【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(29日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる29日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

“4州をロシアが併合” プーチン大統領が30日 文書に調印へ

ロシア大統領府のペスコフ報道官は29日、プーチン大統領が首都モスクワのクレムリンで30日の午後3時、日本時間の30日午後9時から式典を開くと発表しました。
この中で、ウクライナの東部のドネツク州とルハンシク州南東部ザポリージャ州、それに南部ヘルソン州の4つの州をロシアが併合する文書に調印するとしています。
また、プーチン大統領が併合について演説する予定だと明らかにしました。
親ロシア派の勢力が今月23日から27日にかけて4つの州の支配地域で強行した「住民投票」だとする活動の結果をもとに、プーチン大統領が一方的な併合に踏み切ることになり、ウクライナや国際社会の非難がさらに強まるとみられます。

プーチン大統領 支持率8割切る 予備役動員への不安か

民間の世論調査機関「レバダセンター」が今月22日から28日にかけて、ロシア国内の18歳以上の1600人余りを対象に対面で調査したところ「プーチン大統領の活動を支持する」と答えた人の割合は77%で、先月を6ポイント下回りました。
プーチン大統領の支持率はウクライナ侵攻後のことし3月、およそ4年ぶりに80%を超えましたが今回、侵攻後初めて8割を切りました。
また「国は正しい方向に進んでいる」と答えた人の割合は60%と、先月を7ポイント下回ったのに対し「間違った道に進んでいる」は27%と、軍事侵攻後、最も高くなりました。
調査は、プーチン大統領が今月21日に予備役の部分的な動員に踏み切った直後に行われ、レバダセンターのボルコフ所長はNHKの取材に「突然の動員発表による国民の不安や恐怖、不満の表れだ」と分析しています。
「レバダセンター」は政権から「外国のスパイ」を意味する「外国の代理人」に指定され、圧力を受けながらも、独自の世論調査活動や分析を続けています。

松野官房長官「『住民投票』と称する行為 国際法に違反」

松野官房長官は午前の記者会見で「ウクライナ国内で実施されたロシア編入に向けた『住民投票』と称する行為は、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害し、国際法に違反する行為であり、認められてはならず強く非難する」と述べました。

そのうえで「わが国は力による一方的な現状変更の試みを決して看過できず、引き続きG7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携しつつ、強力な対ロ制裁やウクライナ支援の2つの柱にしっかりと取り組んでいく。さらなる対ロ制裁については引き続き動向を注視しつつ、適切に対応していく」と述べました。

ゼレンスキ-大統領 “ロシアの行為は国連憲章にひどく違反”

ウクライナのゼレンスキ-大統領は、ロシアのプーチン政権が、ウクライナ東部と南部の4つの州の一方的な併合に踏み切ると見られることについて「われわれの領土を奪おうとするロシアの企てには我慢ならないし、我慢するつもりもない」と述べロシアの行為を改めて非難しました。

そして「今、重要なのは、ロシアが仕組んだまやかしの住民投票と、それによるあらゆる脅威に対抗すべく、パートナーと連携して行動することだ」と述べ、各国と連携してロシアに対抗する姿勢を示しました。

さらに、国連のグテーレス事務総長とも認識を共有したことを明らかにし「(ロシアの行為は)国連憲章にひどく違反するものであり、罰せられなければならない」と訴えました。

親ロシア派の幹部モスクワに「歴史的な決定受ける」

ロシアが支配するウクライナ南部ヘルソン州の親ロシア派の幹部、ストレモウソフ氏は28日、SNSで、ほかの地域の幹部らとともに、ロシアの首都モスクワに飛行機で到着したと明らかにし、着陸直後だとする集合写真も掲載しました。

この中で「われわれは歴史的な決定を受けるためモスクワに集結した。まもなくロシア連邦の新しい一部になる」と書き込んでいて、このあとプーチン政権に対してロシアへの編入を要請する構えです。

プーチン政権は、これをもとに一方的な併合に踏み切るとみられ、ウクライナや欧米などは非難を一層強めるとみられます。

アメリカ “ウクライナの人たちの意志でない”

