ロシア 予備役動員で混乱や反発広がる 30日にも併合宣言見方も

ロシアのプーチン政権が発表した予備役の動員に対し、ロシアでは招集を逃れるため、市民が国外に脱出する動きが続き、イギリス国防省は、ロシア国内経済にも大きな影響を与える可能性があると指摘しています。
こうした中、プーチン大統領が30日にもウクライナの支配地域の一方的な併合を宣言するという見方が出ています。

プーチン政権は、今月21日に予備役の部分的な動員を発表し、国内では、反対の抗議デモが起きたほか、ロシア市民が招集から逃れようと国外に脱出する動きが続き、混乱や反発が広がっています。

プーチン大統領の側近の1人で首都モスクワのソビャーニン市長は28日、動員を進める過程で誤りがあったことを認め、一部の人に対する招集を撤回しました。

ソビャーニン市長は、自身のウェブサイトの中で「不正確または誤解を招くような記録に基づいて出された招集令状を取り下げた」としたうえで、苦情に対応する電話窓口を開設したなどと説明しています。

動員をめぐっては、高齢者や学生など、対象でない人まで招集されていると伝えられ、ソビャーニン市長としては、市民の反発などを抑えたいねらいがあるものとみられます。

イギリス国防省は29日、「プーチン大統領が『部分的動員』を発表したあとの7日間で、招集を逃れようと出国したロシア市民の数は、ロシアが2月に、軍事侵攻した時の兵員の規模を上回る可能性がある」と指摘しました。

そのうえで「ロシアから去ろうとした人々には、裕福で十分な教育を受けた人が多く含まれている。人々も動員で招集されることになり、これによって、労働力の低下と「頭脳流出」が加速し、ロシア国内経済に大きな影響を与える可能性がある」と分析しています。

一方、プーチン政権を後ろ盾とする親ロシア派の幹部は、ウクライナの支配地域でロシアへの編入に向けた「住民投票」だとする活動の結果をもとに28日、モスクワを訪れ、プーチン政権に対して編入を要請する構えを見せています。

こうした中、ロシア議会下院の議員は29日、SNSで30日の午後3時、日本時間30日午後9時からクレムリンでプーチン大統領が出席する行事に議員らが招待されていると明らかにしました。

ロシアのメディアや、欧米の政府やシンクタンクは30日にも、プーチン大統領がこの地域の一方的な併合を宣言するという見方を示しています。
また、一部のロシアメディアはモスクワの中心部で30日に支配地域の併合に関連する大規模なイベントが行われる見通しだと伝えています。

ただ、ロシアの独立系のネットメディア「メドゥーザ」は28日、プーチン政権に近い関係者の話として、「クレムリンは併合の手続きを急がない」とする見方を伝えました。

その理由として「ロシアで動員が続き、併合による宣伝効果がなくなるため」としていて、ロシア国内で動員への混乱が広がる中、政権側が支配地域の併合に踏み切るタイミングに神経をとがらせているという見方も示しています。