WEB特集

サッカー観戦が生きがいに!!

「サッカーも人生も楽しんだ者が勝つ!」
「命つきるときまでサッカーを楽しみなさい」

サッカーJ1で、今シーズン不振に苦しんできたヴィッセル神戸に届けられたメッセージです。実はこのメッセージ、地元の高齢者施設で暮らすお年寄りたちが送ったものです。

30年目を迎えたJリーグが理念に掲げてきた地域社会への貢献。お年寄りとのつながりが、クラブの新たな価値を生み出そうとしています。
(大阪放送局記者 福島康児)

窮地のクラブに届いたメッセージ

今月10日、神戸市にあるヴィッセルのホームスタジアムに150を超える手書きのメッセージが書き込まれたボードが設置されました。
「サッカーも人生も楽しんだ者が勝つ!」(85歳 男性)
「命つきるときまでサッカーを楽しみなさい」(107歳 女性)
「小さなことは気にしない」(81歳 女性)
「勝っても負けても心まで負けるな」(91歳 女性)
どこか重みがあり、時にはユーモアも感じさせるメッセージ。人生の酸いも甘いも知るお年寄りならではのことばが並んでいました。
「人生の先輩からのメッセージ」と名付けられたこの取り組みは、サッカーを通じてお年寄りにはつらつとした生活を送ってもらいたいと、Jリーグと健康関連企業が協力して始めました。

全国10のクラブがこの社会連携活動に参加し、ヴィッセルはその1つです。
ヴィッセル神戸ホームタウン担当 米澤崇さん
ヴィッセル神戸ホームタウン担当 米澤崇さん
「心に刺さるメッセージがたくさんあったので、選手たちに見てもらおうと考えています。まだ始まったばかりの段階ですが、いろいろな発見が出てくるのではと楽しみにしています。何歳になってもサッカーを応援する楽しさを知っていただけるのはありがたいことですし、お年寄りの皆さんの健康につながるのであればなおさらうれしいです」
サントリーウエルネス 沖中直人社長
沖中直人社長
「Jリーグは日本全国に58のクラブがあって、地域密着の運営が行われています。地元のクラブを応援することで、施設の入居者やご家族、ヘルパーなどのスタッフも含めてみんなが元気になり、元気を交換するような場になればと思って始めました」

“支えられる側”から“支える側”へ

メッセージを送ったお年寄りたちが暮らす神戸市の施設では、去年からこの活動の一環として、入居者が集まって試合をテレビ観戦する機会を設けています。

日頃は、誰かに“支えられる側”のお年寄りに、クラブを応援するサポーターとして“支える側”になってもらうことで生きがいを見つけてほしいという思いが込められています。
竹本繁野さん
お年寄りの中には、107歳の女性もいました。

竹本繁野さんはふだんは横になって過ごすことが多いということですが、ヴィッセルの応援に積極的に参加しています。

取材した日も、試合が盛り上がった場面では笑顔を見せていました。
冒頭で取り上げた「命つきるときまでサッカーを楽しみなさい」というメッセージを送ったのも竹本さんです。

いわゆる“推し”の選手を見つけて、積極的に応援活動をするようになった人もいます。
86歳の服部千恵子さんは認知症を患うなか、ヴィッセルの中心選手で、元スペイン代表のイニエスタ選手を好きになりました。
みずから進んでスペイン語を教わり、「Vamos Iniesta(さあ行こう、イニエスタ)」とメッセージを送りました。

施設のスタッフは、参加するお年寄りに前向きな変化を感じています。
高齢者総合福祉施設オリンピア兵庫 稲田麻里さん
高齢者総合福祉施設 稲田麻里さん
「施設で暮らす皆さんは、ゆっくりと過ごすことが多いので、この活動を始めてからやりがいのようなものを得てみんな生き生きしていると感じています」

認知症予防にも期待

活動に取り組んできた高齢者施設では、参加したお年寄りの要介護度が下がったという報告もあるそうです。

高齢者の自立支援に詳しい専門家も認知症の予防や改善につながる可能性があると期待しています。
国際医療福祉大学大学院 小平めぐみ准教授
国際医療福祉大学大学院 小平めぐみ准教授
「何かに夢中になることで、人は主体的に動けるようになります。サッカーの応援を通じて主体性を取り戻し、社会とつながりを持つことが認知症のケアにも非常に有効だと思います。体力をつけてあげて、一緒にスタジアムに応援しに行くという状況まで持っていけるとますます高齢者が自信を取り戻せるのかなと思います」

選手にとっても力に

今回の活動は、お年寄りの元気を取り戻すだけでなく、チームにも力を与えました。

メッセージボードは試合の2日後にヴィッセルのクラブハウスに移され、選手たちはそれぞれ気になるメッセージに目を通しました。
ヴィッセル神戸 菊池流帆選手
「やっぱりサッカーを楽しむことは大事ですね。みんなが神戸を応援してくれて、本当に厳しい状況ですけれど、頑張らないといけないなと思っています」
ヴィッセル神戸 武藤嘉紀選手
「本当にすごく重みがあると思います。人生において経験のある方々からのメッセージは大切なものだと思うんで、自分たちのパワーに変えていければなと思います」
メッセージを受け取った選手たちは、その後の試合で気持ちの入ったプレーを見せ、ヴィッセルはリーグ戦を2連勝。J1残留へ前進しました。

サッカーは、年齢に関係なく誰もが楽しめ、誰もに活力を与える力がある。

Jリーグとお年寄りがつながることで生まれた相乗効果は、スポーツが社会に果たせる役割を改めて示しています。
大阪放送局記者
福島康児
2015年入局
名古屋局を経て2020年から現所属 主にサッカー担当 元高校球児でサッカー未経験ですが日々奮闘中です

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