親ロシア派の勢力がウクライナ東部や南部の支配地域で、大多数がロシアへの編入に賛成したとする結果を一方的に発表したことについて、アメリカ国務省のプライス報道官は28日、記者会見で「結果は完全なねつ造だ。ウクライナの人たちの意志ではなく、ロシア政府の意志の表れだ」と強調しました。

そのうえで「アメリカはロシアによる併合の試みを決して認めない」と述べ、仮に、ロシアが併合の手続きを進めても、ロシア領だとは認めないと強調するとともに「同盟国や友好国と連携し、ロシアにさらなる圧力を加える」として近く、同盟国などとともに、追加の制裁を科す考えを示しました。

また、ロシアが核戦力の使用も辞さない構えを繰り返し示していることについてプライス報道官は、「ロシアにとって破滅的で深刻な影響をもたらすと明確に伝えてきた。いかなる核の使用であっても重大な結果をもたらすことになる」と述べ、ロシアを強くけん制しました。

アメリカ ウクライナ長期支援のため11億ドルの追加軍事支援

アメリカのバイデン政権はロシアによる軍事侵攻が続くウクライナを長期的に支援するため、およそ11億ドル、日本円にしておよそ1600億円相当の追加の軍事支援を行うと発表しました。

具体的には、高機動ロケット砲システム=ハイマース18基や装甲車両150台、それに敵の無人機を探知して攻撃を防ぐシステムなどが含まれるということです。

アメリカ国防総省は今回の軍事支援はウクライナを中長期的に支援するためのものだとしていてメーカー側と契約手続きを開始し、今後、数年かけて供与するとしています。

国防総省の高官は記者団に対し「アメリカが長期にわたってウクライナを支援することを明確にするものだ。ウクライナ軍を恒常的に強くするための重要な戦力に対して資金を投入していく」と述べました。

国防総省によりますと、ロシアによる侵攻が始まって以降、アメリカがウクライナに行った軍事支援は今回の分を含めると総額でおよそ162億ドル、日本円にしておよそ2兆3300億円に上ります。

モスクワ市長 予備役の動員 一部の招集を撤回 “過程で誤り”

ロシアで行われている予備役の部分的な動員を受けて混乱や反発が広がる中、プーチン大統領の側近の1人で首都モスクワのソビャーニン市長は28日、動員を進める過程で誤りがあったことを認め、一部の人に対する招集を撤回しました。

ソビャーニン市長は自身のウェブサイトの中で「市民から寄せられた苦情を考慮し、再検証した結果、不正確または誤解を招くような記録に基づいて出された招集令状を取り下げた」としたうえで、苦情に対応する電話窓口を開設したなどと説明しています。

動員をめぐっては、高齢者や学生など、対象でない人まで招集されていると伝えられ、各地で抗議活動も起きる中、ソビャーニン市長としては、市民の反発などを抑えたいねらいがあるものとみられます。

ただ、サッカーの元ロシア代表選手も招集されたということで、その父親がSNSに「息子は兵役に就いたことはなく、37歳という年齢からしても矛盾がある。総動員ならまだしも大統領は部分動員だとしている。すべては法にのっとるべきだ」と投稿するなど、市民の動揺が続いています。

モスクワで一方的な併合に関連する大規模なイベントか

ロシアのプーチン政権は、ウクライナ東部と南部の4つの州について一方的な併合に踏み切るとみられますが、一部のロシアメディアは、これに関連する大規模なイベントが今月30日、モスクワ中心部で行われる見通しだと伝えています。

モスクワ市の交通局も28日、詳細は明らかにしないまま、中心部の「赤の広場」周辺で30日の早朝から大規模な交通規制を行うと発表しました。

「赤の広場」などを28日撮影した映像では、作業員が建設用の大型機械などを使ってステージの設営にあたる姿が見られました。

会場には、ロシアの国旗をイメージした横断幕が掲げられ、ウクライナのドネツク、ルハンシク、ザポリージャ、ヘルソンの4つの州の名前がロシア語で書かれるとともに、大きく「ロシア!」と記されています。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は28日、メディアが報じているイベントにプーチン大統領が出席するかどうか記者団に問われましたが、「まだ答えられない」と述べました。

英トラス首相 “「住民投票」認めない 確固たる支援行う”

