きょう日中国交正常化50年 祝賀ムードは低調 関係改善が課題

日本と中国の国交正常化から29日で50年です。

中国が覇権主義的な動き強める中、両国間では対面での首脳会談が3年近く行われていません。

中国側は、日本との関係を重視する姿勢を示していますが、沖縄県の尖閣諸島や台湾をめぐる情勢などを背景に祝賀ムードは低調で、関係改善に向けた糸口をいかに見いだすかが課題です。

今から50年前の29日、北京で、当時の田中角栄総理大臣と中国の周恩来首相が日中共同声明に調印し、日本と中国の国交が正常化しました。

28日は、松野官房長官が、中国の国政の助言機関、全国政治協商会議の万鋼副主席と総理大臣官邸で会談し、建設的かつ安定的な日中関係の構築に向け、ともに努力していくことが重要だという認識で一致しました。

29日東京で開かれる記念のイベントには岸田総理大臣は出席せず、林外務大臣が出席する予定です。

中国は、日本にとって最大の貿易相手国である一方、軍事力の増強を進め、覇権主義的な動きを強めていて、沖縄県の尖閣諸島周辺海域では、公船による領海侵入を繰り返しています。

先月にはアメリカのペロシ下院議長の台湾訪問に反発した中国が軍事演習を行って、弾道ミサイルの一部が日本のEEZ=排他的経済水域の内側に落下し、米中間の緊張が波及する形で、日中関係はさらに厳しさを増しています。

両国間では対面での首脳会談が3年近く行われておらず、今後、いかに関係改善をはかるかが課題となります。

中国 日本重視の姿勢示すも祝賀ムードは低調

中国の習近平国家主席は、先月、岸田総理大臣に宛てたお見舞いの電報で、「ことしは中国と日本の国交正常化50周年にあたり、新時代の要請に応える両国関係の構築をともに推し進めていきたい」と伝えるなど、日本を重視する姿勢を示しています。

中国国内ではことし、国交正常化を記念する行事が相次いで開かれていて、29日も北京で中国の友好団体が記念のレセプションを開く予定です。

ただ、新型コロナウイルスの影響で人々の往来が減っているうえ、沖縄県の尖閣諸島や台湾をめぐる情勢などを背景に祝賀ムードは低調です。

中国共産党系のメディアは、28日付けの社説で「不信感や戦略への懸念はこの50年、見たことがないほどだ」と強調したうえで、アメリカとともに中国を抑え込もうとしているなどとして日本側を批判しています。

中国政府の対日政策に影響力のある政府系のシンクタンク、中国社会科学院日本研究所の楊伯江所長は、今後の両国関係について「民間の交流であろうと政府間の戦略的な対話であろうと非常に重要だ」と指摘していて、関係改善に向けた糸口をいかに見いだすかが課題です。

中国政府系シンクタンク “50年前の初心と原則 継承を”

日中国交正常化50年に合わせて、中国政府系のシンクタンク、中国社会科学院日本研究所の楊伯江所長が、NHKのインタビューに応じました。

この中で、50年前の国交正常化について「冷戦が最も厳しい時期に、両国は、政治的なイデオロギーの違いを乗り越えて和解を実現することができた。この地域にとって非常に前向きで重要だった。両国の国交正常化は、地域の統合を後押しした」と述べて、意義を強調しました。

台湾情勢などによって厳しさを増す現在の日中関係については、「安定した発展が両国にとって必要だと思う。中国側は、両国関係に多くの困難が生じて平和共存の最低ラインを下回ることを望んでいない。50年前の国交正常化のときの初心と原則を継承しなければならない」と述べました。

一方、中国政府の対日政策については、来月の共産党大会のあとも「大きな変化はない」という見方を示しました。

そのうえで、今後の両国関係について「交流と対話を強化する必要がある。民間の交流であろうと政府間の戦略な対話であろうと非常に重要だ。新型コロナウイルスの感染拡大で人的交流が途切れてしまったのは残念で、非常に好ましくない。このような交流が早く再開できればと思う」と述べました。

当時の通訳「周恩来首相が現状を知ったらとても悲しむ」

50年前の国交正常化当時、中国の周恩来首相の通訳を務め、日本との交渉でも中国側の通訳を担当した周斌さん(87)がNHKのインタビューに応じ、両国関係が冷え込む現状に複雑な心情を明かしました。

周さんは、田中角栄総理大臣と周恩来首相が共同声明に署名し、国交を正常化した当時を振り返りながら、「今、最も心配しているのは双方の民意が悪化することです。周首相は私たちに両国国民の友好が何代にもわたって続くように古い友人を忘れず、新しい友人を広く求めよと教えてくれました。もし周首相が現状を知ったらとても悲しむでしょう」と述べ、両国関係が今のように冷え込むとは想像していなかったと話していました。

そのうえで「私はこの困難な時期を克服できると信じています。両国の政治家や国民が知恵と能力で少しずつ状況を変えていくでしょう。今の状況は双方の国民の利益にならず、友好を続けるという理想にもそぐわないと思います」と述べ、今後の関係改善に期待を示しました。