すると信じている」と話していました。