イギリスのトラス首相は28日、ウクライナのゼレンスキ-大統領と電話で会談し、ウクライナに対して確固たる支援を行うと強調しました。

イギリスの首相官邸によりますと、親ロシア派の勢力がウクライナの支配地域で強行したロシアへの編入に向けた「住民投票」だとする活動について、トラス首相は、「決して認めない」という立場を明確にしたうえで、「プーチン大統領が敗北するまで、ウクライナは、イギリスの支援を頼ることができる」と繰り返し述べたとしています。

そして、ゼレンスキー大統領は、トラス首相の強い支援を歓迎したとしていて、両首脳は、今後も互いに緊密に連絡を取り合うことで合意したとしています。

親ロシア派幹部 プーチン大統領にロシアへの編入要請の署名

ロシアのプーチン政権を後ろ盾とする親ロシア派の勢力は、ウクライナの支配地域でロシアへの編入に向けた「住民投票」だとする活動を強行し、27日、東部ドネツク州とルハンシク州、南東部ザポリージャ州、それに南部ヘルソン州の支配地域のすべてで、大多数がロシアへの編入に賛成したとする結果を一方的に発表しました。

これを受けて、ルハンシク州やヘルソン州の親ロシア派の幹部は28日、ロシアへの編入をプーチン大統領に要請する文書に署名しました。

一方、ロシアでは、併合に関する法案について議会下院で来月3日に本会議が開かれ、上院でも4日に審議される見通しです。

ロシア外務省は28日に発表した声明で「4つの州の住民がロシアと一緒になるという願望を実現するため、近い将来、共同で行動するという重要な段階になっている」として、プーチン政権が4つの州の親ロシア派から要請を受ける形で手続きを進め、近く、一方的な併合に踏み切るとみられます。

パイプラインのガス漏れ 国連安保理 緊急会合開催へ

天然ガスパイプライン、「ノルドストリーム」でガス漏れが起きたことをめぐり、国連安全保障理事会の今月の議長国フランスは、ロシアの要請に基づいて対応を協議する緊急会合を今月30日に開催すると明らかにしました。また、ロシアのポリャンスキー国連次席大使は自身のツイッターに「ノルドストリームに対する破壊工作について安保理の緊急会合を要請した」と投稿しました。

ロシア ドイツ結ぶパイプラインのガス漏れ 破壊工作の見方強まる

バルト海の海底を経由してロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン、ノルドストリームについて、デンマーク軍は27日、3か所でガス漏れが確認されたと発表し、デンマークの外相は28日、「ガス漏れは爆発によるもので意図的な行為だ」と述べました。また、EU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表も「意図的な行為」との見方を示し、ドイツのランブレヒト国防相も声明で「破壊工作の疑いがある」としてデンマーク側の調査に協力する姿勢を示すなど、破壊工作が原因ではないかという見方が強まっています。さらに、ドイツの有力誌シュピーゲルは、アメリカのCIA=中央情報局がパイプラインが攻撃されるおそれがあるとドイツ政府に事前に警告していたと伝えているほか、ウクライナ情勢を巡りヨーロッパと対立するロシアが関与した可能性を指摘するメディアもあります。

これに対し、ロシア大統領府のペスコフ報道官は「非常にばかげている」と否定し、調査にはロシア側も参加する必要があるという考えを示しました。ヨーロッパ側では、海底の重要インフラが損傷を受けた事態に警戒感が広がっています

EU「住民投票」強行受けロシアに追加制裁へ

ロシアのプーチン政権を後ろ盾とする親ロシア派の勢力が、ウクライナの支配地域で「住民投票」だとする活動を強行したことなどを受けて、EUのフォンデアライエン委員長とボレル上級代表は28日、記者会見を行いました。

この中でフォンデアライエン委員長は「EUは、偽の住民投票を受け入れないし、ウクライナのいかなる地域のロシアへの併合も認めない。事態をさらに悪化させたロシア政府に代償を支払わせるとわれわれは固く決意している」と述べました。そして、ロシアに対して追加の制裁を行う方針を明らかにしました。具体的には、ロシアから輸入を禁止する製品を拡大するとしていて、その規模は、70億ユーロ、日本円にして9700億円余りに上るということです。また、ロシアの軍事産業が必要とする電子部品や特殊な化学物質などをロシアに輸出することも禁止するとしています。さらに、親ロシア派による「住民投票」だとする活動に関わった人物などをEUへの渡航禁止や域内の資産凍結の対象にするということです。

制裁は、今後EU加盟国の承認を得たうえで実施されます。

EU 加盟国に渡ったロシア人 6万6000人に 前週より30%増

EU=ヨーロッパ連合の国境沿岸警備機関は、今月19日から25日までにEUの加盟国に渡ったロシア人が6万6000人にのぼり、前の週より30%増えたと27日、発表しました。

ロシアが、今月21日に予備役の部分的な動員を発表したことが増加の背景にあるとしていて、多くは、フィンランドやバルト3国のエストニアに渡ったということです。

EUの国境沿岸警備機関は、ロシアからEU側へ渡ろうと試みる人の数は今後も増加が見込まれると指摘したうえで、「長期的には、ロシアからEU側への違法な越境や、不法滞在が増加する可能性がある」と警戒しています。

アメリカ “二重国籍を持つ人 ロシア政府が徴兵する可能性”

ロシアで今月21日に予備役の部分的な動員が発表されたことを受け、モスクワにあるアメリカ大使館は27日、アメリカとロシアの二重国籍を持つ人たちに対し「ロシア政府は、アメリカの国籍を認めず、徴兵する可能性がある」として、警戒を呼びかけました。

そのうえで、「移動手段があるうちに、すぐに出国すべきだ」として改めてすぐに出国するよう呼びかけました。

フィンランド 陸路で入国のロシア人 5万人余りに

ロシアと国境を接する北欧のフィンランドでは、プーチン大統領が予備役の部分的動員を発表した今月21日からの1週間で陸路で入国したロシア人は5万人余りと、前の週の2倍近くに増えました。

このうちロシア第2の都市サンクトペテルブルクから車でおよそ3時間のところにあるフィンランド東部の町ヴァーリマーの検問所では、入国しようという人たちを乗せた乗用車やバスが連日、1キロ以上の列を作っています。

ほとんどが観光ビザで入国しようとするロシア人で、若い男性の姿も多く見られます。

およそ1800キロ離れたロシア中部のエカテリンブルクから来たという25歳の男性は「私は武器を手に取りたくない。ウクライナで起きていることは支持していない」と話していました。

また、サンクトペテルブルクの学校を退学して母親と逃れてきた16歳の少年は「僕は戦争に反対だ。できることなら逃げたい。学校にいたのにある日突然動員され、人を殺しに行かなければならないなんて、考えたくもない」と話していました。

国境警備隊のユッシ・ペッカラ部隊長は、「入国時の書類では、ロシア人のおよそ60%が、フィンランドを経由してほかの国に行くと届け出ている。ビザを持たずに来て、難民認定を申請するケースもある」と話しています。

また、首都ヘルシンキの空港の駐車場にはロシアのナンバープレートを付けた車が目立ち、すでに多くのロシア人がほかの国に向かったものと見られます。

特に、短期の滞在であればロシア人はビザが必要ないトルコに向かう人が多く、トルコ行きの便は軒並み満席で、運賃がふだんの何倍にも値上がりしているということです。

トルコ南西部のリゾート地ボドルムで家族と合流するという54歳の男性は「私は30年前、ソビエト軍の軍人としてウクライナやポーランドに駐留したが、もう二度と戦いたくない。明るい未来と平和を願っている。それまでは祖国に戻らない」と話していました。

ロシア ペスコフ報道官 “2州併合でも侵攻続ける可能性”

ロシアのプーチン政権がウクライナ東部のルハンシク州やドネツク州などの一方的な併合に向けて手続きを始めるとみられる中、ロシア大統領府のペスコフ報道官は28日、2州を併合したとしてもロシアが軍事侵攻を続ける可能性があるという考えを示しました。

この中でペスコフ報道官はルハンシク州はロシア軍が全域を掌握しているものの、ドネツク州の掌握は一部にとどまっているという認識を示しました。

そのうえで「少なくともドネツクの全域を解放する必要がある」と述べ、ドネツク州を併合した場合でも軍事侵攻を続ける可能性に言及しました。